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里山のチカラ

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里山は日本を救う“宝の山”となるか? 第一作は木の資源のエネルギー利用から里山に眠る価値を見つめます。里山資本主義の革命家たちの提言に注目。(フェイス/2011)

続里山資本主義 過疎の島こそ21世紀のフロンティア

いま周防大島が熱い! 高齢化率全国1位だった過疎の島に、移住者が増えているそのわけは? 太陽の光に満ちた島に、あすを生きるヒントを考えます。(フェイス/2012)

里山資本主義 若者は“放棄地”を目指す

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里山資本主義 神様を活かせ

出雲とその周辺に眠る「神様」という資源。その潜在能力は、ローマやアテネが持つ資産にも匹敵する?常識破りの新しい地域経済の自立を考えます。(フェイス/2012)

里山資本主義 世界をつなぐ幸せのネットワーク

“つながること”で、地域に眠っていたものに新たな価値が。シリーズ最終回は、人と人のつながりで生まれる、人と地域と世界の幸せについて考えます。(フェイス/2013)

あの人に聞く“里山のチカラ”お金に換算できない価値が眠るところ

藻谷浩介さん(地域エコノミスト)

【プロフィール】
地域エコノミスト。日本政策投資銀行参事役を経て現在、日本総合研究所主席研究員。長年、地域経済再生のために全国で提言を続けている。日本の全市町村をくまなく回り、年間300回もの講演活動を行う。著書に『デフレの正体』。NHK広島局制作の「里山資本主義シリーズ」にナビゲーターとして出演し、身近な資源を活用する地域発の新たなライフスタイルを提言した。2013年夏には、NHK広島取材班と共著で『里山資本主義 ―日本経済は「安心の原理」で動く』を出版した。

●消えゆく里山

私が育ったのは、山口県の瀬戸内沿いのところです。丘の上に家があって、見下ろすと町や、その向こうに海が見えました。もともとは段々畑だったところに建てられた家で、まわりは田んぼだらけ。夜はカエルが鳴くような里山です。子どもの頃は、近くのため池でよく釣りをしました。少し大きくなって近くの山に登ると、「なんでこんなところにまで」という山奥まで段々畑があったことが印象に残っています。山口県は平地が少ないので、ちょっとでも斜面が緩いと、段々畑を作ってそこに人が住んでいたんですね。
 母方は、北陸の山奥の村で700年前から庄屋をやっていた家系です。本当に雪深い山奥にある村で、残念ながら私が子どもの頃に、廃村になりました。まだ人がいた頃に遊びに行っていたんですが、だんだんと人がいなくなるのを肌で感じられました。

そういう感覚を持って全国の里山を回っていると、いま同じように消えそうになっている里山がたくさんあることが良く分かります。住んでいる人の年齢からすると10年後や20年後には、相当数の山村集落が消えてしまいそう。高度経済成長を何とか生き延びて、21世紀まで続いたんだけど、もう限界にきている。何百年にも渡って継承されてきたものが、いずれは山村がことごとくなくなってしまうかもしれない。それで良いのだろうか? そんなことを考えながら、いつも全国を回っています。「里山なんて経済的に価値がないから、住む人がいなくなっている」と思う人もいるでしょう。でも実はそうじゃないんです。

●里山資本主義とは?

里山には、代々の先祖が営々と育んできた、自然と共に生きるシステムがあります。そのルールを守っていると、いまの時代でも、水と食料と燃料、それに幾ばくかの現金収入がちゃんと手に入ります。新鮮な野菜に魚、おいしい水、火を囲む楽しい集まり、そして地域の強いきずな。
 都会であくせくサラリーマンをやっている人間よりも、里山暮らしの人間の方が、お金はないけど、はるかに豊かな生活を送っているということを、私は各地で実感しています。

つまり里山にはいまでも、人間が生きていくのに必要な、大切な資本があるのです。これはお金に換算できない、大切な価値です。そうした里山の資源をいかしていくことを、「里山資本主義」という言葉を使って伝えようとしたのが、NHK広島局がつくる「里山資本主義シリーズ」でした。シリーズは最終回を迎えましたけど、「里山は見えない資本なんだ」「お金に換算できない大切なものなんだ」ということを、これからも言って歩こうと思っています。

●里山の資源で地域が自立する

真庭のペレットは、海外にも輸出されている

里山には、お金に換算できない価値だけでなく、21世紀の日本経済にも大変重要な、金銭換算できる価値も眠っています。
 たとえば『革命はここから始まる』で紹介した、木のエネルギー。岡山県真庭市の建材メーカーが、工場で出る木くずで自家発電を始めたところ、年間1億の電気代がゼロになった。しかも余った電気を売電して、毎月400万円も定期収入が入るようになった。
 それまで産業廃棄物として、お金を払って引き取ってもらっていた木くずが、すごいお金に化けたんです。さらには、木くずから燃料ペレットも作って、それが地域の小学校や農家のハウス栽培に使われている。

これには単なるコストダウン以上の意味があります。それまで石油やガスの代金として、県外や国外に出ていっていたお金が、地域で回るようになった。しかも地元で作ったペレットですから、グローバル市場のエネルギー価格の乱高下にも巻き込まれずに済みます。はるばる中東から石油を運んでくるのではなく、目の前の木の資源を活かしてエネルギーの一部を自給することが、地域の自立と安定化につながっているんです。

欧州のオーストリアは、森林資源の活用を日本よりもずっと先まで進めていて、これまでコンクリートで造っていた中高層建築建物を木造中心に切り替えるところにまで手をつけています。『若者は“放棄地”を目指す』で紹介したように、そのために消防関係などの法律も改正しました。木造建築が増えれば、当然、木材加工が増えて木くずも増え、木くずのエネルギー利用がどんどん増えます。木造建築は、断熱効果が高いので、冷暖房代も節約できます。集成材を使えば、火災にも強いのです。そうやってオーストリアは、環境に優しい循環を取り戻そうとしているんです。

7階建てのマンションを木で造るというと、日本人は驚いてしまう。自分たちが、五重の塔や奈良の大仏殿を造ったことを忘れて、いつの間にか大きな建物は木で造ってはいけないと思い込んでいるんです。
 そもそも世界の中で、日本ほど自然が豊かで、木を切っても簡単に再生できる場所はなかなかありません。これだけ木の資源に恵まれているのに、それを活かさずに建物をほとんど木で作らない。ほんの少し木造建築を見直していくだけで、日本の山の価値は大きな勢いで再生していくと思います。少しだけやり方を変えれば、経済的に無価値と思われていた里山が、宝の山になり得るんです。