番組のみどころ

修学旅行で失踪した15歳の少女から、20年後、5人の同級生たちに届いた謎のEメール。再会した同級生たちに、不可解な事件が次々と襲いかかる・・・。35歳という人生の転換点にたち、仕事でもプライベートでも断崖絶壁に立たされている5人は、転げ落ちる石のように、人生の激流にのみ込まれていく!!

〈原作者の言葉〉作家:柴田よしき

この小説を書こうと思ったきっかけは、文庫版のあとがきにあるように、本当に私的でささやかな遠い思い出にあった。でもその牧歌的で優しい思い出は、作品に溶かされた時点で形を変え、自分でも思いもかけないほどに切なく苦しく、息苦しいものとなっていった。

十五歳から三十五歳に至る二十年の歳月は、人の一生にとってあまりにも変化が大きくあまりにもめまぐるしく、自分でもどう生きているのかわからないままに流されてしまう、そんな二十年ではないだろうか。そしてその間に人は、多くのものを得ると同時に多くのものを失う。

変わり果てた、と自分自身を感じて立ち止まった時に、青春の入り口に忘れて来てしまった「何か」が追いついて来たとしたら。

激流の中でもがきながら、彼らが何を「もう一度その手に」つかみとるのか。ドラマ化によって新たな命を得た物語を、原作者として本当に楽しみに待っている。

〈脚色にあたって〉脚本家:吉田紀子

脚色は、オリジナル脚本を書くよりむずかしい。

しかも、柴田さんの「激流」の巧みに入り組んだサスペンス! この膨大な原作を前に、時々気が遠くなりそうになりながら、私なりに物語のスピリッツを解読し、ドラマとして再構築していく作業は、困難ですが楽しくもあります。今、日々五人の三十五才たちと向き合う中、これはもしかすると『三十五才の青春の物語』なのかな・・・・・・と、思い始めています。そして、まだ半分しか書いていないのに、五人それぞれが愛おしくてたまりません。二十年という時の流れの中で、彼らは何を失い何を得るのか。どんな結末に辿り着くのか。書いている私自身が一番楽しみかもしれません。今まさに、「激流」の中に身をゆだねているところです。

〈企画意図〉テレパック・制作統括:黒沢淳

ミステリーでありながら青春群像でもある、柴田よしきさんの名作を、吉田紀子さんが激しく、せつなく、暖かい脚本に仕立ててくださいました。隠れテーマは“記憶”。記憶というものは、人間たちをいつまでも縛り続けて苦しめるくせに、せつなく風化していきます。加速度的に形を変え、実際とは全然異なるものになってしまう、もろさ、あやうさがあります。けれど、形が変わりながらもかすかに残っている記憶が、人間に大きな力を与えてくれることがあります。誰かに恋した、あるいは誰かに愛された記憶があれば、人はそれだけで生きていけるのかもしれません。そんなせつない人間賛歌を、人気・実力兼ね備えた名優たちが演じ、皆様の記憶に残る感動的なドラマといたします。ミステリーのお好きな方も苦手な方も、ぜひ楽しんでください!

〈制作にあたって〉
編成局コンテンツ開発センター・制作統括:銭谷雅義

中原中也の有名な詩に「汚(よご)れつちまつた悲しみに・・・」というのがあります。日本人にとって「無垢」を失うことは、マイナスの意味合いが強いようです。しかし、宮谷一彦の傑作コミック「ライク・ア・ローリング・ストーン」(1969年発表)には以下のような台詞がでてきます。少女「あなたも汚いおとななんだわ。」男「それは逆だよ。汚いこと辛いこと悲しいこと・・・を経て自己をやしない、おとなになるのだから。」

この対極的テーゼの間を走る激流に飲み込まれた35歳の男女5人が、何かを得て帰還する物語なんじゃないか・・・そう思う今日この頃です。

激流~私を憶えていますか?~ | NHKドラマ10
NHKドラマ10 激流~私を憶えていますか?~