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『戦国時代だって一年中、戦っていたわけじゃないと思うんですよ...』【空想大河ドラマ 小田信夫】 作・前田司郎さんに聞く!

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「深夜枠だからあんまり予算はないけど、ネプチューンさんが出てくれるから何か面白いことやって」という無茶ぶりから誕生した「空想大河ドラマ 小田信夫」。

この無茶ぶりを受け止めてくれたのは、演劇界の鬼才・前田司郎さん。大河ドラマっぽい空前絶後のコメディ時代劇がどうやって生まれたのか、その誕生秘話をうかがいました!


編集部:
最初から「時代劇で行こう!」と構想を立てて、脚本執筆に臨まれたのですか?

前田司郎(以下、前田):
うーん、いや、最初は「ネプチューンの3人と稽古場でああしようこうしようって言いながら作っていく」ような、エチュード形式の作品を考えていました。けれど、それだと予算がかなりかかるので、却下となりまして。じゃあ、ちゃんと脚本を書こうと…。

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編集部:
それが時代劇になったんですね。素人考えですが、時代劇のほうが何かと高くつきそうですが…。

前田:
本来はそうなんです。だから、最初に時代劇の台本を持っていった時は、けんもほろろでした。でも、NHKさんには時代劇のノウハウというか、セットも人材も豊富にあるじゃないですか。それを活用させてもらえれば、予算内で何とかならないかなと、ドラマ部の人を説得しました!

編集部:
で、押し切ったと(笑)。試写を拝見しましたが、ものすごくお金かかってそうな映像でしたよ。音声が流れてなければ、本家の大河ドラマと間違うくらいのクオリティです。

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前田:
実際に大河ドラマで使用しているセットも使っていただきましたし、スタッフの方がみなさん、大河ドラマを経験している「本物」ですからね。NHKさんの本気を見ました(笑)。

編集部:
元々、前田さんは歴史が好きなんですか?

前田:
特別に歴史好きというわけではなく、全然詳しくもないんです。ただ僕の場合、歴史に限らず、詳しく知っていることがほとんどないんですよ。就職したことがないので、オフィスものを書くにしても知識はないし、医療ものを書くとしても医学のことなんてまるで知らないし。どこにもアドバンテージがないから、僕の中ではオフィスものを書くのも、時代劇を書くのもあまり変わらないんです。

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編集部:
なるほど、逆に不得意なものがないんですね。そこであえて時代劇を選ばれたのには、なにか理由があるんですか?

前田:
大河を書かせてもらえないから、空想で書いてしまおう…(笑)
というわけではないんですが、前から「歴史に書かれていることって真実なのかな?」っていう思いがありまして。記録に残っているのは結局、統治者の都合よく書かれたものなんじゃないかと。そこに書かれていないことが実は、その時代のメインストリームで、僕らみたいな普通に生きていた人間の話が、むしろ面白いんじゃないかと。なので、そういうものを書いてみたいなと。

編集部:
なるほど。そこで、織田信長ならぬ、小田信夫なわけですね。

前田:
織田信長は、やはり有名です。そこをパロディにするなら、前段の説明とか一切いらないですかね。本当は、坂本龍馬でもいいかなと思ったんですが…。

編集部:
何か問題が?

前田:
龍馬の場合、町の中を走り回るじゃないですか。そうすると予算が…。信長なら、屋敷にずっといる設定でいけるので(笑)。

編集部:
そこも、予算の壁があったわけですね(笑)。
時代は戦国なのに合戦シーンもなく、何とものんきな雰囲気が漂っているのも、やはり…?

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前田:
予算もありますが、実際、戦国時代だって一年中、戦っていたわけじゃないと思うんですよ。農業が忙しい時期は戦わないとか。戦争のない冬はみんなでお酒飲んで過ごしていたとか。そういう本家の大河ドラマではカットされているところをピックアップしたいなと。

編集部:
勝手なイメージですが、戦国時代というと、始終、戦っている気がしていました。

前田:
当時の人が50年くらい生きるとして、戦っている期間って、のべ数年だと思うんです。おそらく、ものすごく戦った人でもそのくらいだと。実際、戦争より飢餓で亡くなる人のほうが多かったわけですし、戦国武将たちも戦死するより、病死する方が圧倒的に多かったわけですから。

編集部:
そう考えると、この小田信夫と家臣たちのような、どこかのほほ~んとした人たちも、ひょっとしたら、本当にいたのではと…。

前田:
いたでしょうね。まあ、「空想大河ドラマ」ですから、本当にいたかどうかは関係ないです(笑)。

編集部:
そして、ネプチューンさんと時代劇というのも、意外な組み合わせですね。泰造さんは本家大河ドラマにも出演されていますが、ホリケンさんが未知数すぎて、試写を見る前は「どうなるんだろう」とワクワクしました(笑)。

前田:
泰造さんは演技も上手いし、いい役者さんですからね。でも、演技が上手い人ばかりが集まればいいかというと、そうでもなくて。これは僕自身の好みの問題でもあるんですが、全員が上手い人だと、スルスルっと食べやすすぎて、美味しいけど印象に残らない料理みたいに感じるんです。うまくはないけど妙に説得力がある、みたいな人がいると俄然、面白くなりますね。

編集部:
今回の場合、それが、ホリケンさんや名倉さんだったりしますか?

前田:
ホリケンさんも名倉さんも、いい意味で台詞が棒読みなんですよ。言葉に意図や情報を込めずにフラットに台詞を発してくれるので、逆にその時の感情や想いがよく伝わるんです。だから、その人本来の魅力も垣間見えて、見ていて僕は好きなんですよ。
それに、泰造さんがきちんと方向付けをしてくれるので、演技としても成り立つんです。3人のお芝居はすごくいいバランスだなぁと思っています。

編集部:
計算していないからこそできる表情だったり、出てくる台詞だったりに、思わずハッとさせられたりもしますね。

前田:
名倉さんの何も考えてない、空洞というか虚無というか、いろんなものが完全に抜け落ちている表情もよかったなぁ~。

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編集部:
泰造さんもそれが面白かったと、会見でおっしゃっていました。演技でできる表情を超えていたんでしょうね。
いろいろと見どころの多い「空想大河ドラマ 小田信夫」ですが、最後にもうひと押ししておきたいところがありましたら、教えてください。

前田:
ただのシチュエーションコメディだと思っている方も多いでしょうが、それだけじゃありません。
僕自身、悲しい時に、悲しい台詞、悲しい芝居、悲しい音楽と幾重にも積み重ねていくのが苦手で。何だか、チャーハンにカレーをかけたみたいでしつこいでしょ。
だから、台詞で悲しいって説明してたら、その他はもう、悲しいことを表現する必要はないと思っています。今回の脚本も、シリアスなシチュエーションにすごくバカバカしい台詞を合わせたり、情報を多様化して幅を広げているつもりです。その中で、観ている方が何を受け取ってくださるのか。楽しみにしたいですね。

編集部:
もっとも心に届いたのが、すごくバカバカしい台詞だったとしても…?

前田:
それはそれで、本望です!

編集部:
ありがとうございます。正直このドラマ、全4回では観足りない気がしました。もっともっと観たいです!

前田:
ぜひ、声を大にして言ってください(笑)。僕もまだ、時代劇でもうちょっといろいろ遊んでみたいので…!

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…というわけで、天下を目指す織田さんちの信長くん…ならぬ、よく似た名前の赤の他人・小田信夫とその家臣たちの殺伐としない、緊張感もない、ふわっとした日常を描く、「空想大河ドラマ 小田信夫」は、2月4日(土)夜11時35分スタートです!

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