7月13日(日)放送
東と西のはざまで書く〜ノーベル賞作家オルハン・パムク 思索の旅

写真・左:京都・相国寺境内を歩くパムク氏
写真・中:作家・石牟礼道子さんと京都で対談 日本画の本を見ているパムク氏
写真・右:作家・大江健三郎氏と名古屋で対談。あいさつするパムク氏

 

2006年ノーベル文学賞を受賞したトルコの作家オルハン・パムクが5月中旬に来日した。同じくノーベル賞作家の大江健三郎や、石牟礼道子と対談。京都を訪ね、かねてから関心を抱いていた日本の美を眼にし、文学と美について縦横に語った。

東と西が交錯する文明の十字路イスタンブールに生まれ、今もこの町に書斎を構えるパムク。その小説世界はイスラムや文化の衝突と交流が題材となり、代表作『雪』(02年)は9・11後のイスラム過激派の動きを預言したと言われ、アメリカを初め世界49か国で読まれている。

このパムクに早くから注目してきたのが大江健三郎だ。同じ東方の作家として、西欧とどう向き合うかという課題に取り組むパムクに共感を抱いてきた。大江はまた、小説家としての生き方も問いたいとしている。パムクは人権や言論の自由について積極的に発言、アルメニア人など少数民族の問題にも言及している。「作家の政治的行動は、望むと望まざるとに関わらず必要なのか」。大江はパムクに問いかける。

パムクは若い頃画家を志したことがあり、その作品は“色”にあふれている。歴史小説『わたしの名は紅』(98年)はイスラムの細密画家をめぐる物語だ。また、パムクは日本文学では谷崎潤一郎の耽美的な世界を愛している。「西欧化に失望し、やがて自国の古典に耽溺した」その姿に惹かれるという。そんなパムクが今回最も長く滞在したのが京都。町を歩き、禅寺や和紙工房を訪ね、新旧の日本にふれる。京都のそこかしこに“伝統と近代”が激しく衝突しながらも融合している姿を見出し、トルコで探究し続けてきた自らのアイデンティティの問題について思索を深めていく。

番組では東方の二人のノーベル賞作家の対話を中心に、オルハン・パムクの日本体験を追う。9・11以後、東西文明の衝突の危機が話題になる中で、文化の交錯を表現しようと試みる世界的作家の思想を伝える。


出演:オルハン・パムク、大江健三郎、石牟礼道子

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