日本放送作家協会主催 第32回創作テレビドラマ大賞受賞作
「ガラス色の恋人」

出会うはずのなかった2人。
沖縄の海を象徴する青いガラスに導かれた、奇跡の出会い。
それぞれに傷を抱えた2人は、絶望を乗り越え、再生への道を歩き出していく。
捨てられた空き瓶から「新しい命」を生み出す、琉球ガラスのように。
【作】 野条美由紀 ○音楽 梅林茂・宮野幸子
【主題歌】 畠山美由紀「So Far Away」作詞・作曲 キャロル・キング
【あらずじ】
美波(吹石一恵)は、恋人の水中カメラマン・英貴(瀬川亮)を海の事故で失う。英貴は脳死と判定され、心臓は移植された。それを契機に看護師を辞めた美波は、英貴との思い出の地・沖縄に向かい、かつて2人で訪ねた琉球ガラスの工房で働き始める。美波の胸にはいつも、英貴から贈られた青いカレットが光っていた。
ガラス作りに没頭する美波を励まそうと、工房の親方・高嶺(大地康雄)は琉球ガラスのコンクールへの参加を勧めるが、テーマが「命」と知った美波はためらう。ある日、工房で働きたいと年下の大学生・月野(崎本大海)が現れる。月野は美波を初めて見た瞬間、持っていたガラスの花瓶を落として割ってしまう。
美波は月野と廃瓶回収のコンビを組むことになる。月野の明るさは、美波の閉ざされていた心を少しずつ開いていく。重い病気を患っていた月野は、手術後に病室で見た琉球ガラスに魅せられて沖縄へやってきたという。「生きててよかった」という月野の言葉は、美波をつき動かした。
美波は月野の協力で、コンクールに挑むための作品を作り始める。それは英貴が最後に撮った写真に写る、巨大なジンベエザメをモチーフにしたものだった。これで英貴の死を乗り越えることができると思う美波だった。しかし、英貴の一周忌の後、沖縄を訪れた英貴の母・久枝(永島暎子)は、美波と月野に、思いがけないものをもたらす...
【作者のことば 野条美由紀】
ドラマ化にあたりモチーフを模索していたところ、今回の脚本コンクール受賞祝いに友人がくれた、クリスタルの亀の置物に目が留まりました。ガラスってこの物語に合うかも……。そこから琉球ガラス工房という舞台が脳裏に広がったのでした。
或るひとつの命をめぐり、様々な立場の人間が葛藤するドラマ――とはいえ決して小難しくなく、男女の愛、親子の愛といった普遍的な感情を描いています。見た方が大切な誰かに、生きていてくれてありがとう、と伝えたくなるといいなと願いながら、脚本を書きました。
テレビの前からいつしか琉球の地へワープし、蒼い風を感じて頂けたら幸甚に思います。
○作者プロフィール
1972年生まれ、京都府出身。京都女子大学短期大学部文学科卒業。卒業後シナリオを学ぶ。今回が初の受賞となる。「ガラス色の恋人」は、受賞作「海ガメの涙」を改題したもの。
【制作にあたって NHKエンタープライズ 加賀田透】
「いつからでも再生できる。ガラスも人間も同じ。」琉球ガラス工房の親方・高嶺の印象的なセリフです。作者の野条さんとドラマ化のための打合せを重ねる中で、廃瓶を再利用するため透明感はなくなるが、逆に独特の温かみが出るという「琉球ガラス」に出会ったとき、ドラマの全体像が見えた気がしました。ともに傷を抱えた美波と月野、2人の再生の物語を、琉球ガラス作りに託して描いていきたいと思いました。
吹石さん・崎本さん・大地さんは、本番前から、ロケ地である沖縄・読谷村のガラス工房での特訓に意欲的に取り組んでくれました。ありがとうございました。そして出演者の指導や、劇中に出てくる作品の制作も担当していただいた工房のみなさん、ありがとうございました。
深い悲しみを抱えながらも笑顔を絶やさない美波。無邪気なようで、どこか謎めいた月野。怖くて、そしてあったかい高嶺。琉球ガラスが結びつけたこの3人を軸に展開する「奇跡のラブストーリー」。ぜひご覧ください。
【演出にあたって NHKエンタープライズ 梶原登城】
吹石一恵さんは春風のような人です。
明るくほがらかで爽快に駆け抜ける―。物語の最後にそんな春風が吹くようなドラマを作りたいと思っていました。そして吹石さんは見事に吹き抜けてくれました。
昨秋、下見で沖縄を訪ねるたびに風を感じました。頬がふるえる、雲が流れる、波が立つ。炎が暴れサトウキビがざわわと揺れる。「ああ、風が吹いているんだなぁ」。ちょっと忘れていたこの心地よさを映像化したいと思うようになりました。
ドラマは再生の物語です。傷を負い閉ざした美波の心に見事に風穴を開けてくれたのが崎本君です。そこに大地さん、永島さん、瀬川君が素晴らしいお芝居でさまざまな風を吹き込んでくれました。そして美波の心に風の道ができました。
ボブ・ディランは『風に吹かれて』の中で、“The answer is blowin' in the wind”と歌っています。誰にも正解なんてわからない。ただ、どこからともなく吹いてくる風を感じ、その声に耳を傾け、もがきながら自分なりの答えを探して身をゆだねる。そこに再生というものがあるような気がしました。
そんな「風」を感じていただければ幸いです。
【主な出演者】
■小日向美波(26)・・・・吹石一恵
東京で看護師をしていたが、恋人の英貴を事故で失ったことをきっかけに看護師を辞め、沖縄に移住。かつて英貴と二人で訪ねた琉球ガラス工房で働きながら傷をいやそうとしている。
■月野圭介(23)・・・崎本大海
美波が働く工房に突然やってきた大学生。以前、重い病気で入院していた時、病室で見た琉球ガラスに魅せられて沖縄を訪れた。初対面の美波に強くひかれ、ガラス作りを手伝うようになる。
■笠原英貴(30)・・・瀬川 亮
美波の恋人。水中カメラマンとして活躍していた。何度も沖縄を訪れ、沖縄の海や琉球ガラスを愛していたが、仕事中の事故で帰らぬ人となる。
■笠原久枝(52)・・・永島暎子
英貴の母。英貴の死後、臓器提供に賛成し、美波と対立する。一年後、英貴の一周忌に出席しなかった美波に会うため、沖縄を訪れ、意外なものを美波に渡す。
■高嶺章造(60)・・・大地康雄
美波が働く工房の親方。琉球ガラス作りに45年間打ち込んできた。廃瓶を再利用した琉球ガラスの独特の温かみを大切にしている。生前の英貴とも親しかった。美波が立ち直ることを願っている。
○収録スケジュール 2008年12月13日(土)〜24日(水)
沖縄県読谷村、今帰仁村、那覇市ほか(オールロケ)
○スタッフ
■制作統括 加賀田透(NHKエンタープライズ・ドラマ番組)
遠藤理史(NHKドラマ番組)
■演出 梶原登城(NHKエンタープライズ・ドラマ番組)

