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戦争が起きあがると 飛び立つ鳥のように
日の丸の翅をおしひろげそこからみんなで飛び立った
一匹の詩人が紙の上にいて
群れ飛ぶ日の丸を見上げては
だだ だだ と叫んでいる (一部抜粋)
沖縄で生まれ、本土で生きた詩人・山之口貘。 去年生誕百年を迎えた貘の詩は、中学や高校の教科書に載り、フォーク歌手が曲をつけて歌うなど、今も多くの人に親しまれている。
去年、貘の一人娘、山口泉さんの家から、生前の貘の声や姿を記録した録音テープや16ミリフィルム、1万枚もの詩の草稿などが見つかった。泉さんもこれまで目にしたことのないものばかりで、貘の妻・静江さんが大切にしまっていたものだった。カビが生えるなど損傷が激しかったフィルムやテープをNHKが専門家に依頼して修復。復元することができた。その中には、昭和33年、35年ぶりに故郷沖縄の地を訪れた瞬間の感動の声や、死の一ヶ月前に病床で語った沖縄への思いなど、貴重なものが含まれている。
1903年に那覇に生まれ、19歳で東京に出た山之口貘。 琉球出身というだけで仕事を断られる時代、日本が戦争に向かう時代、そして遠く離れたふるさとの沖縄が灰じんと化し、アメリカの占領下に置かれた時代。そんな激動の時代の中で貘は詩を書き続けた。その多くは低い目線からの人間洞察と、生活の実感から発する平易な文体でつづられている。59歳で他界するまでに残した197編の詩。それは「苦難の歴史を歩んだ沖縄人の心の琴線に触れ、励まし続けた詩」(高良勉・詩人)だった。
そして今、再び巡ってきた「生きにくい時代」の中で、己を失わずひょうひょうと生きた山之口貘の生き方が見直されている。
放浪と極貧の生活の中で酒を愛し、ユーモアの中にも鋭い社会批評を忍ばせた貘の詩と人生。
新しく発見された資料や残された詩を手がかりに、貘の歩んだ足跡を縁(ゆかり)の人々と共に探っていく。
出演者: |
山口泉(長女) 高良勉(詩人) 高田渡(フォーク歌手) 佐渡山豊(フォーク歌手)
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