日中戦争から太平洋戦争にかけて5000キロにわたって従軍し、「戦争の現実」と「兵士たちの素顔」をカメラに記録していた日本人がいた。小柳次一(1907-1994)である。
戦意高揚の写真しか許されない時代にあって、小柳の残した写真には、日本の負傷兵や敵国の避難民など、国策に沿わない「リアルな戦場の現実」が映しだされている。しかし軍と行動をともにした経歴ゆえ、戦後「戦争協力者」と言われ、不遇のうちに亡くなる。
小柳はなぜこのような写真を撮影するようになったのか。また恵まれなかった後半生、自らの体験をどのように伝えていこうとしていたのか。
カメラマン・石川文洋氏(70歳)は、日本の戦争写真の軌跡をまとめる仕事を続けるうち小柳に注目するようになった。戦後63年、あの戦争を知る人がいなくなりつつある今、石川さんは小柳の足跡を辿ることでもう一度日本の戦争を捉えなおしてみたいと考えている。
番組では、残された小柳の写真、従軍手帳や、交際のあった兵士の遺族たちなどを石川さんとともに追うことで、一人の知られざるカメラマンを通してみた戦争の真実を伝える。
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