2015年 418日(土)よる11時放送
再放送425日 午前0時放送(金曜深夜)

終わりなき戦い
~ある福島支援プロジェクトの記録~

福島原発事故から5年目の春。いまも毎月3日間、決まって福島を訪ねてくる人たちがいる。放射線防護学者の安斎育郎さん(75)をリーダーとする「福島プロジェクト」のメンバー5人、いずれも経験豊富な科学者、エンジニアなどの専門家だ。原発事故が起きてから、福島の人たちが少しでも安全に、安心して暮らせるように、ボランティアとしての活動を続けてきた。

メンバーの平均年齢は66.6歳。活動は極めて実践的で、フットワークが軽いのが特徴だ。放射線の不安のなかで生活する住民の要望に応じて、さまざまな手助けをする。例えば、保育園の子どもたちのために安全な散歩道を選定すること。GPSと連動させた放射線測定器を手に歩き回り、子どもたちが福島の豊かな自然と触れあうことができ、しかも被ばくのおそれの少ない道を選び出す。単に放射線を測定するのではなく、そこにいた場合の推定被ばく量を計算し、自然放射線の量なども参考にしながら健康に与える影響についてのアドバイスを行う。局地的に高い放射線を計測するホットスポットを解消するため、メンバーがみずから「除染」に汗を流すことも珍しくない。

「福島プロジェクト」のモットーは「事態を侮らず、過度に恐れず、理性的に怖がる」。決して住民に「安全」を押しつけないが、かといって、ことさらに「危険」をあおることもない。決めるのはあくまで住民自身。専門家として客観的な情報を提供したうえで住民の判断を尊重、支え役に徹する。

原発事故で放出されたセシウム137の半減期は30年、10分の1まで減るには100年かかる。今後も気が遠くなるほどの期間、放射線と向き合って生活せざるを得ない福島の人たち。起きてはならないことが起きてしまった現実のなかで彼らをどう支えていくことができるのか・・・住民に寄り添い、支え続ける専門家たちの終わりなき試行錯誤を追う。

語り:三宅民夫アナウンサー
(内容59分)

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「福島プロジェクト」の5人(中央・赤いジャンパーが安斎育郎さん)
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「福島プロジェクト」のリーダー 放射線防護学者・安斎育郎さん(左側)
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GPSと連動させた線量計「ホットスポット・ファインダー」を駆使、放射能汚染の実態を探る
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汚染が残っている「いぐね」(屋敷林)の伐採跡を除染する「福島プロジェクト」のメンバー