2015年 5月30日(土)よる11時放送
6月6日 午前0時放送(金曜深夜)
墨に導かれ 墨に惑わされ
~美術家・篠田桃紅 102歳~
常に和服を身にまとう現役最高齢の美術家・篠田桃紅さん、102歳。戦後すぐに渡米、文字の決まりごとを離れた、「水墨の抽象画」というジャンルを確立。大英博物館やメトロポリタン美術館に収蔵されるなど、世界的に高い評価を得てきた。日本エッセイスト・クラブ賞を受賞するなど文章にも定評があり、今春に発表した新刊はベストセラーとなっている。
東京・青山のマンションで、通いのお手伝いさんの力を借りて一人暮らし。今も住居の一角にあるアトリエで制作に打ち込む。一本一本、墨の線を積み重ねていく桃紅さん。線を足したり、塗り固めたりはしない。居合抜きのような一瞬の真剣勝負。その作風には、「私のあるじは私」と自由を求めて生きてきた人生が大きく関わっている。学校の決まり事に異議を唱えた子ども時代。「必ず結婚せよ」と言う父親にあらがい、家を出た20代。戦後は伝統的な書とは一線を画し、文字の枠を取り払って、独自の作風を切り開いた。そして40代で単身渡米してからは、アメリカの自由な空気に刺激を受け、誰もまねすることのできない墨の世界を作り上げた。
桃紅さんが創作の時に思い浮かべるのは、例えば、夜明けの空、時雨がぬらす木の色、そして、木の葉を縫う風の音・・・。そうした自然の移ろいや音に触れて芽生えた「心の兆し」をかたちにしていく。古来より無限の色を含むと言われてきた墨は、その日の天候や温度、湿度、そして、自分の心のありようで刻々と変化する。日々意表をつかれ、永遠に裏切られ、だからこそ、墨で自分を鍛えているという。
102歳の今もなお、新たな線、新たな美を目指して制作に没頭する桃紅さん。墨に導かれ、時に惑わされながら生きる日々を見つめる。
語り:奥貫薫
(内容59分)
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- 自然の移ろいや気配をかたちに
- 43歳の時に単身アメリカへ
- 水墨の抽象画という独自のスタイル
- 102歳の今も現役
- 墨に生きる美術家・篠田桃紅さん