8月12日(土)放送
戦争へのまなざし 〜映画作家・黒木和雄の世界〜
   
写真:映画『紙屋悦子の青春』(2006)撮影中の黒木和雄さん(手前右)

 映画作家・黒木和雄は、2006年4月12日、『紙屋悦子の青春』を完成させたところで突然逝ってしまった。最後まで日本の、日本人の敗戦体験にこだわった映画人生だった。とりわけ晩年力を注いだのが『父と暮せば』(2004)を始めとする戦争4部作である。なぜ黒木はこれほど戦争にこだわったのだろうか。それを解く鍵がある。最後の作品『紙屋悦子』のメイキングを記録した50時間に及ぶ映像である。

 黒木は勤労動員という銃後にありながら過酷な戦争体験をしている。敗戦直前に空襲を受けたのである。そのグラマン機の急襲で黒木は被弾した親友を見捨ててしまった。少年黒木に「うしろめたさ」が暗い影を落とす。黒木が残したすべてのフィルムに、この「うしろめたさ」が焼き付けられている。

 戦中派の老夫婦が戦争体験を回想する遺作『紙屋悦子の青春』には「敗戦をふたたび抱きしめよ」という黒木の晩年の思いが貫かれている。戦争、敗戦という事実から目を離すな、うしろめたさを直視せよというメッセージだ。

 番組では『紙屋悦子の青春』製作に最後の力をふりしぼる黒木の姿を記録した50時間に及ぶメイキング映像を軸に、後期の戦争を画いた4作品(※)と原点であるデビュー作『とべない沈黙』(1966)を手がかりにひとりの映画作家がこだわった「戦争」を関係者の証言で浮き彫りにする。

証言者:原田芳雄、原田知世、永瀬正敏、ほか

『TOMORROW/明日』(1988)
『美しい夏キリシマ』(2003)
『父と暮せば』(2004)
『紙屋悦子の青春』(2006)

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