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「眠れる森の熟女」 脚本家・篠崎絵里子さんインタビュー <後編>

「眠れる森の熟女」 
脚本家・篠崎絵里子さんインタビュー <後編>

 

「眠れる森の熟女」で、40代女性の生き方を真正面から問いかけた、脚本家の篠崎絵里子さん。
千波・春子・京子、それぞれに強い愛着を持たれていることが伺える<前編>でしたが、<後編>ではさらに、"大人ならでは"の人間関係について、深く切り込んでいきます!!
そしてもちろん今回も、渡邊ディレクターがトークを盛り上げますよ!

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編:
千波と祐輔、浩史と春子、祐輔と麻美、複雑に絡んでいく人間関係を描く苦労はありましたか

 

篠崎:
逆に楽しんで書いていました。単純なラブストーリーにならなくなってきたのは後半を書き進める中で徐々に分かってきましたので、これはもう"関わる人全ての物語"にしようと腹をくくって、それぞれの気持ちを大事にして書き進めていきました。春子さんの気持ちがあるから千波の気持ちも変わるわけで、相乗効果がありました。
人って"本音と建て前で生きる"ところがありますよね。本当は本音だけで生きたいけど、"本音だけで生きている自分"なんて絶対に嫌いですよね(笑)建て前を少しは現実にしたいと思う気持ちは誰にでもあると、そういう瞬間を描きたいと思いました。建て前を本音だと言い張って生きる潔さに惹かれるんですよね。
この作品では春子さんですね。自分を大事にしたいというか、「綺麗事だ」って言われて、そりゃそうだなって思うけど、それでも綺麗事にしたい瞬間があり、"綺麗事をキレイなままにしておきたい"という。後で後悔するとしても、そういう瞬間を持てる人が好きですね。

渡邊D:
「胡桃の部屋」もそうでしたが、各人物に最終的に落としどころをつけるので、演じる側としてどういう気持ちでお芝居をすればいいか着地点をつけてくれますよね。横山めぐみさん演じる玲子という役も、なぜあんなに自分の息子(弟・和樹)を引っ張りあげようとするのかが終盤やっと分かるところもあります。
人生には様々なことがあるけれども、ちょっとでも頑張ろうと思うことがあれば、なんとか前を向いて生きていけるのが人間で。そういうところを上手く表現する脚本家だと思いますね。

編:
山本圭さん演じる杉浦さんはいかがでしたか

篠崎:
もう期待以上でした!私が正式にデビューした作品で山本圭さんに出て頂いていたんです。その時も、"新人のレールから外れた若い女教師を支える役"で。支えるというのも今回の杉浦さんのように支えるような。ですから、圭さんでしたら絶対このセリフを素敵に演じて下さるに違いないと、安心して杉浦さんを書きました。

編:
瀬戸康史さんと山本圭さんのコンビが「王子とじいや」のようで見ていて楽しいです。

篠崎:
瀬戸君がかわいく見えますよね。それは圭さんが包み込んでくれているというか、おちょくっているというか、そういう雰囲気を作るのがとても上手い方なので、手中で踊らされてる瀬戸君がすごく可愛かったです。名コンビだと思いました。

渡邊D:
見守っている人生経験豊かな杉浦と、まだまだ青二才の祐輔と。祐輔の人間性の部分でも、裏の顔の悪さが"ただ悪くは見えない"というのがありましたよね。人間的な愛嬌の部分も引き出せる関係性が作れたのは良かったです。
杉浦さんは果たして何人いるんだってくらいあちこちに出没するんだけどね(笑)通用口にいたり、なぜこのタイミングでこんな所にいるのか?っていうのはありましたけどね(笑)

篠崎:
5人ぐらいいるんですよ(笑)で、ブログに書いてますから「本日の王子」って(笑)
ただ、杉浦さんが千波と祐輔をくっつけようとするのだけは止めようと思いました。だから、千波に対しても麻美に対してもフラットで口を出さない。今回一番難しかったのが各人物ごとの「セリフの加減」でしたね。

渡邊D:
篠崎さんがそこにすごく神経を使ったのが撮る時になって初めて分かるんですよ。例えば、浩史と春子は「距離を置こう」と言いながら何度も会ってしまう。森口瑤子さんにはなるべく背中を向けて喋ってもらったり、浩史から離れていくような芝居を考えていたけれども、後半ではきちんと目を見て話して、別れを告げるようにしなきゃいけないとか、デリケートに考えて演出しました。このセリフの心情がどういう距離感でどういう動きかと、そこを気にしないと深く掘っていけないドラマだと感じながらやっていました。
 

篠崎:
ちょっとしたセリフでも、不自然に見えたり、踏み込みすぎだと思えたり、逆に踏み込まなさすぎだと思えたり、そういう点を気をつけて書きました。京子にしてもズバズバ言っているようでいて、言わないところは言わないし、突き放すところは突き放したかった。千波の祐輔に対する気持ちも、抱きしめられたシーンでも、「どうだった若い子の匂い?」と出来たんですが(笑)
ロマンチックなシーンの後になるべく現実的なシーンを作りたくて、洗濯物を畳ませたりしました。一方で、まだ若い祐輔はうろうろしているという。あのシーンの後の会話はすごく考えて、何度も何度も、「いいじゃん年の差なんて、言っちゃえばいいじゃん」と京子に言わせようと思いましたが出来なくて(笑)楽しかったけれど、日常だからこそよりいっそう気を使いました。難しかったですね。

 

渡邊D:
演出の立場としては"このシーンは何を狙いにするか"と考えると、一見意味の無いように思えるセリフは切ろうと考えます。でも篠崎さんのセリフは切りにくい(笑)切りにくいというのは褒めているんですよ。放送時間より長くなるから切る部分はどうしてもあります。でも切りにくいと思わせるセリフが実は上手いセリフなんですよ。なんてことないなと思えるセリフが、これだ!っていうセリフを言うための助走になっている。これは編集さんも同じ意見を言っていて、篠崎さんの脚本は意味の無いセリフが無いって言ってました。切りにくいって。

編:
「浩史がダメ夫すぎる」という意見がありますが(笑)キャラクターを作ったときのエピソードなどあれば教えてください

篠崎:
羽場裕一さんが演じて下さって、よりダメ夫に見せて頂いたところがありますが(笑)千波が新しい恋に行きやすいように、勝手な男にしようというのがひとつありました。最近はSNSを通じて再会してしまったが故の離婚が本当に多くあると聞いて。"今さら恋しちゃう男"という設定になりました。

渡邊D:
浩史のキャラクターを考えた時、この人はどういう人かと言うと、"少年"なんだと。表の顔としては仕事をバリバリやって大手銀行の部長までいった、出世競争を勝ち抜いてきた男だけれども、プライベートでは"少年"なんです。家庭内別居している浩史の部屋の中もミニカーが置いてあったりします。

篠崎:
"少年"という言葉を使うのは男性だけですよね。

渡邊D&編:
(爆笑)
※篠崎さんの意見に、女性は共感してくれると思いますw

篠崎:
"少年"と言えば許されると思うなよという(笑)でもこの作品ではそういう男性を書きたかった。でも、そういう人は実際にいるし、そこに魅力を感じる女性もいないことはない。男性に合わせていても内心は「バカじゃないの」と思っている可能性が高いですが(笑)だけど百歩譲ればかわいいし、そういう人こそがリアルだと思い、弱い男にしました。
ただ、書き進めるうちに浩史にも愛着が沸いてきますから、単なるバカにはしたくなかったですね。

渡邊D:
浩史は見た目は大人だけど、中身は子ども。一方で祐輔は見た目は若いけど精神年齢は大人で。そういうバランスが千波を取り巻く二人の男のバランスが面白いと思います。

編:
それでは最後に、お気に入りのシーンと、思い入れのあるシーンを挙げて下さい

篠崎:
小さいシーンではありますが、2話の千波の引越しを手伝う京子のシーンで、「寂しいよね、46で1人はこわいよね」と言い合うシーンは泣きながら書きましたね。
また、千波と祐輔の手紙のやりとりは好きでしたね。千波が祐輔に送った「鎧を脱いで下さい」という手紙を受けての祐輔、祐輔からの「やり直せなくても間違っていても、それはあなたの大切な人生です」という手紙を受けての千波のシーンも好きでしたね。

編:
長時間のお付き合い、ありがとうございました!

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というわけで、後編はいがかでしたでしょうか?
「少年」という言葉を使うのは男性だけ
のくだりでは、一同本気で笑ってしまいました!(笑)
そんなダメ夫・浩史と、新しい生活を手に入れた千波がたどり着くのはどんな未来か!?
最終回も、どうぞお見逃しなくっ!!!!
※篠崎絵里子さんの『崎』の字は、一部の端末で表示できないため、「崎」に置き換えさせていただきました。


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