2016年 312日(土)よる11時放送
再放送319日 午前0時放送(金曜深夜)

下神白(しもかじろ)団地の人々

原発事故のため、いまなお10万人が避難生活を続けている福島。去年の2月、いわき市に、原発事故による避難者が入居するアパートが完成した。県営下神白(しもかじろ)団地である。
ここで暮らし始めたのは、事故を起こした第一原発に近い四つの町、富岡、大熊、双葉、浪江の住民、200世帯・337人。全員が原発事故前に住んでいた町に住民票を残したまま、ここで共同生活を始めた。原発事故は、四つの異なる町の住民が一か所に集まって生活するという特殊な環境を生み出したことになる。
下神白団地は、原発事故で家を失い、住み慣れた町を離れざるを得なかった人たちの"終(つい)の住みか"だ。住民の多くは高齢者で、60歳以上の一人暮らしが83人。障害を抱えた配偶者を支えながら二人だけで暮らしている「老老介護」の夫婦も少なくない。
就学前の幼児が4人いるが、小中学生は1人もいない。住民のなかには、ドアを閉めてしまえば物音が聞こえず、高齢者が孤立しがちなアパート暮らしを嫌って仮設住宅を懐かしむ声が少なくなかった。
去年から被災者支援のボランティアとしてこの団地に通い始めた牧秀一さん(65・神戸市在住)は、こうしたアパートで900人近い人たちが誰にみとられることなく"孤独死"した阪神淡路大震災の現実を重ね合わせ、危機感を募らせる。
真新しいアパートの鉄の扉の内側で、原発事故で故郷を失った人たちは何を思い、どんな暮らしを営んでいるのだろうか、私たちはそれを知りたいと思った・・・。

語り:濱中博久
(内容59分)

この放送を共有する

※NHKサイトを離れます

写真
夕暮れどきの下神白団地
写真
下神白団地の人々
写真
富岡町からの避難者・横山けい子さん(86)と神戸から支援にきた牧秀一さん
写真
下神白団地で開かれたクリスマス会の一コマ