「3月21日。ガソリンスタンドの前には信じられないほどの長い行列が出来ている。アルジャジーラのニュースによると、あと2時間でB52がやって来る。」
「3月22日。開戦から3日。町中に煙が立ち昇っている。昼間はかなりの空爆を受けた。警報のサイレンも鳴らなくなってきた。もうそれさえあきらめてしまったのだろう。」
(バグダッド在住男性のブログ日記より)
イラク戦争のなか、世界中で注目された情報がある。“BLOG”=「ブログ」だ。
アメリカだけでもその数十万を超えると言われる「ブログ」。その中でアクセス数第1位を誇ったのが「サラム・パクス」と名乗るバグダッド在住イラク人男性のブログ日記だ。
鳴り響く空襲警報におびえる夜、人通りのとだえた大通り、物価の上昇した食料品に人々が群がる様子など、戦渦のバグダッドにある市民の日常が等身大でつづられ、世界14か国語に翻訳されるほどの人気を博した。アメリカの姿勢を批判しながらも身の危険を承知で反フセインを表明している彼のブログには、アメリカも含め、世界中から共感を寄せるメールが送られている。
戦争下、インターネットは敵対する国の人々をどのように結んできたのか。サラム・パクスのブログ日記をはじめ、離別後もEメールを通じて交流を深め続けたイラクと日本の若者たちの物語、ネット上で公表され続けてきたイラク・アメリカ中高生の開戦前の対話を通して、その可能性を考える。
スタジオ出演:池澤夏樹(作家) ピーター・バラカン(ブロードキャスター、音楽評論家) |