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家族を見つめ、自分を見つめて生きてきた、ある父親の手記を、感動のドラマ化! 特集ドラマ「風をあつめて」

家族を見つめ、自分を見つめて生きてきた、
ある父親の手記を、感動のドラマ化!
特集ドラマ「風をあつめて」

ふたりの福山型筋ジストロフィーの娘を持つ父親の手記「私たち夫婦の普通の家庭」を原案に描かれる、特集ドラマ『風をあつめて』。手記の著者から脚本家へ、そして、制作スタッフ、出演者へと大切に引き継がれた"思い"のバトン。かけがえのない家族の物語のドラマ化が実現しました。 今回、私、松子は、このドラマがどのようにして生まれ作られていったのかを探りに、放送に先駆けて行われた試写会・会見に加え、制作統括の谷口チーフプロデューサーにお話を伺いに行ってきました。


ずっと望んでいたことが現実に・・・
2月11日(金・祝)朝8:20~9:19に放送される、特集ドラマ『風をあつめて』。このドラマは、昨年45年目を迎えたNHK厚生文化事業団が主催するNHK障害福祉賞において、第31回(1996年)最優秀賞を受賞した「私たち夫婦の普通の家庭」(浦上誠著)を原案にドラマ化された作品です。今回の試写会・会見には手記を書かれた浦上誠さんも参加されました。

浦上さんがこの手記を書いたきっかけは、台風情報をNHKラジオで聞いていた時のこと。ちょうどその時に流れていたNHK厚生文化事業団の手記募集のアナウンスが耳に残り、「この現実を、もう誰にでもいいから訴えたい」浦上さんはその噴火寸前の想いをぶつけるかのように、なんと半日で書き上げたのだそう。その自らの手記がドラマ化されると聞き、最初はキツネにつままれたような話でびっくりしたという浦上さん。ですが、その本心は・・・

浦上:「本音を言うと、ドラマになったらいいなと思っていました。他の放送局でやっていたドキュメンタリータッチの障害をテーマにしたドラマを見ながら、『うちもならないかなぁ~』って、ずっと心の中で思っていたんです。まさか本当に実現するなんて・・・。」

密かに心待ちにしていたこのドラマで、浦上さん役を演じているのは安田顕さん。そして、奥様の攝さん役を中越典子さんが演じています。お二人が演じたこのドラマは、浦上さんの目にどのように映ったのでしょうか。

浦上:「もうひとつの自分たちの家族というか、同じ境遇の夫婦がいるように見えました。僕も家内も、だんだんと安田さんと中越さんが自分たちに見えてきて、しゃべり方も性格も見抜かれているんじゃないかと思うくらいでした。感情移入しすぎないようにと、事前にDVDを何回も見て免疫をつけて試写会に臨んだつもりだったのですが、やっぱり自分たちの昔の場面がリアルによみがえってきてしまいました。それだけ、ドラマで表現や設定は変わっていても、内容はすべてストレートに描いてくれていると感じました。」

こんなにも原作者ご本人の心に響く作品が完成したのは、素晴らしいスタッフとの出会いによるもの。浦上さんはそうおっしゃっていました。浦上さんを演じた安田さんの「プレッシャーもありましたが、素晴らしい脚本に巡り会えて、とにかくカラッカラになるまでやり切りました」という言葉からも、役者さんの演技を超えた本気の想いが伝わってきます。ただ、何事にも"産みの苦しみ"はつきもの。それを探るべく、松子は制作統括の谷口チーフプロデューサーのもとへ・・・

ドラマだからできる感動を伝えたかった
実話とは何よりも説得力を持つもの。その実話に迫るドラマを作るために、制作スタッフにもさまざまな想いがあったはず。障害という厳粛なテーマを描くために、どのように作品に取り組んでいったのでしょうか。まず、数ある受賞作品の中から、この手記を選んだ理由を尋ねてみました。

谷口CP:「多くの候補の中で、この手記には多くの視聴者の共感を得られる何かがある、と思いました。以前にNHKのドキュメンタリー番組が浦上さんのご家族を取り上げたこともあるのですが、ドラマというかたちで浦上さんを描くからには、ドラマでしか生み出せない感動を見る人に与えたい。ひとつしかない自分の人生と現実を受け入れて肯定していく人間の凛々しさ、それをドラマだからこそできる手法と演出で描きたい。それに尽きます。」

ドラマだからこそできる手法、演出――。

劇中の浦上さんはいつも颯爽と自転車に乗っています。実際の浦上さんは自転車には乗っていませんが、これは主人公の爽やかなイメージや躍動感を表現したい、とうことで作られた設定。この自転車は物語を通して、嬉しい時、つらい時、安田さん演じる浦上さんの感情に合わせて、さまざまなシーンで使われています。奥様の攝さん役を演じた中越さんも「いいシーンはたくさんあるけど、自転車で走る姿がいちばん印象的。一生懸命走る姿も、悩んで転んでしまう姿も、グッときました。」とおっしゃっていたほど。それだけ、この自転車はドラマの中で効果的に使われています。

ドラマの中で、松子の印象に残ったシーンがあります。それは、家族で阿蘇山の火口を見るために山を登るシーン。でも実はこのシーンも、浦上さんご家族の実際の体験にはない、ドラマのオリジナルの創作場面だったのだそう。

谷口CP:「今回、物語の大きな山場になるような場面を作りたくて、熊本の象徴でもある阿蘇山に家族で登るというシーンを設定しました。取材の時に、浦上さんがご一家で東京ディズニーランドへ行った話をうかがったことがあるんです。浦上家にとっては、そういう家族のイベントをすること自体が大変なのだけれども、それでも、何か家族らしいことをしようともがくというか、自分たち家族にもこのくらいのことはできるんだ、と必死になる姿を、具体的な事柄を通して描きたかったんです。もちろん火口にたどり着いたところで、家族の現実は何も変わらない。主人公の苦悩を伝えるために必要な、大がかりなシーンなんです。」

そしてこのシーンについて、浦上さんは「私たちの20年間の想いが、あの阿蘇山のシーンにギュッと凝縮されていると感じた」とおっしゃっていました。 現実をそのままに伝えるのではなく、架空の場面を交えることで、より事実の本質を浮き彫りにしていく。ドラマにしかできないことですね。

タイトルに込められた想い
そして最後に、もう一つ私が気になっていたこと。 それは手記とは違う、このドラマのタイトル。

『風をあつめて』。

この6文字には、どんな思いが込められているのだろう。 タイトルについて、脚本家の荒井修子さんは会見の時にこんな風におっしゃっていました。

荒井:「劇中で安田さんが自転車に乗っている設定、そして、浦上さん本人にお会いした時に感じた爽やかな印象から、"風"が思い浮かびました。脚本を書く上でいろいろなお話をしていくうちに、浦上さん家族は、普段の私たちの生活では気づかない、風のようにふわっと流れているもの、その普通に流れているものを、一つ一つあつめながら生きているんだと感じたんです。そこから、このドラマのタイトルが生まれました。」

なるほど、聞いて納得。ふと思い浮かんだ言葉が、偶然にもこんな風につながって、タイトルになっていく。これは偶然ではなく、もはや必然だったのかも。

プロデューサー、脚本家、そして出演者。 それぞれがドラマという手法の中で、原作者(今回は主人公その人)の想いを大切に汲み取りながらも、視聴者に伝えるための決断として演出を施していく。言葉にすれば当たり前のことかもしれませんが、改めて"ドラマの力"を感じ取ることができる作品です。

このドラマが放送される2月11日はちょうど祝日。朝ドラ「てっぱん」のすぐあと、5分間のニュースに引き続いての放送です。家族が揃う休日の朝に、自分たちの家族のことを考えながら見て欲しい。そんな作品です。ぜひ、ご覧ください!

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