2016年 42日(土)よる11時放送
再放送49日 午前0時放送(金曜深夜)

忘れられた人々の肖像
~画家・諏訪敦 “満州難民”を描く~

この冬、祖母の肖像に取り組んだ画家がいる。諏訪敦(すわ・あつし)48歳。祖母は、彼が生まれる20年以上も前の終戦直後に、旧満州、現在の中国東北部で亡くなっていた。31歳の若さだった。そのことを知るきっかけとなったのは、17年前に亡くなった父が最期に残した手記だった。そこには、終戦の年、昭和20(1945)年の春に一家が満蒙開拓団として満州にわたり、3か月あまりでソ連軍の侵攻にあい、逃亡し、たどり着いたハルビンの難民収容所で飢餓と伝染病に苦しんだ惨状がつづられていた。その年の冬、諏訪の祖母と叔父は亡くなった。父の手記は無念と怒りをあらわにして終わっていた。
それまで諏訪にとって、満州のこともそこで亡くなった日本人のことも遠い存在だった。諏訪は画家として、父の無念や怒りを受け止め、「忘れられた人々」のことを絵にしなければと、戦後70年の昨年、動き出す。満蒙開拓団にいた人々を訪ね、話を聞き、父の一家を知る人を探し出し、中国東北部を旅してその足跡をたどった。
なぜ彼らは満州にわたったのか?そこでどんな生活をしたのか?なぜ祖母は死ななければならなかったのか?取材で明らかになった事実をもとに、2か月あまりにわたるキャンバスとの格闘が始まった。諏訪の旅と創作の過程に密着し、祖母の肖像に込めた思いを描く。

語り:濱中博久
(内容59分)

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満州で亡くなった祖母の絵を描く諏訪敦。
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父の一家が暮らした旧馬太屯開拓村。
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逃げまどう一家がハルビンに向かう船に乗った埠頭。
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ハルビンの収容所で祖母と叔父が亡くなった。葬られたであろう場所で手を合わせる。