医師が患者にガンを宣告しようとする瞬間、突然鳴り響く戦闘機の爆音。肝心な部分がかき消され、一向に患者に伝わらない。―――会場から沸きあがる爆笑の嵐。舞台「お笑い米軍基地」の1シーンだ。基地反対のデモに出かけた市民が、嬉々として基地のフェスティバルに出かける姿…。フェンスの中に飛んだ野球のボールを取りに行けない沖縄の少年と、フェンスの外に出たバスケットボールを自由に取りに行ける米兵の子供…。
沖縄の基地をとりまく日常の矛盾をコントにした舞台は、05年6月の初演以来アンコール上演が続き、今ではおじぃおばぁから子どもまで1400人を超える観客を集める。この舞台を手がけているのは、県内外で活動するお笑い芸人・小波津正光さん(33)。創作の原点は、昨年まで過ごした 東京での体験だった。3年前米軍ヘリが大学敷地内に墜落した事件では、周囲の人々がほとんど関心を示さないことに憤った。お笑いで「沖縄の現実」を発信できないか。小波津さんは1年をかけて脚本を書き上げ、舞台を誕生させた。「説教しても誰も耳を貸さないでしょう。お笑いを通して、沖縄の今を感じるきっかけになれば」と語る小波津さん。その思いは多くのうちなーんちゅ(沖縄人)の気持ちを代弁している。
基地≠ニお笑い≠大胆に結びつけた地元で大人気の舞台を通して、沖縄の複雑な現実を知る。 |