9月21日(日)放送
手の言葉で生きる
 

写真・左、中:手話でおしゃべり
写真・右:ろう者の手話で教える加藤先生

 

「私たちは“聴覚障害者”ではありません。“手話を使う人”です」
「手話」がどのような言語であり、「手話を使って生きる」ことがどのようなことなのか、私たちは本当に知っているだろうか。 じつは「ろう者」の人たちがネイティブに使う独自の手話は、「日本語」の文法とは異なった言語なのである。

神奈川県立平塚ろう学校、小学2年生の教室。小さな手をひらひらとさせて、5人の子どもたちが日本語の勉強をしている。幼いころから耳の聞こえない「ろう者」独自の手話で生きてきた子どもたちが、初めて日本語を習う教室である。カルタをとってひらがなを覚え、手話にはない「て・に・を・は」が分からず困惑する子どもたち。自身もろう者の加藤小夜里(さより)先生は、一つ一つ身振りと豊かな表情で子どもたちを導いてゆく。

日本のろう学校小学部で行われてきた「ろう教育」は、かつて手話を使うことを禁じ、「口話(口の形と発声を覚えさせる)」を行って「正しい日本語」を教えることを追求してきた長い歴史がある。ろう学校の教育内容が変化し、手話が使われ始めたのは最近のことで、まだ限定的であり、多くは日本語の語順に対応させた手話である。

番組では、加藤先生の教室で学ぶ子どもたちの半年間の姿を追った。ろう者同士が豊かにコミュニケーションする「手話」と、日本社会で読み書きし生活するために必要な「日本語」、二つの言語と格闘する子どもたちをドキュメントする。日本社会が手話をどう位置づけてきたのか、「手話」という言語を使う人たちと、私達がどのような社会を築いてゆくのかを考えたい。

語りは、女優の大竹しのぶさん。
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