5月27日(日)放送
地域医療再生への挑戦 〜夕張市立総合病院の100日〜

写真左:村上智彦医師(左)
写真中:4月から診療所として再出発した旧・夕張市立総合病院(雪の夕張市立診療所)
写真右:夕張(清水沢駅)

去年12月、北海道夕張市に一人の医師が着任した。村上智彦さん。

財政破たんした夕張市のなかで、市立病院もまた、40億円の負債を抱えて存立の危機を迎えていた。村上医師はその追いつめられた病院の経営立て直しに名乗りをあげたのである。

村上医師は北海道(旧)瀬棚町の診療所で、日本で初めて肺炎球菌ワクチンの公費助成を実現するなど、地域医療のリーダーとして知られてきた。しかし、市町村合併をきっかけに新しい町の町長と対立、瀬棚を去り、新潟県の病院へ。それから半年あまり、道産子の村上医師は、関係者からの誘いもあり、地域医療の再生を図るために北海道に戻ってきた。「ETV特集」では村上医師の地域医療への取り組みを、旧瀬棚町時代から継続して取材してきている。

村上医師の持論は「医療は町作りの一環」だというものだが、財政破たんした夕張には「金」はない。しかし、「知恵」をしぼれば、町を以前よりよくすることができるはず……。村上医師の理想と行動力にひかれて、多くのスタッフが夕張に集まり始めた。瀬棚でともに働き、その後は各地で地域医療に取り組んできた看護師やレントゲン技師。さらに東京の経営コンサルタントも協力を申し出た。破たん以来、人口の激しい流出が止まらない夕張。しかし今、情熱を燃やす医師や医療スタッフが次々に新しい住民として移り住んできている。

「地域医療は病院のなかにいてはできない」と考える村上医師は、長期の入院患者を可能な限り地域に返し、その代わり、訪問診療を充実させる。積極的に地域に出て、往診や健康懇話会、あらゆる機会を通して直接、住民に語りかけるつもりだ。いままでは受け身で、行政サービスは充分に受けられて当然だと考えてきた住民の意識を変えることで「再生」のきっかけをつかみたいと村上医師は云う。全国で自治体病院の破たんが続くなか、夕張病院のゆくえは、日本の地域医療の今後を占う試金石となる。

村上医師と、実力と情熱を備え持つプロたちがそろった医療チームは、果たして住民の心に再び「希望」の芽を出させることができるだろうか?……破たんから 「公設民営」によって立ち直ろうとする自治体病院の内部に、長期にわたってカメラを据え、地域医療再生の可能性を見つめる。

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