


以前、遺影写真を撮りにきた田島寿美子(75)が訪ねてくる。
大、振り返って、
大「ああ、こんにちは」
寿美子、かくしゃくとしている。
寿美子「先生、もう一度撮ってください」
大「え?」
前回撮影した時は、頬にあるしみ(もちろんメイクです)を隠すために
右を向いて撮影したのだが…
大「顔の向きが違う…?」
寿美子「やっぱり反対向きの顔でお願いしたいんです」
大「もちろんいいですよ。でも…どうしてそんなに顔の方向にこだわるんです?」
寿美子「亡くなった主人の遺影が左を向いてたんです。
私も同じ方向を見ていたいんです」
大「そんなもんですか」
寿美子「女と男が完全に分かり合うなんて不可能でしょうけど…
一緒に同じ方向を見つめられれば、それで十分じゃないでしょうか」
大「…」
寿美子の言葉や、これまで遺影を撮影した人々の言葉を思い出す大。
そして大は、決意の表情で直子のもとへと走るのでした。
(解説:番組プロデューサー・城朝子)


写真スタジオに永井一郎さん、谷育子さん演じる老夫婦が二人で入ってくる。
大「お一人づつお願いします」
夫「いえ、二人一緒にお願いします」
大「え?」
妻「二人で一緒に死ねたら、いいんですけど」
夫「別々に死んでも二人一緒の写真で葬式をあげたいんです」
妻「子どもや孫のためにも私たちが仲良かった姿、残したいんです」
大「…分かりました!」
大、シャッターを押す。
(解説:番組プロデューサー・城朝子)


第3話のゲスト・神山繁さん演じる元警官・島崎敬三(73)。
大がいつまでもシャッターを切らないので声をかける。
敬三「あのぉ」
大「あっ、すみません。さすがお似合いですよー。あ、これ」
と、制服に付いた貸し衣装のタグを中へ折り込む。
敬三「どうも。息子もね、お父さんは制服姿が一番カッコイイって
言ってくれてました」
大「このお姿で、ずっと地域の安全を守ってこられたんですね」
敬三「ハハハハ…。40年間無遅刻無欠勤。これだけが、私の小さな誇りなんです」
大「すごいじゃないですか。地域のみなさんも感謝してますよ」
敬三「ただ、その分家族には迷惑をかけました。特に息子にはね」
大「息子さん、今はどちらに?」
敬三「30 年ほど前に事故で亡くなりました。まだ12歳でした」
大「あっ…それは、失礼しました……」
敬三「私の勤務中でした。駆けつけてやれなかった。
息子のことは何よりも一番に考えているつもりだったんですがね…。
あの時は、本気で代わってやりたいと思いましたよ」
と、穏やかに淡々と話す敬三に言葉もない大。
敬三「だから、この姿で会いに行ってやりたいんです。親としてできることと言えば、
もうそのくらいしか……」
大「(切り替えて明るく)撮りましょうか」
敬三、頷き、またカメラに向かって姿勢を正す。
大「敬三さん! 長年の交番勤務、ご苦労さまでした!」
敬三、引き締まった顔で敬礼する。
大、その瞬間、シャッターを切る。
先立った息子のために何かできることを、と考え制服姿で遺影を撮影しに来た敬三。
子供の気持ちを思いやる敬三の言葉を思い出し、離婚が原因でストレスをかけてし
まった娘の百々のために、自分が今できることは何なのか、考え始める大でした。
(解説:番組プロデューサー・城朝子)


第二話ゲスト・林家木久扇さん演じる女装した男性・鈴木幸次郎(70)。
幸次郎「何か問題でも?」
大「いえ…コチラ的には。でも、ご遺族的には…」
幸次郎「だぁいじょうぶよ。ツレも、先年ポックリ逝っちゃったしねぇ…。
ようやく誰にも気兼ねする事なく、本来の姿に戻れたってわけよ」
大「はぁ…てことは、奥さんにはずっと内緒に?
打ち明けて欲しかったんじゃないかなぁなんて、奥さん…。
(訳知り顔で)夫婦なんだから、相手の生き方をまるごと認めるのも、
愛ってやつですよね?」
幸次郎「愛?…若いね、アンタ…そんなのは愛じゃないな」
大「え?」
幸次郎「昔から言うだろ、夫婦別ありって。知らないか?
夫婦にも礼儀や遠慮があるべきだって、中国の偉い先生の言葉だよ」
大「はぁ……」
幸次郎「だから、相手の心の内なんて、分かってようで分かってないって事さ」
大「……はぁ」
離婚届けを出しても、まだやり直せると信じて結婚指輪を大事にしていた大。
しかし、幸次郎とのこのやり取りを思い出し、指輪を捨ててしまうのでした。
(解説:番組プロデューサー・城朝子)



第一話ゲスト・加藤治子さん演じる成瀬珠美の遺影写真です。
珠美「だって。あの世に行ってまで、別れた男につきまとわれたくないじゃないですか」
珠美は、元夫が大嫌いだったセロリを持って遺影写真を撮影します。
珠美「あの人ね、私のこと空気みたいな存在だっていうの」
大「……?」
珠美「見えないけど、なければ死んじゃうって」
大「それって、いけないことですか?」
珠美「ほめ言葉のつもりで言ったんでしょうけど、私は空気なんてイヤなんです。
どうせなら、チリや埃の方がまだマシ」
大「どうしてです?」
珠美「光を浴びれば、ちゃんと眼に見えますからねえ」
大「……」
珠美の言葉に大は自らの結婚生活を振り返ります。
そして、ついに離婚届を提出してしまうのでした。
(解説:番組プロデューサー・城朝子)