北海道夕張市の財政破たんが注目を集めているが、実は破たん寸前にまで追いつめられた町や村は日本中にひしめいている。地方自治体にとっては、まさに「冬の時代」だ。
かつて木曽ヒノキの伐り出しで賑わった長野県王滝村。村はずれの滝越地区は11戸19人が暮らす過疎の集落だ。住民のほとんどはお年寄りだが、そのなかに、一人だけ元気な声を響かせる子どもの姿がある。静かな山里のたたずまいに惹かれて移り住んできた若夫婦のあいだにできた3才の女の子、ほのちゃん。滝越地区では32年ぶりに生まれた子どもである。
ほのちゃんの両親には、いま大きな悩みがある。村営スキー場の経営に失敗、財政危機に追いつめられた村役場が、滝越地区と村の中心部を結ぶバス路線を廃止してしまったのである。学校まで冬は凍結する道を車で走って30分、バスがなくては通学はままならない。ほのちゃんが学校に上がるときには、大好きな滝越を去らなければならなくなるかもしれないという。滝越のお年寄りたちも、バスがなくなったことで、病気になったら生まれ故郷で暮らせなくなった。平家の落人が隠れ住んだことから始まるという山里の暮らしに崩壊の影が忍び寄る…。
国が新たに採用した財政指標「実質公債費比率」(自治体予算に対する借金返済の割合)からいえば、財政破たんした夕張市より苦しい自治体が全国に7市町村、王滝村もそのひとつだ。三位一体改革など、国の政策にほんろうされる「地方」の現実を見つめるドキュメンタリー。
|