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おばあさんを探しに・・・なんと、キャスティングは中国で!

おばあさんを探しに・・・
なんと、キャスティングは中国で!
ドラマスペシャル『迷子』

今作の主演を務める中国人女優、惲玉純(ユン・ユーチュン)さんのキャスティング秘話と、一から手探りで実現した制作秘話を一挙大公開!








中国人のおばあさんが日本の都会で迷子になり、その彼女をとりまく様々な人々との交流を描く、ドラマスペシャル『迷子』。今回は、その驚きの制作秘話を、演出の中島ディレクターに伺ってきました!

主役は、中国人女優。決め手は、入れ歯!?
普段、街を歩いているとよく外国人に話しかけられるという、中島ディレクター。道を聞かれたり、時には目的地まで連れていってあげたり。そんな、よくある日常に潜む、ふとした外国人との"フツー"の触れ合い。今、日本には外国人の方が結構いるのに、ドラマで描かれることって、あまりないなと感じていた、そんな時に、今回脚本を手掛けた作家・前田司郎さんから、ちょうど上がってきたのがこのドラマの企画だったのだそう。「前田さんから頂いた企画を読んで、すごく身近に感じて、是非ドラマにしたいと思った」という中島ディレクター。しかし、実際ドラマ化に至るまでには、タイトルさながら、"迷子"になるのではないかというぐらいの、思わぬ苦労の連続だったとか・・・。

まずは、何と言っても、主役のおばあちゃんを演じている中国のベテラン女優、惲玉純(ユン・ユーチュン)さん。

今回のドラマ制作について、「やはり一番の苦労はキャスティング」と言う、中島ディレクター。なかでも、作品に重要な意味を持たせる、外国人のおばあちゃんのキャスティングは、なんと、中島ディレクターご自身が中国まで出向いて行ったのだそう。日本とは勝手が違う、右も左もわからない土地でのキャスティングは、やはり一筋縄では行かず、惲さんと運命の出会いを果たすまでは、なみなみならぬ苦労があったようで・・・。

中島:「日本にいらっしゃれば、それにこしたことなかったんですけども(笑)、どうしても、それでは、"嘘"になってしまう。やっぱり現地で生きてらっしゃる人が持つムードを引き出して、リアリティを出したかった。とにかく、あてがあれば、どこにでも行ってキャスティングをしようとは思っていました。」

何という、思い切り!
インタビュー冒頭から、このドラマにかける思いが伝わってきました。 でも、ここで早くも大きなハードルが・・・

中島:「何回も中国まで行くことはできないので、とりあえずのあたりをつけてから、大連 まで会いに行ったんですね。ところが予定していた方が病気になられてしまったんです。いきなりご破算になってしまって、思わずコーディネーターの方と二人で「えー!」って途方に暮れてしまいました・・・(笑)。」

出だしから、想定していた主演候補が病に倒れるという、何とも壮絶なハプニング!
そこから、どうやって惲さんにたどり着いたのでしょうか?

中島:「そこから、気を取り直して上海へ戻ってきて、大急ぎで資料を集めたり映像を見せてもらったりしていたんですが、私自身は時間がなくて、やむなく帰国したんです。そこから、現地に残っていたコーディネーターの方が惲さんを探し出してくれて、VTRや写真を日本に送っていただきながら、交渉を進めました。」

そんなこんなで、手探りでキャスティングを進めるなか、キラ星のごとく中島ディレクターの目に飛び込んできた惲さん。出演の決め手が、またユニークだったようです。

中島:「これまでの出演作品を見せてはいただいたのですが、正直、中国語なので、よくわからなかったんですよね(笑)。そういう意味では、かなり博打に近い感じで決めたなと思います(笑)。
でも、惲さんの映像を見たときに、普段は入れ歯をされているんですが、その入れ歯のないお顔がすごくかわいかったので、ピンときました。実は今回のドラマも、入れ歯なしで演じていただきました。今思えば、あの表情が決め手になったんだなぁと思います。」




ついにご対面! そして、いよいよ撮影開始。
そして、いよいよ対面の日。
中島ディレクターは、中国語のあいさつを覚えて、関西空港まで迎えに行ったのだそう。

中島:「いやーもう、待ちきれなくて、空港まで迎えに行ったんです。とにかく、想像していたとおりの、かわいいおばあちゃんが来た!って思いました。でも正直なところ、すでに撮影が始まっていたので、ちゃんと到着してくれたことの喜びが、何よりも大きかったです(笑)。」

確かに、撮影が始まっているのに主演女優が到着しないなんて、制作陣のハラハラドキドキは相当だったことでしょう・・・。普通の撮影現場にはないような臨場感と緊張感が伝わってきます。 そして、いよいよ、日本語を全く話すことができない主演女優を迎えての撮影。いったい、現場にはどんな空気が流れていたのでしょう?

中島:「事前に、私とコーディネーターさんで、私が日本語のセリフを読んで、コーディネーターさんがおばあちゃんのセリフを読んで、っていうCDを1枚作ってお渡ししました。中国語に訳した台本もお渡ししていたんですけど、やっぱり音で聴くのが感じもつかみやすいし、覚えやすいと思ったんですよ。惲さんは、撮影期間中、毎晩ホテルでそのCDを聴いて予習して、次の日の撮影に挑んでくれたんです。それでも、自分の中国語のセリフに、途中で日本語のセリフが挟まって、という繰り返しは、やはりすごく大変な作業だったと思います。」

このリアリティの追求は、まだまだ全編に散りばめられています。

例えば、言葉については、中国語のセリフには翻訳の字幕を付けず、実際に言葉の伝わらない登場人物同士のコミュニケーションを、視聴者の皆さんも追体験することができる仕掛けになっています。そして、衣装にも・・・

なんと惲さんご本人の私服のベストが、劇中の衣装として使用されているとのこと。このベスト、日本で売っているものにはない、なかなかの味わいなのだそう。こんな細部に渡る追求が、登場人物たちの距離感や物語のリアリティを演出しているのです。

撮影終了後の、おたのしみは?
せっかくの初来日、ということで、撮影を終えた惲さんは、撮影の地・大阪から、京都へと足を延ばし、金閣寺などを拝観、胡麻豆腐にも舌鼓をうたれたそうです。でも・・・

「撮影より疲れた」

と、ご本人談。
言葉がまったく伝わらない土地で朝から晩まで行われたドラマ撮影のほうが、京都一日観光よりも楽とは、根っからの役者。御年80歳、62年の女優としてのキャリアは、やはりハンパないのです!

そんな惲さんと制作陣の想いが詰まったドラマスペシャル『迷子』。 日常生活の中でのふとしたエピソードに照らし出される、普通の人たちの、普通の優しさや葛藤。このドラマで伝えたいこと、受け取って欲しいメッセージとは・・・

中島:「人の当たり前の姿というか、なんかでもそういうことって、テレビドラマだと切り捨てられてしまう話だけど、そういった普通の生活の中にこそ、ドラマが潜んでいると思うんです。『迷子』の登場人物達もいろいろ厳しい家庭環境の中で育っているけれど、だからといって人に冷たくするわけでもないし、ちょっと放っておけないなって気持ちも働いたりとか、表面的には自分がつらいことを出さなくても、やっぱりそれぞれに抱えていることはあるんだなとか。このドラマを観る人がどう受け止めるか、答えがあるものでもなく、押しつけるものでもなく、一緒に体験しながら、体感しながら、感じてもらえればいいなと思っています。」

ドラマスペシャル『迷子』は、2月19日(土)夜9時から放送。
海を越え、はるばる日本に来てくれた素敵なおばあちゃんが、私たちに"何か"を気づかせ、教えてくれるはずです。

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