12月23日(日)放送
熊井啓 戦後日本の闇に挑む
 

写真左・右:熊井啓監督

今年5月、「最後の社会派」と呼ばれた映画監督、熊井啓が他界した。享年76。倒れる前夜まで、新作の企画を練っていたという。「元旦にも脚本を書いているような人。映画の鬼だった」と妻の明子さんがいうほど、映画ひと筋の生涯だった。

熊井はデビュー作の「帝銀事件・死刑囚」をはじめ、「日本列島」「海と毒薬」など、終戦前後の時代の闇に光を当て、日本人とは何か、戦後の日本はどうあるべきかを鋭く問う映画を撮り続けてきた。硬質な作風が流行と合わず、「時代遅れで古臭い」と批判されることもあったが、愚直なまでに自分のスタイルを変えなかった。

なぜ熊井は時流に逆らって頑固に「社会派」であり続けたのか。その背景には、終戦当時のみずからの体験があった。信じていた価値が崩壊し、豹変する大人たちを目の当たりにして「日本人とは何か、いかにあるべきか」という強烈な疑問が心の奥底に芽生えていく。やがて映画の世界に飛び込んだ熊井は、およそ半世紀にわたって映画を撮り続け、その疑問をスクリーンの向こうから私たちに投げかけていたのではないだろうか。

番組では、渡辺謙、加藤剛、奥田瑛二、栗原小巻ら俳優やスタッフ、学生時代からの親友、さらに熊井を支え続けた夫人でエッセイスト熊井明子さんらの証言をもとに、日本の戦後の闇に挑み続けた熊井監督の生涯を描く。

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