10月18日(土)放送
小沢昭一 明治大正昭和 流行(はや)り歌のココロ
 独特な話芸や一人芝居などで知られる俳優の小沢昭一さん。俳優としての顔のほか、日本各地に伝わる「放浪芸」を発掘し、その芸を受け継ぐという活動も行ってきた。その小沢さんが、今、明治から昭和にかけて、庶民の間で圧倒的に支持された「流行り歌」の掘り起こしに挑んでいる。

 明治時代には、戊辰戦争の行軍中に歌われた「宮さん宮さん」など、軍歌が流行る一方で、自由民権運動の流れをひく川上音二郎や添田唖然坊ら演歌師(演説の代わりに歌を歌う)たちが登場し、おもしろおかしく社会を風刺しながら歌い庶民に人気を博した。唖然坊が作った「のんき節」は、戦後、タレント議員石田一松の当たり芸として復活。さらには60年代のフォークソングとしても歌われた。小沢さんも、唖然坊の隠れた名曲「金金節」を発掘しみずから歌ってリバイバルさせた。

 演歌師たちは替え歌も多く作った。大正時代の流行歌「東京節」はアメリカの行進曲「ジョージア・マーチ」が元歌で、日本には賛美歌として入ってきた曲だった。そのメロディーに東京案内の歌詞をのせた「東京節」は「パイノパイノパイ」の囃子ことばが民衆の心をとらえ、戦後も森山加代子やドリフターズによって歌われヒットした。

 明治大正昭和の時代、ストレートな政治や社会への風刺、笑いや心をいやしてくれるメロディーは、いつも庶民の心のよりどころだった。昭和4年東京の写真屋の息子に生まれ、みずから激動の昭和を生きてきた小沢さんが、流行り歌が教えてくれる生き生きとした庶民の姿を、歌い語っていく。
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