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髙田郁先生の料理こぼれ話『みをつくし料理帖』髙田郁先生インタビュー

pic_edrec_170524.jpg土曜時代ドラマ『みをつくし料理帖』のスタジオ見学にお越しいただいた、髙田郁先生インタビューのつづきです。
前回のインタビューでは、原作や映像化についてあれこれお伺いしましたが、今回は「お料理。について、少し突っ込んだ話をしていきます。
髙田先生のお料理ワールドにふれると、あなたも包丁を持ちたくなってくるかも…?!


料理が先か、ストーリーが先か

編集部:
先生は、料理を作られてからストーリーを思いつかれるのですか。それとも、ストーリーから料理を思いつかれるのですか。

髙田郁先生(以下、髙田):
それはバラバラなんですが、『旬』をもとに料理を作っていくことが多いですね。具体的には、ストーリーの中で、これは何月から何月の話だというのが決まると、その季節に旬を迎えるものを組み合わせて、登場する料理を作っていくのです。

編集部:
なるほど。ちなみに、登場する料理はすべて、先生が実際に試作されているのですか。

髙田:
はい。全部自分で試してみるので、実は失敗例も多いんですよ。作品に登場する料理を数えてみたら、全部で160品ほどありました。実際に私が作った料理は250品ほどでしたから、表に出なかったレシピも100品はあるということですね。

編集部:
えっ、ということはですよ。原作は約40話ですから、各話のメイン料理以外の小さな一皿も、実際に…?

髙田:
はい。それも私が、実際に作っています。ドラマに登場する、三つ葉のおひたしなどもそうです。

編集部:
驚きです。作ってみて、難しかった料理などはありますか。

髙田:
簡単にできそうでできなかったのが、味付けのりです!

編集部:
えっ、あれって難しいのですか?

髙田:
味付けのりは、『みをつくし料理帖』の時代にはない料理です。でも、澪なら作るだろうと思って考えたのですが、どうしても表面が波打つんですね。当時はローラーがなかったので、どうやって作るか悩みました。結局、無理なのでボツにしましたが。

編集部:
なるほど。当時の技術で再現できないものは、時代小説には出せないですよね。本の執筆に加えて、料理の試作。しかも江戸時代の技術という制約が加わりますから、とても時間がかかりますね。

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髙田:
はい、とても。原作の第5巻に出てくる『ひとくち宝珠』とかは、午前3時半くらいまで作っていました。出来上がったときは、早朝なのに高笑い。よく考えたら、気持ち悪いかもしれませんね。

編集部:
なるほど。読者からは見えないところで…。

髙田:
苦労してるんです(笑)。巻末のレシピが、実は一番時間がかかっているのかもしれません。お台所から編集者に、もう1日待って、もう1日待って、と、電話をかけていました。ずいぶんと泣かせちゃいました(反省)。

編集部:
先生の努力の結晶が、レシピであり、原作であり、ドラマなのですね。こうなると自分で『みをつくし』の料理を作りたくなってくるのですが、やはり一番作りやすいのは、『はてなの飯』ですか。

髙田:
はい、ハードル低いと思いますよ。簡単にできて、すごく美味しいですし。しかもこの時期の鰹なら、湯通しせずに作れますから、いいですよ。

編集部:
脂気が多いと、ちょっとくどいのですか?。

髙田:
いやいや、そういうわけではありません。私は脂があるのも好きなんですけど、江戸っ子は初鰹しか愛さないから、それに合わせて(笑)。

編集部:
なるほど。関西人からしたら、江戸っ子の初鰹好きは不思議なものですよね。嗜好の差が味になって出てくると思うと、それも面白いですね。

髙田:
青物も、早ければ早いほうがというのが当時の江戸っ子。あまりに初物にこだわりすぎるので、幕府が初物の規制に乗りだしたくらいです。


関西の味、関東の味

編集部:
原作を読みながら、いつも『これ、関西人が読んだら泣くなあ』と思っていました(※澪と同じく、大阪人)。

髙田:
ありがとうございます、しめしめ、です。

編集部:
関西で慣れ親しんだ料理でも、関東では見ないものが沢山あるなと、改めて気がつかされました。原作にも、そういった描写が多くありましたが…。

髙田:
そうですね。例えば、第1巻の冒頭に出てくる白味噌を使った牡蠣の土手鍋。これは、江戸っ子の口には合わないでしょうね。白味噌は苦手という東京の人、何人も知っています。

編集部:
ドラマの第1話では、戻り鰹が『猫またぎ』だと、江戸っ子たちに無下にされていますね。先生も、食文化の違いで驚かれたことがあるのですか?

髙田:
それはもう、たくさん! 昭和50年代に進学のため、兵庫県から東京に移り住んだのですが、驚いたことの筆頭は、 まずは何といっても食パン。関西では5枚切りか6枚切りが主流でしたけど…。

編集部:
あっ、そうか。関東だと8枚切りが人気ですよね。

髙田:
東京の人に『8枚切りだと薄くないですか』って聞いたら、みんな2枚食べるんだって。朝から2枚は重いだろう、いいじゃん1枚で、と驚きました(笑)。

編集部:
2枚ってことは、バターも2倍塗るわけですから、ますます重たいですよね(笑)。

髙田:
2枚目にはジャムを塗りますよ(笑)。どちらの食文化も知れば知るほど面白いし、愛おしいです。
あとはソース。中濃って不思議でした。ウスターととんかつしか当時は知らなかったので。

編集部:
関西では使い道ごとに種類が分かれていますからね。お好み用、たこ焼き用…。

髙田:
そうそう。あとは、ちくわぶ。ちくわなのか、麩なのか。食べ物って、今でこそ色々なところで色々なものが食べられますけど、昭和50年代でさえ、関東と関西でかなりの違いがあって、驚いたんですよ。スーパーに行くと、カマボコが白かピンクで、焼きカマボコがない。おうどんに入っているのも、白かピンク。おうどんに紛れて、ちょっと探しにくい(笑)。

編集部:
原作には澪がカマボコを作るシーンが出てきますが、カマボコ作りも実際に試されたのですか?

髙田:
はい。ほんとにもう、カマボコは遠い道でした。どうしてもうまくいかなくて、小田原の老舗のカマボコ店まで取材に行きました。カマボコ用の塩は粒子を細かくしないといけないので、まずはすり鉢であたって…と話し込んでいたら、当時の担当編集者に『職人同士か!』と、ツッコまれてしまいました。

編集部:
先生も、澪と同じ苦労をされてたんですね。

髙田:
はい。生麩も苦労しました。1キロ練りましたから、腱鞘炎になっちゃって。病院に行ったら職業病だと言われたんですけど、いや、そうじゃなくて…(笑)。


 ドラマの末尾にあるレシピコーナー

編集部:
ドラマの末尾にレシピ再現コーナーがありますが、物語に登場する料理を動画でじっくり見られるのは、原作ファンとして嬉しいですよね。

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(レシピ動画は番組ホームページでもご紹介しています)

髙田:
実際に食べてみたい、見てみたい、というお声はよくいただきます。

編集部:
昔、1日限定で『つる家』をやろうという話があったとか。

髙田:
そうなんです。お酒の席でポロッと話したら、みんなが『協力する!』と言ってくださったんです。でも、なぜかみなさん、下足番をやりたがって。

編集部:
それはまた、なんというか(笑)。

髙田:
もっと言うと、ふきちゃん役ですね。みんな『ぴょんとはねる!』って。下足番が7、8人、料理人は私だけ。お運びはだれもしない、これはひどいでしょう、とボツになりました(笑)。

編集部:
残念ですね。つる家の料理、現実世界でお目にかかりたかったのですが…。

髙田:
どこかの社員食堂でやりたいとも思ったんですが、編集者に猛反対されまして。

編集部:
えっ、面白い話だと思うのですが。

髙田:
執筆の手が止まるからやらせるわけにはいかない、と。

編集部:
それは、やらせるわけにはいきませんね(笑)。ドラマを見て、どうしても食べてみたいと思ったら、今のところは自作しかないということですね。

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髙田:
やはり一番簡単なのは『はてなの飯』ですね。シリーズの執筆中から食べてみたいという声をたくさんいただいて、レシピを本に載せることにしたという一品です。あとは料理の苦手な人なら、原作に登場するお弁当のおかずで、『大根の油焼き』。これは作りやすいと思うので、ぜひ、お試しください。

編集部:
ありがとうごさいます。『みをつくし料理帖』の世界、原作で、ドラマで、そして舌で楽しませていただきます!

土曜時代ドラマ『みをつくし料理帖』番組ホームページへ

 


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