10月22日(土)放送
第1部 気になる数 〜出生率1.29の少子化社会〜

 数字は、人間社会のさまざまな実態を映し出す。しかし一方、具体的でわかりやすいがゆえに、その裏側に隠されている姿を見えにくくしがちである。この番組は、メディアなどで話題になっている数字=「気になる数」を出発点に、次々に意外な数字や統計を紹介することで、「気になる数」についての日本人の常識・価値観を揺さぶろうという企画である。

 新番組開発を目指しての第一作で取り上げる数字は“1.29人”。女性一人が生涯に出産する子供の数であり、少子化問題を象徴する数字である。その一因は、大勢の子供を養育する経済的余裕がないからだと言われている。しかしこんな数字がある。“2409万匹”。犬と猫の飼育数であり、少子化に歩調を合わせるように増大の一途をたどっている。果たして少子化は本当に経済的な事情なのか?現代人にとって子供とは何かを、この数字は問いかけている。

 スタジオには5人のゲストを招く。次々と提示される突拍子もない数字を前に、それぞれの数の持つ意味についてさまざまな立場からバトルトークが展開される。

 数字が示す現実と隠された実態について議論を進めることによって、少子化は本当に問題なのか、ひいては“1.29人”という数字の背後に秘められた、家族と子供、そして個人にとっての幸福とは何なのか?を考えていく。 

<スタジオ出演者>
江川達也(漫画家)
野口美佳(女性下着通販会社(株)ピーチ・ジョン社長)
ソニン(タレント)
ルー大柴(タレント)
パトリス・ルロワ(フランス文部省所属・慶應義塾大学訪問講師)

第2部 北朝鮮に送られたシベリア抑留者たち
シベリアで抑留された後北朝鮮へ移送され、過酷な体験をした野口富久三さんは今年8月、シベリア抑留スケッチ展を訪れた。

 今年、ロシア国立軍事アーカイブから、日本政府に、シベリアから北朝鮮に移送された抑留者27,755人の名簿が渡された。ロシアが抑留者の名簿を公開するのは、1991年ゴルバチョフ訪日の際に渡された38,000人の名簿以来14年ぶりのことだ。この名簿によって、シベリア抑留者の一部が北朝鮮に移送させられていた事実が初めて明らかになった。さらに軍事アーカイブからはスターリンの北朝鮮への移送命令書が発見された。それによれば、スターリンは1946年4月「病弱になった抑留者を選別し、5月25日から8月20日の間に北朝鮮へ移送するように」と命じていた。当時、ソ連は、極東開発、特に第2シベリア鉄道の建設に労働力が必要となり、屈強な抑留者をバイカル湖付近に集めていた。その際、収容所ごとに病弱者のみを選別し、北朝鮮へ移送しようとしたのだ。

 北朝鮮に送られた抑留者には過酷な運命が待ち受けていた。今まで一度もその体験を話すことはなかった北朝鮮からの帰還者たちも名簿公開を機に、初めて厳しい体験を語り始めた。中川清さんによれば、ピョンヤン郊外のサムハプニ収容所では、強制労働に従事する中で、6,000人のうち1,000人が死亡、コレラで一度に300人が亡くなったこともあったという。また、橋詰正雄さんがいたチョンジン収容所では、日本人は屋外に寝かされ毎日10人以上が死んでいったという。「私たちは満州で捨てられ、ソビエトに捨てられ、二度にわたって捨てられた。あまりに過酷な生活で家族にも語ったことはなかった。北朝鮮には、今も亡くなった仲間たちの遺骨が多く眠っているが、墓参のすべもないことが心痛い」と橋本さんは語る。

 厚労省によれば、シベリア抑留者57万5千人にうち帰国した人は47万3千人、現地での死亡5万5千人で、残る4万7千人が消息不明だった。今回明らかになった北朝鮮へ移送された2万7千人はその消息不明者たちと推測されている。さらに、北朝鮮からの日本への帰還者は47年末までに大体終了したとされているが、その時1263人の抑留者が現地に残ったとされている。その消息はいまだ不明である。

 番組では、今回初めてロシアのアーカイブから公開される北朝鮮移送関連文書や、抑留者たちが語る北朝鮮での抑留の詳細から戦後60年間、謎とされていた抑留者の北朝鮮移送の真相に迫る。
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