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時代劇職人列伝【弐】小道具・三代川昭彦の場合

時代劇職人列伝【弐】
小道具・三代川昭彦の場合

時代劇作りを裏側で支える、テレビ職人たちの奮闘を描く『時代劇職人列伝』。
第2回は「軍師官兵衛」で小道具を担当する、三代川昭彦さんにご登場いただきます。
小道具の仕事とはどういうものか、そして小道具さんにしかわからない苦労話など、ビシバシインタビューしていきますよ!


というわけで、今回も取材班は「軍師官兵衛」のスタジオへとお邪魔してきました。
番組の小道具担当・三代川昭彦さんを探して、スタジオ入口の脇にある小道具部屋へ。
茶器やロウソクなど、いかにも時代劇な小道具が集められたその部屋に、三代川さんはいらっしゃいました。

・・・ということで、本日の職人!!!!
小道具・三代川昭彦さんの登場です。

三代川さんは、前回ご登場いただいた堀江さん同様、テレビ番組用の小道具などを取り扱う美術装飾会社にお勤めで・・・というか、実は堀江さんの大先輩にあたる方なのだそうです。
さっそく、お話しを聞いていきましょう。

編集部「まずは、小道具のお仕事がどんなものか、ざっと聞かせていただけますか?」
三代川「簡単に言えばインテリア、内装ですね。時代劇のセットというのは、まずデザイナーさんが形を考えて、大道具さんが建物自体を建ててゆきます。そして僕たち小道具は、内装や装飾を担当するんです。床の間の掛け軸とか、置物の香炉とか、屏風とか。内装すべてにかかわっているんですよ」

なるほど、周りを見渡すと、食器から花瓶まで、いろいろな小道具がストックされています。これを、三代川さんがセレクトして、配置しているんですね。

編集部「小道具のセレクトは、やはり時代考証をしながら進めるのですか?」
三代川「そうですね。自分の経験でわかる部分もありますが、基本的には時代考証の先生と、この時代にあるもの・ないものを確認しながら進めています。軍師官兵衛は戦国時代が舞台ですので、南蛮ものや中国の道具も日本に入ってきていますから、そのあたりも大変ですね。ただ、全てを間違いなく、完璧に再現しなければならない・・・となると、逆に何も飾れなくなってしまうので、あらかじめご容赦いただいて、ある程度の遊びを持たせています」
編集部「このあたり、悩ましいところですよね」
三代川「当時のことが100%わかる・・・という人はいないし、わかったとしても道具を揃えられるかは別問題なので、どうしても試行錯誤になる部分があります。最善を尽くしてはいるのですが、視聴者の方からご指摘をいただいたりもします。良い仕事が出来るように、まだまだ、努力していかないといけません」
編集部「今回の軍師官兵衛ですが、やはり小道具としては、秀吉の茶室が見所なのではありませんか。こちらも、三代川さんのご担当ですよね?」
三代川「はい。実はこれから、黄金の茶室のシーンを撮影する予定なんですよ。こちらが撮影で使う釜になります」

編集部「おおおおお、当たり前ですが、金ぴかですね。凄く綺麗なんですが、これ、もしかして、本物の金で・・・?」
三代川「さすがにそんなことはなくて(笑)、鋳物の釜を塗装したものです。粘土やプラスチックで作ったものと違って、実際の鋳物を使うことで映像に迫力が出ますから、この方法が良いと思っています。というか、実際に炭をあてて湯を沸かしたりするので、鋳物でないと使えないですね」
編集部「これはずっと疑問だったのですが、茶道のシーンで出てくる茶器って、由緒ある品を使っているのですか?」
三代川「茶器は基本的に、小道具のレンタル会社から借りてくるのですが、そこまで高価なものではないですね。でも、黄金の茶室とか、千利休の茶室というシーンになると、やはり『モノが劣る』というのが映像でもわかってしまうんです。なので、ここ一番という時は、茶道指導の先生にお願いして、茶器をお借りしたりします」
編集部「なるほど、わかっちゃうんですね・・・ほかに、注目してほしい小道具はあったりしますか?」
三代川「秀吉の部屋の、床の間のど真ん中に、秀吉の兜の飾りを配した猿の置物が置いてあります。このインタビューが出る頃には、もうそのシーンは放送されているのかな。映っていたら嬉しいですね」
編集部「茶室の炭とかもそうですが、スタジオの中でけっこう火を使うんですね。これも小道具さんの担当ですか?」
三代川「そうですよ。かがり火とかも、僕たちの担当です。安全第一なので、点灯・消灯する際は、消火用の水を持って、ずっとそばに張り付いています」
編集部「用意して終わり、というお仕事ではないんですね」
三代川「そうです。勤務時間は長いですね(笑)」

編集部「三代川さんご自身についてお伺いしたいのですが、このお仕事を始められて、今で何年くらいですか?」
三代川「もう、22年になります」
編集部「長いですね。今まで、どんな番組を担当されてきたのですか?」
三代川「大河ドラマや木曜時代劇など、色々担当していますが、一番はじめに担当したのは『信長 KING OF ZIPANGU』(1992)ですね。新人だったので、消え物の準備とか、持ち道具のお手伝いとか、色々やらせてもらいました。基本的に4~5人で1つのチームを作るんですが、初めて装飾チーフを担当した作品は『龍馬伝』(2010)ですね」
編集部「チーフまで、そんなに長くかかるんですね。そして初めてチーフを担当されたのが『龍馬伝』というのも、また凄いですね。人物デザイン監修の柘植伊佐夫さんとか、デザイナーの山口類児さんとか、監督の大友啓史さんとか、こだわりを持ったスタッフが多かったと思うのですが、やり甲斐のあるお仕事でしたか?」
三代川「みなさん、クオリティに対する情熱が半端ではないので、今までのやり方ではまずいな、と思いましたね。刀の汚し方ひとつとっても、これは大変なことになると。そこで頑張って仕事をすると、じゃあ次はこれをこうしてという感じで、リクエストの水準が高くなってくるんです(笑)。それならとこちらも人員を増やして対応したり、必死に働きました。放送がはじまって、インパクトのある、美しい映像が流れた時は、嬉しかったですね。いい経験をさせてもらいました」

編集部「エキサイティングだけど、やはり大変なお仕事なんですね。新人さんとか、入ってきますか?」
三代川「あんまり入ってこないです(笑)。入ってきたとしても、定着する人は少ないです。時間が不規則な仕事ですし、勤務時間も長いので、遊びたい盛りの若い子からすると、厳しいんだろうなと思いますね」
編集部「好きでやる、という人じゃないと、続かなそうですね」
三代川「やってみて、この仕事が好きになって、ハマって残る人もいたりします。でもツブシの効かない仕事ですから、やっぱり好きでないと、続けにくいでしょうね」
編集部「ご自身でやっていて、一人前になったなとか、独り立ちできたなとか、感じた瞬間はありますか」
三代川「仕事をはじめたばっかりの頃は、この仕事をずっと続けるのかどうかすら、わからなかったです。その時は『担当の番組をひとつ持たせてもらってから、後のことを考えよう。そこまではがんばろう』って考えていて、気がついたら時間が過ぎて、今に至っています。でも、自分が一人前になったと確信できるようなことは、これからも多分ないでしょうね・・・!」
編集部「ありがとうございました!」


というわけで、時代劇職人列伝。
第2回は「小道具」の三代川さんにお話しを伺いました。
やはり職人の世界というのは、明確なゴールのない、不断の努力と勉強が求められる世界なんですね。
「仕事の厳しさ」が垣間見えたインタビューでしたが、良い仕事が出来た時の充実感や、いいアイデアが出てきた時のワクワク感は、とても大きいのだろうなと感じました。
それでは「時代劇職人列伝」、次回もお楽しみに!

時代劇職人列伝【壱】持ち道具・堀江直弘の場合
大河ドラマ「軍師官兵衛」ホームページ


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