2015年 620日(土)よる11時放送
再放送627日 午前0時放送(金曜深夜)

洒落(しゃれ)が生命(いのち)
~桂米朝 「上方落語」復活の軌跡~

ことし3月、89歳で他界した落語家、桂米朝。
60年間5300回の高座で演じた演目は180以上。庶民の喜怒哀楽を洒落っけたっぷりに語り、半世紀にわたり人々を魅了し続けた「上方落語の至宝」である。
上方落語は、座布団一つの話芸を追求する江戸落語に比べ、三味線・太鼓・鉦(かね)の“おはやし”を駆使する華やかな音楽性が特徴。しかし戦後、漫才の勃興により絶滅の危機に陥った。それを復興する奇跡をなしとげたのが、桂米朝だった。
現在、遺品から新資料が次々と発見され、その軌跡が明らかになりつつある。引退した落語家や古い芸人を訪ね回って聞き取りしたノートや膨大な古文献からは、高座で演じられなくなったネタを復元する過程が浮かび上がった。また京都・祇園に通っては芸妓(げいぎ)のしぐさや踊りを習い、狂言やざれ歌も身につけるなど、落語を単なる話芸としてだけでなく、上方諸芸を凝縮した文化としてよみがえらせようとした。
さらにみずからが培った芸を後世に残すため、あまねく弟子たちに伝え残したのも大きな功績。桂ざこば、月亭可朝をはじめ、今はなき桂枝雀、桂吉朝などその数、実に60人以上。「落語家にはいろんな人がいてこそおもしろい」。型にはめるのではなく、弟子たちの個性や長所を見抜き、延ばすことで個性豊かに育てていった。それが現在の上方落語の人気へとつながったのだ。
番組では、絶滅にひんした上方落語の復活に人生をかけ、現在の隆盛へと導いた桂米朝の知られざる顔に迫る。

語り:近藤正臣
(内容59分)

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3月に89歳で他界した上方落語会の至宝、桂米朝。
5300回の高座で演じた演目は180以上にのぼる。
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昭和20年代、引退した落語家たちを訪ね回り、聞き取りしたノート。米朝は現代的なアレンジを加え、古い落語を復活させていった。
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復活した上方落語を伝えるため、個性豊かな60人以上の弟子たちを育てた。
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落語だけでなく、かつての寄席の芸も弟子たちに引き継がせた。