12月25日(土)放送
最後のレッスン 〜キューブラー・ロス 死のまぎわの真実〜
 今年の8月24日。アリゾナ州ソノラン砂漠の中の小さな町のグループホームで、家族にみとられ、ある精神科医が静かにこの世を去った。エリザベス・キューブラー・ロス。1万人をこす死にゆく人々に寄り添い、「死の専門家」と言われた女性である。

 「死」がタブー視され、治る見込みのないガンなどの患者たちがうち捨てられていた1960年代、キューブラー・ロスは死にゆく患者の心理を克明に聞き出した著書『死ぬ瞬間』を発表。「死」を直視すること、患者の心によりそう大切さを訴え、世界的ベストセラーとなった。その著作の数々は世界中で読み継がれ、体の痛みとともに、心の痛みのケアの大切さを説くキューブラー・ロスの主張は、20世紀の終末期医療のあり方に大きな影響を与えてきた。

 多くの人の死を温かくみとってきたキューブラー・ロスは、9年前、脳卒中に倒れ、半身不随となり、長く苦しい晩年に向き合うことになる。多くの人を救ってきたはずのキューブラー・ロスは、思いもよらない自らの「終末」に怒り、苦しんだ。「私は神に、あなたはヒトラーだ、と呼びかけた。でも神は、ただ笑っていた。」2001年の夏、彼女はインタビューに答え、語っている。

 「死の専門家」の人生の「最後のレッスン」とは、いったい何だったのか。
 番組では、スタジオに彼女の研究に影響を受けたゲストを招き、「死と死にゆくことの大切さ」を現代の医療に伝えたロスの業績を振り返ると共に、キューブラー・ロス自身の3年前のインタビューや、家族、親友への取材をもとに「死の専門家」がどう最後を生ききったかを描き、彼女の主張であった「人生を十全に生きること」の意味にせまる。


出演:柳田邦男(作家)・山崎章郎(医師)
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