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東京農大教授の小泉武夫さんは自称「発酵仮面」、発酵食品をこよなく愛する食いしん坊である。古来、日本人はみそやしょうゆ、納豆などの発酵食品、つまり目に見えない微生物の働きで出来る食べ物を大切にする食文化をはぐくんできた。しかし、今、食生活のインスタント化の中でそれは急速に崩れつつある。本物の「食」を求めてやまない小泉さんは、初夏の北海道の旅に出た。
函館ではイカ漁の季節が始まっていた。名物の塩辛を作るしにせのあるじは、塩辛を漬けるおけをプラスチックに変えたらイカが発酵しなくなったという。だから、この店では今も昔ながらの木のおけにこだわって塩辛を作っている。
根釧原野は牧場の新緑がまぶしい季節。最近は効率よく牛乳を搾るために放牧を行わない農家が増えてきたが、放牧でたっぷりと青草を食べた牛が出す乳でなければ長期熟成のチーズは出来ない。10か月から1年寝かせるというこだわりのチーズ作りを紹介する。
発酵はおいしい食べ物を作るだけではない。「廃棄物」と呼ばれた物が微生物の働きでよみがえった例も。釧路では、今まで捨てていたサケの内臓を使った魚しょう(魚のうまみを引き出したしょうゆ)作りが行われている。やっかい者扱いだった牛のふんも、発酵でミネラルたっぷりの「土」に生まれ変わる。その土で育てたアスパラの甘さが小泉さんを驚かせた…
おいしい物と出会い、目に見えない微生物が生み出す驚異的なパワーに感動する北海道の旅。
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