2014年6月21日(土)
【再放送】2014年11月15日(土)午後3時00分

鬼の散りぎわ
~文楽・竹本住大夫 最後の舞台~

伝統芸能・人形浄瑠璃文楽に長年君臨してきた人間国宝の竹本住大夫が、4月の大阪、5月の東京での華々しい引退公演を終え、舞台生活に幕を下ろしました。
住大夫は、登場人物すべてのせりふを語り、物語をつかさどる「太夫」の最高峰。
大正13年、大阪北新地生まれの住大夫は、文楽初の人間国宝である父・六世住大夫に幼少から仕込まれた文楽の申し子。
いぶし銀の語りで、荒ぶる武士から貧しい町人、老婆から生娘まで、あらゆる登場人物の情をよみがえらせ、客に涙を絞らせてきました。
そして、自他ともに厳しい稽古を課す「稽古の鬼」として文楽をけん引してきました。
一昨年、転機が訪れます。大阪市が突然文楽への補助金の削減を打ち出し、文楽を代表して交渉に当たっていた住大夫は、脳梗塞で倒れたのです。そのとき87歳。誰もが再起不能と考えました。
しかし住大夫は諦めませんでした。腹筋のトレーニングや発声練習を重ね、執念のリハビリで奇跡の復活を遂げ、引退公演でみずからの芸の集大成を披露する決意をしたのです。
番組では、昨年の暮れから撮影を開始。
みずからのふがいなさに焦り、落胆する姿。弟子への稽古で見せる、芸を伝えるための凄まじい気迫。妻との花見のおりに見せる万感の思い。そして劇場が一丸となり、住大夫がこん身の力をぶつけた最後の舞台。
喜怒哀楽の情を深くもの語る文楽の太夫ならではの、豊かな人間性を記録することができました。
68年の芸道をしめくくる引退公演にのぞむ住大夫に密着取材し、気骨ある引き際の姿に迫る番組です。

語り:國村隼
(内容59分)

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