NHKドラマ 下流の宴

ドラマのみどころ

理想の家庭を築いたはずが、気がついたら崖っぷち。夫は左遷。娘の就活は失敗。そしてフリーターの息子が「下流」の娘と結婚宣言!愛する息子を取り戻すため、「中流家庭」を守るため、専業主婦・由美子の戦いが始まる!

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原作者のことば…林真理子

 「下流の宴」は、新聞連載中から大きな反響をよんだ小説です。

 「この登場人物について語り合いましょう」というサイトが出来、インターネット上で熱い議論がかわされたのも、わたしにとって初めての経験でした。

 主人公たちはミもフタもない本音を言い合い、それによってリアルな現実を表現していきます。その現実とは、いつ自分たちが下流に落ちていくかもしれないという恐怖なのです。そして自分の愛する人々を、その恐怖にあわせたくないと考えていて、だから戦うのです。私はこの"戦士"をできるだけ品のいい美しい方に演じてもらいたいと考えていたので、主役が黒木瞳さんと聞いて大喜びでした。黒木さんの端正さが、この恐怖にコミカルさを添えてくれるはずです。

 もちろん希望はあります。ちょっと皮肉な希望に最後はジーンとしていただいたら幸いです。中園ミホさんの脚本が、相変わらず素晴らしく、こうなるのかと何度もうなりました。ドラマが本当に楽しみです。

脚本家のことば…中園ミホ

 林真理子さんの小説を脚色するのは今回で四作目だが、『下流の宴』ほど苦労した作品はない。これまでどんなドラマでも見たことのない、まったく新しいキャラクターが登場するからだ。

 高校中退してフリーターをしている二十歳の青年。覇気がなく、金銭欲も物欲も性欲もなく、何かに奮起することがまるっきりない。この生きているのか死んでいるのかよくわからない「翔ちゃん」という若者をちゃんと描かなければ、『下流の宴』という話題作をドラマ化する意味がない、と私は自分にプレッシャーをかけていた。

 一方、この物語に登場する女たちは全員、強烈な存在感を放ち、自分の信条をしっかり持っている。タフな女たちを生き生きと描くのは、とても楽しかった。

 特に翔の母親・由美子の心情は身につまされる。私にも高校三年の息子がいるからだ。子どもを頑張らせるのは、自分が頑張るよりもはるかに大変で、まったく思いどおりにならないという由美子の苛立ちも痛いほどよくわかる。

 その由美子に結婚を反対され、「愛と名誉のために」医大をめざす息子のオンナ・珠緒もエネルギッシュで、すごくチャーミングだ。

 こうして由美子と珠緒の意地とプライドをかけた戦いの火蓋が切って落とされる。それは、一人の男の子をめぐる母親とカノジョの、三角関係のバトルでもある。そして最後の最後に、翔はまわりをびっくりさせるような決断をする。そのクライマックスの台詞を書きながら、私はようやく翔ちゃんのことを理解したような気がした。どこまでもやさしく素直で、敵を作らず、穏やかな人生を静かに生きようとする。そういう翔のような生き方もあるのかもしれない、と。  まあ、それにしても、こんな若者ばかりになったら、日本はどうなってしまうんだろうという不安はふくらむ一方なのだが・・・。

 ところで、この連続ドラマは2011年3月以前の、物があふれる日本を舞台に描かれている。クランクインの直前に東日本大震災が起き、急遽、ドラマの設定時期を数年前に戻したのだ。そうしなければドラマのリアリティーが保てないと、スタッフ一同が感じた。今回の震災で日本人は大きく変わらざるを得ないだろう。実は私はひそかに、2011年3月以降の「日本中の翔ちゃんたち」に期待をしている。勝ち組や拝金という価値観にまったく心を動かされなかった彼らだからこそ、地下のマンガ喫茶やバーチャルな世界から這い出してきて、新しい日本のために何かをしてくれるんじゃないか、そんな希望と祈りをこめて。

制作にあたって…中村高志(制作統括)

 林真理子さんの原作は2009年の新聞連載時から大きな話題を呼んだ問題作です。「総中流社会」の裂け目から垣間見える格差社会の現実を辛らつかつユーモラスに描いた、スパイスの効いた大人のコメディー。ドラマ化にはもってこいの魅力的な題材です。

 中園ミホさんは社会に生きる大人の女性を描かせたら右に出る者のない実力派の脚本家。林さんの原作のドラマ化も数多く手がけていて、その脚本の出来は予想通り、いや予想をはるかに超えるものでした。

 そして今回、主人公・福原由美子を演じるのは黒木瞳さん。黒木さん、本当に楽しそうにノッて演じています。美波さんの珠緒、窪田正孝さんの翔もこれ以上ないはまり方で、毎回繰り広げるバトルからは目が離せないこと請け合いです。

 これだけのメンバーが揃えば面白くならないはずがない、という期待はかなえられたと、手応えを感じています。

演出にあたって…勝田夏子

 このドラマはホームドラマだが、決して「いい話」ではない。もしかすると「不快な話」かも知れない。しかし誰にでも何かしら思い当たる節のある、切実な話です。

 また、このドラマはコメディーではあるが、「楽しい話」ではない。もしかすると痛かったり、苦かったりするかも知れない。それでも目が離せない、スリリングな話です。

 このドラマでは価値観のバトルが繰り広げられるが、誰も一人勝ちはしない。親と子、金持ちと貧乏人、男と女、都会育ちと田舎育ち・・・。それぞれにじたばたしては悲しいまでにすれ違っていく。残酷だが、滑稽な話です。

 そして、このドラマに出てくる人間たちは皆どこかしら愚かでしょうもない。でも何だかいとおしい連中です。もしかすると、あなたの嫌いな誰かや、あなた自身に似ているかも知れません。  こんな時代だからこそ、大人のための娯楽作品を目指しました。火曜夜10時。どうぞご覧ください。

【放送予定・再放送・原作・脚本・音楽・主題歌】

放送予定2011年5月31日(火)〜7月19日(火)
総合・午後10時から(連続8回)
[原作]林真理子
[脚本]中園ミホ
[音楽]佐藤允彦
[主題歌]高橋優 「誰がために鐘は鳴る」

下流の宴