切れの良いセリフ回しと卓越した舞踊で多くの観客を魅了してきた歌舞伎俳優・中村富十郎さん(78)。わずか7人しかいない人間国宝の歌舞伎俳優である。富十郎さんは今年4月、酷使してきたヒザの関節を痛めるというアクシデントに見舞われたが、休むことなく新作「閻魔と政頼」に挑んだ。
「閻魔と政頼」は、地獄の番人・閻魔大王と、その追及をかわそうとする鷹匠の政頼が軽妙な駆け引きを繰り広げるユーモラスな演目。主役の鷹匠を演じるのは脚本を書いた中村吉右衛門さん、そして閻魔大王を演じるのが中村富十郎さんだ。舞台には8歳の息子・大ちゃん(中村鷹之資)も登場する。カメラは、台本を読み込み、役作りに精魂を傾ける富十郎さんの姿におよそ一か月間密着し、新たな舞台が出来上がっていく様子を追う。
番組は、若き後輩・市川染五郎さんへの熱のこもった「舟弁慶」の演技指導、60歳を過ぎての結婚をめぐる秘話や家庭人としての素顔などを交え、78歳にしてなお新たな芸を切り開こうと情熱を燃やす人間国宝の姿を活写する。 |