ドラマのみどころ

 「お母さん、わたしの子を産んでくれない?」

 55歳の山咲みどり(松坂慶子)に、一人娘で産婦人科医の曽根崎理恵(国仲涼子)が頼み込んだ。病気で子宮を摘出した自分のかわりに、代理出産をしてくれないかと言うのだ。躊躇しつつも娘のことを思い引き受けたみどり。

 しかし代理出産は国内では、原則認められていない。病身の茉莉亜(藤村志保)院長の代わりに理恵が診察しているマリアクリニックで、秘密裏に行われた受精卵の移植は成功し、みどりのお腹の中で、理恵の受精卵が育ち始め、みどりはユミ(南明奈)らとともに、マリアクリニック最後の妊婦の一人となる。しかしその妊娠を不審に思い理恵に問いただす助産婦・妙高(柴田理恵)。そして、みどりにほのかな恋心を持つ丸山(長塚京三)は、代理出産の秘密に遂にたどり着いてしまう。さらには理恵の勤務する大学病院に、匿名の告発文章が届く。

 「マリアクリニックで、理恵先生が代理出産の計画を進めている」

 調査を開始する清川准教授(勝村政信)。

 追い詰められた母と娘は、秘密を守りとおそうとするが、そのふたりの間にもあることがきっかけで亀裂が生じ始め、「お腹の子の母親は誰か」との対決が始まる・・・!

脚本家のことば・・・宮村優子

 娘のために、姉妹のために、赤ちゃんを望んでいるひとのために、第三者がそのひとの赤ちゃんを産む。そういう――代理出産という選択をするひとたちがいるのは知っていた。

 けれどそれは、わたしから遠く離れた世界の話だと思っていた。だから「マドンナ・ヴェルデ(聖母みどり)」という魅力的な原作で、このテーマを手がけることになったとき、できるだけ多くの意見を知りたいと手当たり次第資料や本をあたったのだけど、はじめはやっぱり途方に暮れるばかりだった。どの意見もすべて正しいと思えて。

 代理出産を認めて欲しいというひとたちの主張には、強い意志のなかにも節度とつつしみがあり、ひとはそこまで踏み入ってはならないのだと主張するひとたちのことばには、理性に裏打ちされた矜持があった。どの意見も、どの体験談も、いずれも等しく力に溢れ、毅然としていて強く心を動かされた。それはそのはずで、代理出産について語るということは、すなわち「生命」について語ることに他ならないからだろう。

 結果わたしのすべての迷いや模索は、そのまま"このような形で娘の子を産んでよいのか"と迷うみどりさんの姿と重なり投影された。考えてみれば脚本家も「この思いをドラマにしたい」という、だれかの祈りに似た思いに突き動かされて、物語を育て生みだしてゆく。みどりさんの決断がわたしたちの生活や、日常の感情とさほど遠くないところにあるような気がして、それからは地続きにある道をひたすらさがした。

 いつからだろう、描きながらみどりさんに元気な赤ちゃんを産んで欲しいと心から願うようになった。みどりさんという女性の、明るい好奇心と前向きなバイタリティに励まされて、生まれてくる子を理恵といっしょにしっかりと抱きしめたくなった。

 ひとつだけわかったことがある。母と言う感情は、決して限られた性、年齢のひとのものではないということ。あらゆる場面あらゆる形でわたしたちは、命をいとおしいと思う感情に触れることがあり、その瞬間、ひとは老いも若きも、男性も女性も、みんな母性を持っているんだということ。

 ドラマのなかでみどりさんが決断した選択が正しかったのかどうか、わたしにもまだ答えは見つかっていないのだけど、みどりさんに、理恵に、丸山さんにも、伸一郎にも、茉莉亜先生、妙高さん、このドラマに登場するあらゆる人たちに、母性を感じていただけたら幸いです。

制作にあたって・・・佐野元彦

 海堂尊さんの小説を、ずっと楽しみに読ませていただいています。そして今回、『マドンナ・ヴェルデ』を、どうしても映像化させていただきたいと海堂尊さんのもとにお願いにあがった際、「みどり役はぜひ、松坂慶子さんにお願いしたいと思っています」と申し上げたことを、くっきりと覚えています。その、松坂慶子さんをはじめとする素晴らしい出演者の皆さん、脚本家の宮村優子さん、作曲家の村松崇継さん、他素敵な方々がお集まりくださり、今、こうしてドラマは生まれました。多くの皆様に見ていただきたい、ときっぱりと言えるドラマだと思っています。よろしくお願いいたします。

演出のことば・・・本木一博

 出産しない"男性"である自分が、こんな崇高なテーマのドラマを演出していいのか?しかし撮影が始まると、松坂慶子さんの全てを包み込む笑顔と笑い声で、弱気は吹き飛びました。娘役の国仲涼子さんをはじめ出演者の皆さんは、"生命"を深く意識しながら役作りをし、現場でディスカッションを重ね、登場人物をリアルに育ててくれました。代理出産をめぐる様々な思いを真摯に伝えたい。スタッフ&キャストの熱い思いをこめたヒューマンドラマです。

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「リベラ」の公式サイト(※NHKのサイトを離れます)から「生命の奇跡」のPVがご覧いただけます。

放送:NHK総合 4月19日から 毎週火曜よる10時 全6回

原作:海堂尊「マドンナ・ヴェルデ」「ジーン・ワルツ」

脚本:宮村優子

音楽:村松崇継

出演:松坂慶子 国仲涼子 片桐仁 南明奈 柴田理恵 相田翔子

勝村政信 藤村志保 本田博太郎 藤村志保 長塚京三 ほか