向田邦子ドラマ 胡桃の部屋 | 2011年7月6日スタート NHK総合 毎週火曜日よる10時 再放送 翌週火曜 午前0時15分(月曜深夜)から

胡桃の部屋とは?

向田邦子ドラマ【胡桃の部屋】とは…

 バブル前の1980年頃の東京を舞台に、生真面目で不器用な二女・桃子が、リストラで蒸発した父の代わりに一家を守ろうと奮闘する「胡桃の部屋」。父に裏切られた失意の母、同じく夫の不倫に悩む姉、玉の輿(こし)の結婚を狙う妹…就職活動がうまくいかない弟。それぞれの家族の悩みが胡桃の中にある「胡桃の部屋」のように、一つ一つ明らかになっていく…。

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脚本家のことば…篠賦G里子

 脚本家として仕事を頂くようになってから、どんな物語を紡いでいても、結局『家族』を書いている自分に気づきます。何度失敗しても懲りずに結婚してしまうのも、わたしが家族に囚われているからかもしれません。

 うちの父は、いわゆるダメ男でした。みえっぱりでうそつきで、なにかあるとすぐ逃げてしまう弱虫。家族に散々迷惑をかけ、30年以上経った今、新しい家族とのんきに幸せに暮らしているらしい彼を、けれどわたしは憎み切ることができません。

 家族というのは本当にやっかいで面倒くさくて、始末に負えないものです。家を出てモデルルームのように飾り立てた部屋を持ち、小洒落た食器をそろえてみても、実家で使っていたダサい湯呑が一番しっくりしたりする。母親の号令に従うのが嫌でたまらなかった日常も、気づけば同じ手順で掃除をしていたりもする。悔しいけど、家族というのはそれぞれの根っこに深く絡みついてしまっているものなのだと思うのです。

 向田邦子さんの作品では、そんな愛憎深い家族像が多く描かれています。愚かな人間ほど愛おしい。じたばたとみっともなく、それでも精一杯生きている人間に、向田さんの視線は、この上なく温かく優しくそそがれています。

 『胡桃の部屋』の家族たちも、みんな失敗ばかりです。長年忠誠を誓ってきた会社から切り捨てられ、家族を守れなくなったと思いつめた挙句に捨ててしまう父、そんな父を憎み切れず家族をひっかきまわしてしまう母、自分のプライドにこだわって夫の浮気を問いつめられない姉、恋人に好かれようと見栄を張ってしまう妹、尊敬していた父に裏切られ自分の進路まで見失ってしまう弟、そして、家族のために自分の幸せを犠牲にしてしまう主人公の桃子。愛されていないとわかっていながらも父を受け入れてしまう愛人・節子のダメぶりも、桃子と恋をする都築という男の弱さも、書いていてかわいくて面白くてたまりませんでした。

 間違えながらも懸命に生きようとする桃子たち家族が最後にたどりつくのはどこなのか、向田邦子さんのような優しいまなざしで見守っていただければ嬉しいです。

音楽担当から…大友良英

 向田邦子のドラマの音楽と言えば、すぐに思い浮かぶのがNHKテレビ1979年の作品「阿修羅のごとく」だ。

 出てくるのはトルコの軍楽隊の音楽のみ。当時まったく知られてなかったこの音楽が突然ドラマに出てきた衝撃は忘れられない。しかも使われているのはこれ1曲のみ。繰り返し出てくるあの曲はわたしにとってはトラウマと言ってもいいほどのインパクトで、未だにトルコの軍楽隊の音楽を聴くと八千草薫や緒形拳の顔が出てくるほどだ。

 そんなこともあって、ほとんど挑戦者のような気持ちでこのドラマの話を受けたのだった。でも、そんな下衆な気持ちは台本を読んでいる内に消えていった。完成台本をもらったのがちょうと震災後少し立ってから。

 福島出身のわたしは、福島と東京を行き来する生活になったわけだけど、そんな中で読む台本に生命の輝きのようなものを見るようになったのだ。このときに、わたしが相手にするのは「阿修羅のごとく」の音楽ではなく、2011年の今現在、日本に生活してるわたし達自身の人生だということに気づかされたように思う。まずは自分自身のために、そして友人たちのために書こう。そう思うようになってからは、すらすらと曲が書けた・・・となれば、なかなかドラマチックな話になるんだけど、残念ながら逆。こんな巨大なテーマを前にとまどいつつの作業だった。そんな中で大きな助けになったのが歌手の阿部芙蓉美さんや脚本の篠賦G里子さんたちが一緒になってエンディングテーマを考えてくれたことだった。ドラマの中でも女性たちが生命力にあふれていたように、サントラの現場でも女性たちが音楽を生きたものにしてくれたように思う。

演出にあたって…渡邊良雄

 誰も一人では生きられない――この作品の世界観を考えたとき、最初に浮かんだのはこんな言葉でした。桃子をはじめとする三田村家の人々も、節子も、誰かを支え、誰かに支えられて、人生を生きていく――人は、進むべき道を誤り、どうしようもない間違いを犯したりするけれども、後悔したり、回り道をしても、やはり、誰かの助けを借りて、ひたすらに生きていかざるをえないのだ、と。実際の世界と同様に、このドラマに登場する人物で完璧な人は存在しません。みな、迷い、悩み、苦しんでいます。しかし、だからこそ人間とは愛すべき存在なのだと思うのです。この作品をご覧になったそれぞれの皆さんが、各々の登場人物に何かしら共感を覚えることでしょう。「ゲゲゲの女房」でご一緒した松下奈緒さん、竹下景子さんと再びタッグを組む喜びと共に、蟹江敬三さん、井川遥さん、西田尚美さん、瀬戸康史さん、臼田あさ美さんをはじめとする出演者の皆さんと、このドラマ世界を構築していく日々はこの上なく充実したものとなっています。ほろ苦いホームドラマではありますが、そんな愛すべき人々であふれた、愛すべき作品になるだろうという予感は、日々、強くなり、いまや確信に至っています。ぜひ、ご期待ください。

制作にあたって…高橋練

 没後30年にあたる今年、NHKとしては25年ぶりに向田さんの作品をドラマ化します。「阿修羅のごとく」や「あ・うん」など、一貫して家族の姿を描いてきた向田さんですが、この「胡桃の部屋」も父の失踪を契機におこる、家族の物語です。

 向田作品の魅力は何か―様々な意見があるかと思いますが、個人的にはやはりホームドラマに「ユーモアと毒」を切れ味鋭く持ち込んだことではないか、と思います。家族がそれぞれの秘密を抱え、ドキドキしながら目が離せないドラマ。今回の「胡桃の部屋」も、脚本の篠賦G里子さんが向田さんの短編を見事に膨らませて、見ごたえのある作品に仕上げてくれました。大友良英さんの音楽は、ドラマの世界の緊張や切なさを、よりドラマチックかつ繊細に深めています。そして向田ドラマの鍵を握る俳優陣には、「ゲゲゲの女房」以来のNHKドラマ出演となる松下奈緒さんを始め、「心で芝居を感じてくれる」キャストの方々が集結してくれました。

 「幸せだけじゃ、生きてゆけない」―人生はまさにその通りで、辛い出来事もあれば嫌なことも多々起きますが、だからこそ幸せを感じることができるともいえます。そんな世界の中で、主人公・桃子がどのようにして家族の絆を取り戻そうとし、自らの幸せを見つけるか。ドラマを見てくださる方々に主人公・桃子と一緒になって感じていただければ、と思います。

【原作・スタッフ・出演者】

原作:向田邦子
脚本:篠賦G里子
音楽:大友良英
エンディングテーマ:阿部芙蓉美
スチル写真:江森康之

制作統括:煖エ練
演出:渡邊良雄/一木正恵
デスク:釜坂治幸
制作:新田真三/宇佐川隆史
演出部:押山敏夫/山崎樹/桜井善悟/洲鎌雅和/加藤尚平
制作部:朝倉二葉/内藤諭/阪本直行
放送事務:若林香織
美術:小林史幸/松田努/山下恒彦/仲島和憲
音響デザイン:畑奈穂子/久保光男
記録:村上律子
編集:平川正治
編集助手:坂口雄祐/青山愛
番組広報:一木恒太郎/吉中靖史
PR制作:早乙女靖亨
スチール撮影:江森康之
ホームページ:吉岡浩子
医事指導:和井内英樹
絵本製作:伊藤香奈/浅野あや香
編成リソース:秋山道男
台本印刷:池本一郎
技術:嵜渉
撮影:熊木良次/佐藤史明/平林靖大/海江田博幸/西村敏彦
撮影補助:安テヒ
照明:中山鎮雄/桜井利栄/中村航/工藤晃/北原慎也/白石晃/一条友紀/山崎誠/青木智英/佐熊慎一/生水徹
音声:高木陽/小田朝光/藤井芳保/村川幸至/倉林秀行
MAオペレーター:早川一美
音楽録音:高橋清孝/佐々木志了
VE:黒澤智
HVE:稲岡靖
美術進行:大野輝雄/神野直之/向井大樹/佐藤浩
装置進行:三浦一/足立唯史
大道具制作・操作:西原廣行/齋藤幸久/金平裕之/飯野正哉
建具:富山正一/山口正樹
電飾:細川和博
造園:中林淳子/樋口将人
特殊効果:田中賢一
運搬:小池正美
小道具操作:林田潤/加藤登/堀江直弘/小島恵
小道具:肥後和彦
生花:落合生嗣
ミニチュア:川崎健一/橋本篤人
衣裳:菊池奈由佳/張替由起子/及川有角
スタイリスト:長田久美
メーク:青野茂美/西丸友梨
持道具:佐藤秀治
履物:山口憲一


出演:
松下奈緒  原田泰造 井川遥 臼田あさ美 瀬戸康史 西田尚美
徳井優 江口のりこ 松尾諭 小林正寛 黄川田将也 青谷優衣
蟹江敬三 竹下景子

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江森康之撮影「胡桃の部屋」写真展その6を公開しました