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ドラマのみどころ NHK放送80周年を記念して制作・放送する大型ドラマ「ハルとナツ」とは。
昭和9年。北海道からブラジル・サンパウロ州への移民となった姉・ハル(9歳)とその家族。そして出発の地・神戸で眼病のため、ひとり日本に残された妹・ナツ(7歳)。激動の時代を困苦のブラジル移民として耐え抜いた姉。日本で戦争と復興を経て、経済成長の中をひとりで生きた妹。70年間引き裂かれた姉妹。その人生の歳月を、スケール豊かに浮き彫りにする、壮大な大河ロマン―。

作者の言葉…橋田壽賀子

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 このドラマのテーマは、「戦争の悲劇」と「家族の絆」です。ブラジルへ行った姉と日本に残った妹とを対比しながら、人々がいかに戦争に翻弄されてきたのか、そしてその苦労と悲しみの上に今の日本や私たちの暮らしがあるんだということを描きました。

 ブラジルの姉のハルは、大家族で思うような生活ができず、日本が戦争に負けさらなる窮地に追い込まれます。一方、日本でひとり生きていた妹のナツは、闇市から事業を起こし高度成長とともに豊かになるが、最後は大きく傾いていく――そんな『大家族の中の女』と『孤独な女』を対比させています。遠い国ブラジルを描くことで、逆に日本が見えると思いました。

 「戦争の悲劇」といっても、日本とブラジルではその感じ方も違います。でも最後は土地を大事にしてきた人々が一番幸せではないのかと思います。日本ではそうではなくて、バブルという、物を売らないでお金ばかりが生まれた空しい時代があった。貧しくても土にしがみついて自分の力で生きていく家族の姿というのは、人間の生きる原型みたいなものです。日本とブラジルで離れ離れになった姉妹、どちらの生き方が「幸福」だと感じられるでしょうか。

 私は、ある意味では「貧しさ」というのは幸せにつながるものだと思います。あまりに貧しすぎても困るでしょうが、ある程度の身の丈にあった暮らしの中で家族とともに生きていくというのは、非常に大切なことだと考えています。



企画にあたって…金澤宏次

 日本の放送と橋田壽賀子さんは同じ年です。このドラマの主人公、ハルもまた同様です。NHKとしても勿論ですが、放送の歴史と因縁深い橋田さんにとっても、放送80周年ドラマはやはりこだわりの記念番組です。

 「国家や時代の波に翻弄される人間の運命が描きたい。」「大きくて、深みのある作品にしたい。」「それなら“ブラジル移民”はどうか。」「でも、何でブラジルなのか。何で移民なのか。」と錯綜しながら、「ブラジルだから、移民だから、家族の絆がより大切で、一層強まるのでは。また逆に今の日本が見えてくるのでは。」と、テーマが少しずつ絞られてきました。

 思えば、おしんが酒田へ奉公に出された折も両親(伊東四朗、泉ピン子)は一家でブラジルに移民するかで大いに悩みました。結果、おしん一人が7歳で最上川を筏で下り、材木店へ奉公に出されました。

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 『おしん』執筆の時から、ブラジル移民の運命を叙事詩として描く宿命を橋田壽賀子さんは負わされていたのかもしれません。ご存知のように『おしん』はイラクも含め、世界62の国と地域で放送され大好評を博しています。是非、世界中の大勢の視聴者の方々に『ハルとナツ』を観ていただけるよう、皆様のご支援をよろしくお願いいたします。

 橋田壽賀子脚本の真骨頂、そして、素晴らしい俳優陣による演技の醍醐味をご期待ください。



制作にあたって…阿部康彦

 人は、与えられた家族や社会という環境の中でしか生きられません。その流れの中で懸命に、真摯に生きてるから人間は尊いのだと思います。橋田壽賀子さんの脚本を拝読したとき、まさにその人間の営みの尊さに深い感動を覚えました。ブラジルでじっくり土とともに生きた姉のハル、孤児のような暮らしから戦中・戦後を大きく生き抜いたナツ、どちらも見る人の心を揺さぶり、何かを考えさせることになるはずです。

 様々なテーマを含んだこのドラマが、魅力的なキャストの皆さんに支えられて出来上がりました。

 現代のハルの喜びと悲しみを森光子さんが味わい深く演じてくださいました。ナツの孤独と気負いは野際陽子さんが一瞬の表情で見せてくれています。ブラジルの大地で何の飾りもなく生きることの素晴らしさを米倉涼子さんは体当たりで演じてくれました。ナツが大会社の社長になっていく心の起伏は仲間由紀恵さんの見せ所です。そして周りを固める村田雄浩さんをはじめとする名キャストの皆さんの存在が、ドラマの奥深さに繋がっています。

 現在と過去、ブラジルと日本、様々なモザイク模様の構成を仕立ててくださった橋田さんの「思い」を、是非じっくりとご覧下さい。



演出にあたって…佐藤峰世

 日本が貧しかった時代に日本からブラジルに渡った人たちがいました。彼等は次の拓務大臣の言葉により送られました。

 「国家は全権大使を送って一国を代表せしめるのでありますが、皆様の一人一人が各各その背後に日本を代表して居る、一人一人が全権大使だと言う心得で、日本の名誉を益々揚げ、日本人の信用を益々高め、それによって行き詰まった日本で苦しんでいる人々が後から後から行くことの出来る機会を得られるように、国家に対する責任を自覚しつつ御奮闘あらんことを希望するのであります」

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 この物語では昭和9年から現代までの70年間、ブラジルに渡った家族の歴史が3世代にわたって描かれますが、それだけではありません。日本に残された妹の70年もたどっています。届かなかったお互いの手紙がひょんなところから見つかり、姉妹は互いの手紙を読み、それぞれの過ぎ去った生活と思いを理解し、和解が果たされます。

 ブラジルの各地カンピーナス、カフェランジア、マリリア、バストス、モジダスクルーゼス、アチバイアなどで取材時に出合った日系人の方たちを思い浮かべながらこのドラマを撮影しました。

 これが日本とブラジルを繋ぐ新しい架け橋のひとつになれば、とても嬉しく思います。



【ブラジル移民メモ】

 日本人のブラジル移民は、1908年(明治41年)の「笠戸丸」から始まった。サンパウロのコーヒー農園が労働力不足に悩んでいたこと、1907年の協定により日本人のアメリカ移民が難しくなったことが相まって開始された。その数は1908年から戦前が19万人、戦後は5万人。ピークは1925年〜36年の昭和初期であり、ドラマ内の家族の移住も1934年(昭和9年)の設定にしている。

 その9割が、コーヒー農園の契約労働者で、低賃金であった。ほとんどは、金をため故郷に錦を飾りたいという出稼ぎ移民で、それがかなわず永住が定着するのは戦後だった。西日本出身者が多く、12歳以上を最低3人含む家族移民が基本だったので、女性も多かった。また、サンパウロ州の中部・北部のコーヒー農園での数年を経て、1920年代後半からは、北西部やパラナ州などへ移動、綿作などの独立農となるケースが多かった。サンパウロ州最奥地に、幾百もの日系集団地を築いた。1937年ブラジル政府により、日本語による学校教育、日本語新聞の発行、日本語の集会が禁じられ、日米開戦後、規制はさらに強まった。戦後、日本の勝敗をめぐって、いわゆる「勝ち組」「負け組」という日本人同士の対立があった。

 現在、ブラジルの日系人は140万人ともいわれるが、8割以上が都市に住み、ほとんどが中産階級となっている。



【おもな出演者】

■現代編

高倉ハル…森光子

山辺ナツ…野際陽子

高倉大和…今井翼

■昭和編

高倉ハル…米倉涼子

高倉(山辺)ナツ…仲間由紀恵

高倉大和…今井翼

高倉忠次(ハルとナツの父)…村田雄浩

高倉シズ(母)…姿晴香

高倉ハル(子役)…斉藤奈々

高倉ナツ(子役)…志田未来

高倉洋三(叔父)…吉見一豊

高倉キヨ(叔母)…水町レイコ

高倉与作(伯父)…田山涼成

高倉カネ(伯母)…根岸季衣

高倉ノブ(祖母)…渡辺美佐子

山下拓也(ハルの夫)…高嶋政宏

山下平造(移民の仲間)…斉藤洋介

中山耕太郎(入植地日本人会会長)…柄本明

中山トキ(耕太郎の妻)…由紀さおり

中山隆太(ハルの友だち)…岡田義徳

海野(海軍中佐)…石橋凌

金太(ナツの仲間)…小橋賢児

ジョージ原田(日系2世アメリカ人)…大森南朋

山辺康夫(ナツの夫)…北村一輝

徳治(牛飼いの老人)…井川比佐志




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