5月22日(土)放送
祖父・漱石〜夏目房之介がたどる『猫』誕生百年〜
 漱石の孫、夏目房之介(漫画家)は、先頃実家で『文学論・第五編』の初稿を発見した。これは漱石が、当時生徒だった中川芳太郎の書いたものを全面書き直しした上、破棄した原稿26枚で(秋山豊の鑑定による)今まで行方不明とされていたものである。

 今回の発見は文学史上大きな意味を持つ――と東大教授小森陽一、英文学者亀井俊介などの研究者は原稿に強い興味を示す。

 「文学論は西洋文学と東洋文学の相違点をふかんし見据えた始めての書。書き直しでその部分を興味深く付け加えていた」と小森教授は言う。

 房之介はこの発見を機に、今まで避けて来た作家漱石のれい明期に初めて対じしようと決意した。「空白の時代」と呼ばれるロンドン留学から、『猫』などの執筆を経て『文学論』発表までの祖父の生き方、心のかっとうを見つめ直すことで、文学者・夏目漱石の新たなる人物像に出会える、と房之介は考えている。

 日本近代小説の祖・夏目漱石誕生のきっかけとなった『吾輩は猫である』の発表から、今年で100年。番組は、夏目房之介が祖父・漱石の心の軌跡をたどる。
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