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最終回直前!「はつ恋」中園ミホさんに聞く

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最終回直前!
「はつ恋」中園ミホさんに聞く

ドラマ10「はつ恋」への大反響、本当にありがとうございます。 映像業界の方や、はたまたNHKのスタッフからも「最終回はどうなるの!?」「あのシーンが凄すぎる!」「裏話があれば是非聞きたい」という声を頂いています。
そこで、番組の脚本を担当した中園ミホさんに、皆様からお寄せいただいたメッセージやご質問を直接ぶつけてみました。聞き手は、番組の小松プロデューサーです。

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伊原さんのインタビュー同様、面倒な前口上は一切なし!
いきなりお話を聞いていきましょう。

01_hatsukoi_120713.jpg <はつ恋>第5回のシーンから...。

小松P:
「第7回は衝撃の回でした。たくさんのご感想やご質問を頂いていますので、その中からいくつか、脚本家の中園さんにご紹介したり、おたずねしていきたいと思います」

中園先生(以下、中園):
「よろしくお願いします」

小松:
「まず、緑の父親が激昂するシーン。ここには男性の方からも反響を頂いています。普段穏やかな父親だからこそ、あの形相は本当に怖くて悲しい。ましてや娘の命の恩人だからと、自分の家にまで招いてしまって...」

中園:
「父親にとっては、娘が傷つくことが何よりもつらいですよね。長い間、父親は自分を責めていたと思うんです。自分が緑にさみしい思いをさせたから、ひどい男にあんな目にあわされたんじゃないか、と。そのやり場のない自責の念が、ここで噴き出したんでしょうね。それをお父さん役の串田さんが、見事に演じてくださいました。鬼気迫る演技に圧倒されましたね」

02_hatsukoi_120713.jpg <はつ恋>第6回のシーンから...。

小松:
「三島を前にして、緑が言語聴覚士としての体裁を捨てるまでの心の移り変わりが、残酷なくらいに切ない...というご感想も頂きました」

中園:
「近頃は不倫のハードルが低くなって、『ばれなきゃいいや』と我慢しないで突き進んでしまう人も少なくない。緑の場合、頑張ってブレーキをかけてきた分、ダムが決壊するように、想いがあふれてしまったんでしょうね」

小松:
「続いて、ユルシテクレ...に涙して、三島くんに呼び方が変わるシーン。二人が高校生に見えた、というお声がありました。二人の心の叫びを感じますよね」

中園:
「脳出血で倒れる前の三島先生は、カッコ良すぎますよね。命のやり取りをする外科医だし、シャツの着こなしも、ワインの注ぎ方も洗練されていて、自信に満ちあふれている。若い頃、あんなにひどいフリ方をしたドリに、もう一度ドキドキさせるようなカッコイイ台詞も言えるし、ドリの前から去る決意をした時も、成田に向かうタクシーの中からカッコイイメールを打てちゃう。そのカッコイイ鎧を、一度全部はぎ取りたかったんです。その時、三島君に何が残るのか、誰に何を伝えようとするのか。脚本家の私も知りたかった。無防備でピュアな三島君を」

03_hatsukoi_120713.jpg <はつ恋>第7回のシーンから...。

小松:
「そして『もしも あの時から人生をやり直せていたら』という問い。」

中園:
「人生の折り返し地点を過ぎて、それなりに必死に生きてきた男女が、ずっと自分の中から消えない『悔い』のようなもの...このドラマでは、それを描きたかったんです。初恋はたいがい実らないし、『悔い』が残っている場合が多いでしょう。若い頃は自分のことで一杯一杯になってしまって、相手のことを思いやれなかったり」
「あの時、どうしてあんなこと言ってしまったんだろう...とか、あの時、どうしてあの一言を言えなかったんだろう...とかとか。そういう過去は、思い出して懐かしむのではなくて、どうしても忘れる事ができない『痛み』を伴う記憶だと思うんです」
「でも、過去はやり直せない。もしも、は過去じゃなくて未来にしかない。だからこそ、今この瞬間を大切にしなきゃいけないんじゃないかと。今、目の前にいる人と、どう関わって、自分はどこに向かうのか。この『はつ恋』を書きながら、そんな事をよく考えました」

小松:
「本当に第7回は、とにかく心を揺さぶられる回でしたね」

中園:
「恋愛はすばらしいけれど、ただ美しいだけじゃなく、恐ろしいものでもあります。今回はそこまで踏み込んで書きたかったんですね」
「例えば、潤ちゃんのト書きには『潤、狂おしいほど緑を愛している』と書いていました。『別れよう』と宣言する直前の心情です。信じていた緑に裏切られて、嵐のような感情を自分でも制御できない潤」
「その状態で相手の幸せを願うことなんて、私だったらできない。激しく愛していればこそ、『身をひく』なんて絶対に無理。だからそういう情景を描けば、シーンとしては美しいと思ったんです。でも、それはただの奇麗事じゃないかと気がつきました。許せない感情の方が勝って、緑を最も苦しめる、残酷な仕打ちをしてしまうのが人間じゃないか、と思ったんです」
「このシーンを書くにあたって、実は愛妻家のお父さん達に取材したんです。あなたならどうするかって。相手の男、つまり三島と対決するんじゃないかと私は思ってたんですが、全然違いました。それは女性の発想で、男性の怒りは自分を裏切った妻に向かうようです」
「でも、潤ちゃんのベースにあるのは、緑への強い強い愛情ですから、ある時間が経てば、きっと彼女の幸せを願えるようになる日がくると、私は信じています。でも、あの瞬間は無理です。それで、『別れよう。健太には二度と会わせない』と、残酷なセリフを言わせました」
「私は登場人物全員を、自分の中に入れてみて、このシチュエーションだったらどういう気持ちになって何を言うか、その都度なりきるんです。それでわかったんですけど、潤ちゃんのような人を怒らせたら大変なことになりますよ。純粋で一途な人だからこそ、裏切られたショックが大きいんです。私はあのシーン書いた日は気持ちがたかぶり過ぎて、眠れなくなって困りました」
「潤ちゃんのことばかり話しましたが、緑のことは不器用で大好きです。もっとうまく嘘がつけたり、適当に引き返せる人だったら、こんなことにはなってないですよね...。緑も、三島も、潤ちゃんも、全員、不器用過ぎました」

04_hatsukoi_120713.jpg <はつ恋>第6回のシーンから...。

小松:
「ベッドシーンの合間、ぽつんと緑を待つ潤ちゃん。ある男性スタッフは、あまりに辛いから、この潤ちゃんのシーンはカットした方がいいのでは?と言ったほどです」

中園:
「緑はこの時、完全に女になっていて、妻であることや、母親であることは頭から完全に消えていますよね。でもその直後、我に返って、潤ちゃんや健太の顔を思い浮かべたと思うんです。それであのシーンを入れました。そして青木さんに演じていただいたら、ものすごく憐れな潤ちゃんになってしまいました。『潤ちゃん、ごめん...』と胸が苦しくなって、早くもそこで泣いてしまいましたよ、私は」

小松:
「可哀想と言えば、初恋から取り残された女、三島の元妻・幸絵も相当に気の毒な役どころですね」

中園:
「幸絵も大好き! もしかすると、登場人物の中で一番純粋な人かも知れない。第6話で脚本が長すぎて、切ってしまったセリフがありましたよね。勝の理容店で緑と話すシーン」

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【特別に、カットされた部分の台本から幸絵のセリフをご紹介します】

幸絵『最初は、なんなのこの人って思った。一緒に食事しても、手術と論文のことで頭がいっぱいで、失礼なこと平気で言うし、すぐ帰っちゃうし...私は他にボーイフレンド何人もいたしね』
緑『...』
幸絵『でも、彼が留学していなくなったら、心臓持って行かれるくらいさみしくなって...パリまで追いかけて行っちゃった』
緑『...』
幸絵『私も向こうの美大に留学したの。卒業するころやっと結婚しようって言ってくれて...あの時は嬉しかったな...』
緑『...』

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小松:
「ここの、心臓持って行かれるくらいさみしくなって、は大好きなセリフです。一気に幸絵が好きになりました。サトエリさんは台本を読んで、『わたし、悪者じゃないんだ』と思わずつぶやいていました。それなのに...どうにも長くてカットしてしまいました。幸絵さん、ごめんなさい」

中園:
「幸絵は三島のことを心の底から愛していたから、一緒に暮らしていけなくなったんでしょうね。三島のこと誰よりも良くわかっていて、いつも三島を見つめているから、カンもいい。上辺は、ワガママなお嬢様がそのまま大人になったような人だけど、女らしくて神経がこまやか。でも、彼女が動き回る度に、三島と緑が近づくようなことをしてしまう、損な役回りです。いつか幸せになって欲しいと願わずにいられない、愛すべき女性です」

05_hatsukoi_120713.jpg <はつ恋>第6回のシーンから...。

小松:
「これも男性スタッフからですが、『自分が潤ちゃんなら、ここで部下の子に逃げてしまいそう』と言われました。男性としては、潤ちゃんの次のアクションが気になるようです」

中園:
「桃子も必死で、可愛くてたまらない人物ですよね。でも、桃子の『好き』と、潤ちゃんが緑を愛する気持ちは、質が全く違います。桃子は、そんな愛を持った所長を好きになったことで、人を愛する気持ちを学んで、成長していくんじゃないでしょうか」

小松:
「そして今回、もっとも反響が大きかったというか、もっともショックなシーンは、三人全員が可哀想な、あの修羅場だと思います」

中園:
「確かに、ここまで生々しいシーンは、あまりドラマで見たことがないですね。でも、現実ではここまできたら、こうなると思いませんか?」
「脚本を書いていくうちに、ここは逃げてはいけないと思いました。修羅場を書きたかったわけじゃなくて、三人の気持ちに入り込んで書いてたら、こうなったんです」
「あの時、潤ちゃんが公民館で緑と三島を目撃しなかったら、二人はせつない思いを胸に別れて、それぞれの人生を生きていったでしょう。そして、あと5分遅く潤ちゃんが来ていたら、誰も傷つかずに、秘めた恋のまま終われたかも知れない」
「一度その展開も考えてみたけれど、やはりどこか違う気がしたんです。三島とのことは思い出にして、緑がまた胸の中に鍵をかけて仕舞い込むのは、心の中で一生、夫を裏切り続けるのと同じことですよね」

小松:
「ならいいよ、家族を選んだんだよな、と言った潤ちゃん。何も答えられず苦しそうな緑。このシーンも皆さんの心を揺さぶったのではないでしょうか」

中園:
「ああいう時って、誰もうまいこととか、いいセリフとか言えないと思うんです。脚本では心情のト書きがいっぱいで、セリフがちょっとのシーンになってたかも知れない。行間を、木村さんと青木さんが魂を込めて演じて下さいました」

06_hatsukoi_120713.jpg <はつ恋>第6回のシーンから...。

小松:
「緑の本当の気持ち、本当に好きだという気持ちが欲しかった潤ちゃんと、そんな潤ちゃんの心がわかったからこそ、『うん』と言えず、ついには『ごめん』と言ってしまう緑。そこから『潤ちゃんのことが大好きだよ』と続ける。ここまでのやり取り、中園さん的には、どう考えて書かれたシーンなのでしょうか?」

中園:
「潤ちゃんのこと大好きだよ!は、保身のためでもなんでもなく、緑の本心から出た言葉ですよ。潤ちゃんと健太のことを絶対に傷つけてはいけないと、理性ではわかり過ぎるぐらいわかっていた。でも、三島の前にいると、ドリというもう一人の女が現われてしまう。三島と再会してからの1年数カ月、緑は心も体もばらばらになっていたと思います。どっちも緑だし、どっちも正直な自分。だから、恋愛は恐ろしいんです。自分が自分でなくなってしまうから...」

小松:
「中園さんが覚悟を決めて書こうとすることを、私たちスタッフと演者がとことんついていこうと思った瞬間がありました。7回、そして最終回にはそんな凄みがありましたね。最後に、ネタバレしない範囲で、最終回の注目ポイントを教えてください」

中園:
「子供との別れ、そしてもだえ苦しむ緑の姿で7回は終わります。三島と潤ちゃん、二人の本当の魅力がわかるのは、最終回だと思います。三島派か潤ちゃん派か、とよく訊かれますが、私は選べません。強いて言えば、二股派です」
「だって、対照的だけど、どちらも負けず劣らず魅力的な男性にしようと思って作ったキャラクターなので、どちらか片方を選ぶなんて出来ないんですよ。健太のことは別格で愛しています。自分も男の子の母親なので」
「三島、潤、健太の中で一人しか選べないと言われたら、緑は迷わず健太を選ぶに決まっています。それが母親ですよね。だから、緑が女になってしまうと、もだえ苦しむんですね」
「緑、三島、潤の三人が悩んで、苦しんで、ありったけの情熱をほとばしらせた後に、何を選択し、何が残るのか、しっかり見届けてください。まだ完成品を見ていませんが、今から私もドキドキしています」

07_hatsukoi_120713.jpg <はつ恋>第7回のシーンから...。

...というわけで、中園先生の緊急インタビューをお届けしました。
はつ恋、泣いても笑っても、そして驚いても、あと1回です。
最終回は7月17日放送。辛く、そして切ないラブストーリーの結末。皆様、絶対にお見逃しなく!!!

ドラマ10「はつ恋」HP
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