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プロデューサー撮影日誌

「ウルトラパワー」〜徳島・ロケ初日

2006/7/5(水) プロデューサー・鈴木圭より


 明け方4時に目が覚めると、外は土砂降りの大雨。クランクイン初日に絶望的な気分で、ホテルのロビーに降りると、ちりーん、ちりんと鈴の音がした。鈴虫の鳴き声だったのだが、その時は瞬間的にお遍路さんの持つ金剛杖の鈴の音に聞こえた。弘法大師さまの励ましと勝手に解釈し、気を取り直して朝6時出発。最初のロケ地、一番札所の霊山寺に到着すると、なんと雨は上がっていた。

 主役の江口洋介さんは晴れ男だと言う。原田芳雄さんもそうで「俺のおかげだ」とニコニコしている。次なるロケ場所、二番札所の極楽寺から参加したベッキーも晴れ女だそうで、その後も、屋根下の撮影時には雨がパラつくが、外ではほとんど上がるという驚異的なツキで凌ぎ切った。これからのべ一ヶ月に及ぶ四国ロケ、ウルトラパワーの出演者の皆さん、頼りにしています。


 地元の記者の方から、このドラマで訴えたい事はなんですか、と聞かれた。

 「分からないことから、逃げないで前に進むこと」と答えた。

 今の時代、何が幸せか「分からない」、何に不満かもよく「分からない」、じゃあどうすべきかも「分からない」。歩き遍路に来る人は、以前は愛する人が死んだとか、悲しい出来事があったとか、何か特別な事情の人が多かったらしいが、最近はフリーターや、リストラされた方などが多いと聞く。江口洋介さん演じる主人公山下徳久(とっきゅう)も公私共に順調な普通のサラリーマンだが、歩き始めた事で、この「分からない」モードに突入する。私、P鈴木自身も私事だが、色々悩んでいる。そんな迷子の大人たちに、とにかく分からなくてもいいから、前に進むこと、生き抜く力を少しでも取り戻せるようなドラマになれば、と願っている。


 地元エキストラの方々も五十人近く参加下さり、お遍路の白装束で汗だくになりながら協力して頂いた。有り難うございました。


 夜の部は主人公徳久の実家ロケ。阿波市内の由緒あるお寺、神宮寺をお借りした。ここから加藤登紀子さん、市川左團次さん、戸田菜穂さんが参加。加藤さん曰く「私、晴れ女なの」。やっぱりウルトラパワーだ。23時過ぎ、ロケ終了。


 台風三号接近の嫌なニュースもあるが、おそらく大丈夫だ。

 ちなみに私、P鈴木も、もちろんウルトラ晴れ男であります。

PS:ページ更新が初日の色々で一日遅れてしまい、すいません。明日から張り切って更新します。


「丸裸になる」〜徳島・ロケ二日目

2006/7/6(木) プロデューサー・鈴木圭より


 昨晩が遅かったので、今日は昼の出発。9番札所・法輪寺周辺で江口洋介さんの歩きを撮影する。レールのセッティング待ちの間、ちょっとおしゃべり。江口さんは昨日一日ロケしただけで、歩き遍路の大変さを実感したらしい。八十八箇所1400キロを越える道のりを大体40日かけて歩くのだから、一日に30キロ以上歩くわけである。中には三日も四日も札所が現れず、ただひたすら歩くところもある。

 「一体、何を考えて歩くのでしょうか?」

 このドラマの大事なテーマに早くも向き合うところは流石である。このロケが終わるとき、答えは見つかるだろうか?


 それから、とても印象的な一言をポツンとつぶやく。

 「この白い装束には勝てないなぁ」
どんなインナーを着ようが、派手なリックや装飾品をつけようが、全て吹き飛んでしまう、最強の白。もともと死装束で、お遍路半ばで倒れ、死んでしまうことも想定してのものだったのか。その時、金剛杖は墓標代わりになるという。全ての余分なものが弾き飛ばされて、裸になった自分だけが残るような感じ、それがこの装束の凄さである。旅が進む中で、余分なものがどんどん削ぎ落とされていく感じを、私たちも感じられれば素晴らしい。


 夜は再び、徳久の実家ロケ。私、P鈴木はいったん東京に戻る。連続テレビ小説「ファイト」でお世話になった故田村高廣さんのお別れ会に出席するためである。思えば田村さんの演技も、余分なものの全くない、カメラの前にポツンと立っているような、孤高の存在感だった。いつも全身全霊で仕事に向き合う姿を間近に見せて頂いた。田村さん、ありがとうございました。


「ライブでいこう」〜徳島・ロケ三日目

2006/7/7(金) プロデューサー・鈴木圭より


 大雨災害のニュースが飛び交う中、わがウォーカーズチームは、鳴子リゾートホテルで、真夏のイメージシーンを撮っている。全く取りこぼし無く、ロケ三日目を迎えているのは、奇跡としかいいようがない。私、P鈴木は東京にいるが、現場からの報告で、順調に進んでいるとの報告に一安心。


 原田芳雄さんは撮影の無い日も東京に戻らず、ずっと四国にいて下さるという。歩き遍路228回目、空海の生まれ変わりのような謎の男、というこのドラマのトリックスターだが、役柄を楽しんで下さっているようだ。おそらく、今全スタッフの中で、一番お遍路や空海のことに詳しいのが原田さんだ。驚くほど良く勉強なさっている。最初の打合せの時の一言が鮮烈だった。

 「ライブに、その場で感じたままを、演じたい」

 当初から脚本家の鈴木聡さんと話していた狙いを、台本からぎゅっと掴んで下さっていた。


 ウォーカーズが目指すのは「ライブなドラマ」である。このドラマには派手な殺人事件も無ければ、大仕掛けもない。ただひたすら、俳優さんたちが四国の道を歩くだけ。見ている視聴者の方々にはその道中を追体験することで、一緒に悩んだり、考えたりする時間を持ってもらいたい。だから、俳優のみなさんが、歩きながら感じた事を何より大切に撮影していきたい。作り物だけど作り物でない、新しいジャンルのドラマになれば嬉しい。


 今日、原田さんは撮影が無い。今頃徳島のどこかで、ライブな時間を過ごされている筈だ。早く四国に戻って、焼酎でも傾けながら、原田さんの楽しい話が聞きたい。 


「お接待」〜徳島・ロケ四日目

2006/7/9(日) プロデューサー・鈴木圭より


 朝一番の飛行機で徳島入り。昨日は撮休だったロケ隊の面々、それぞれ楽しい休息の時を過ごしたようだ。今日から参加する三浦友和さん、風吹ジュンさんと合流する。阿波市八幡の十川スーパーをお借りして、夫のために絆創膏を買う、風吹さん初登場のシーンを撮影。地元の方が一杯見学に来て下さって、嬉しい限りだ。四国では、お遍路さんにお菓子とか飲み物とかを振舞う「お接待」という、素敵な風習があるが、スーパーのおかみさんが、我々スタッフにあれこれ「お接待」して下さり、恐縮する。店の片隅には、お客さんが腰を下ろして茶飲み話が出来るスペースがあり、お遍路さんも休んでいくという。おかみさんは、いつもここで、「お接待」をして徳を積んでおられるのだろう。


 続く安楽寺(第六番札所)で、瀬川亮さん初登場。朝ドラ「ファイト」の太郎ちゃんとも久々の再会だ。髪を茶髪に染め、「ファイト」とは全く違う現代青年を演じる。聞けば彼のお爺さん、おばあさんも歩き遍路に出たという。四国というのは不思議なところで、そういう縁ある人々を呼ぶような所がある。安楽寺の宿坊で江口さん、原田さん、と入浴シーンの撮影をする。この三人、それぞれ見事に体を鍛えておられて、素晴らしい肉体美である。オンエアーをお楽しみに。


 夜には森本レオさん、鷲尾真知子さんが徳島入り。続々と新しいメンバーが集まって、いよいよ本格的にロケが動き出した感じ。明日からは、連続九日間のハードな行軍になる。


「暑く燃える肌」〜徳島・ロケ五日目

2006/7/10(月) プロデューサー・鈴木圭より


 沢山のメールを頂き、感激しています。ありがとうございました。まだ見ぬドラマに対して、ロケと同時並行で、こんなにも暖かい励ましを頂き、プロデューサー冥利に尽きます。もちろん江口さんたち俳優陣は勿論、NHKスタッフにも必ず閲覧します。これからもドシドシ、メールをお待ちしています。


 今日は四国らしい暑さを始めて体験した一日であった。朝一番は吉野川の中洲でのロケ、わが「ウォーカーズ」に強力な助っ人が登場した。体重一トン、馬のアサマ嬢である。江口洋介さんが、会社の上司で定年退職したばかりの三浦友和さんと四国で再会、馬車で語り合うシーンである。彼女の美味しい脚やお腹をめがけて、蚊やアブが殺到したが、痒いのも我慢して、アサマ嬢は素晴らしい演技を披露してくれた。写真はその労をねぎらう江口さんとの2ショット。


 三浦友和さんとご一緒するのは、大河ドラマ「利家とまつ」以来。あの時はプロデューサーではなく、演出として、心優しい利家の兄を演じる友和さんとお付き合いした。今回はちょっぴり駄目な団塊の世代の男を演じて下さる。妻・風吹ジュンさんとのバトルが楽しみでならない。


 午後からは、11番札所藤井寺でのロケ。ベッキーさんを除くレギュラーメンバー全員が集合した。俳優陣から、「どうしたんですか?真っ赤ですよ」と指摘され、わが脚を見てびっくり。こってり日焼けしている。大して晴れていた訳ではないのだが、紫外線が強いのだろう。顔も、ビールを一杯ひっかけた後のよう。僕だけでなく、周りのスタッフも真っ赤になっている人が目立っていた。原田芳雄さんは私の顔を見るとVサインを出していた。「どうだ、やっぱり俺のおかげで晴れただろう」という訳だが、梅雨の合間でもこれほどだから、この先が思いやられる。湿気が地面から立ち上ってきて、みっちり体全体にまとわりつく感じ、とでも言うのだろうか。


 いよいよ、明日は前半戦のクライマックス、十二番札所焼山寺への急峻な道のロケ。俗に「遍路ころがし」と言われる厳しい道のりを、実際に歩きながら、撮影していく。本隊は4時半出発である。今日はさすがに飲みに行かず、早く休むことにする。


「へんろころがし」〜徳島・ロケ六日目

2006/7/11(火) プロデューサー・鈴木圭より


 ロケ前半戦のクライマックス、「へんろころがし」の撮影である。十二番札所焼山寺への急峻な道のロケ。朝4時半出発。マイクロバスは入れない狭い道を、小さなワゴン車に乗り換えて、行けるところまでは行って、あとは徒歩。撮影ポイントを変えては小刻みな上り下りを繰り返す、過酷な一日となった。それでも、車の移動時には雨、降りると快晴、というウォーカーズチームならではの強運な空模様を味方に撮り進む。可笑しかったのは森本レオさんが、待ち時間に持参のデジカメで色々な虫のアップを撮り、それを原田芳雄さんに見せてキャーキャー騒いでいたこと。どんな厳しい状況でも、それを楽しみに変えてしまうのは流石である。


 焼山寺にたどり着いたのは午後二時半。役者陣や一部スタッフは既に起きてから12時間近く経っている。ここで特別ゲスト登場。この「ウォーカーズ」で劇中音楽を担当して下さる細野晴臣さんである。笛奏者・雲龍さんと共に、第一回の中で、実際に演奏場面もあるのでお楽しみに。


 久々に徳島入りしたベッキー、戸田菜穂さんも加えて、レギュラーメンバー九人が顔を揃えて、賑やかなロケとなった。日没と戦いながら撮り続け、午後七時近くでついに本日の撮影終了。初めてワンシーンとりこぼしてしまったが、それでも撮ったカット数を考えれば、奇跡に近い撮れ高である。体力には自信の江口洋介さんも「さすがにしんどかった」とコメント。俳優陣は明日に備えて、これから二時間かけて、高知県との県境の宍喰まで移動する。焼山寺の住職さんから、そうめんとにぎりめしの「お接待」を受ける。暑さと疲れで火照った体に、沁みる旨さだった。皆様、お疲れ様でした。ありがとうございました。明日はいよいよ高知に踏み入る。


「キャラバン大移動」〜高知・徳島・ロケ七日目

2006/7/12(水) プロデューサー・鈴木圭より


 徳島から高知へ。朝五時半発。二時間を越える大移動だ。山道中心だった徳島ロケとはガラリと風景が変わり、でっかい太平洋がウォーカーズチームを出迎えてくれた。室戸市の海沿いの国道で、一行の道中を撮影する。八時半、江口さんたち俳優陣が現場到着。「おはようございます」と声を掛け合う感じが、軽やかに明るい。昨日一つの山場を撮り終えた安堵感もあるだろうが、強行軍で疲れを見せ始めたスタッフを盛り上げようという、皆さんの優しい気遣いにも思えた。


 昼には24番札所最御崎寺へ。本堂前はバスツアーでやって来た団体のお遍路さんたちで大賑わい。なかなか撮影に入れない。今日はこのあと昨日取りこぼした焼山寺のシーンを撮りに再び徳島まで戻るので、時間が心配だ。大いに焦る。ツアーの方が般若心経をあげるわずかな合間を狙って、撮り進める。そんなドタバタの状況でも、笑顔を忘れないベッキーの明るさが素敵だ。バラエティで大活躍のベッキーだが、演技への意欲は高く、真剣さが伝わって来る。


 なんとか撮り終えて、焼山寺へ大移動。今日は撮影時間よりも、ロケバスに乗っている方が長い一日だ。私P鈴木はロケ隊と離れ、鷲尾真知子さん、ベッキー、瀬川亮さんを送って徳島空港へロングドライブ。車中は皆ほとんど爆睡だったが、空港近くになると徳島ラーメンやうどんの話で盛り上がる。最終の東京行きに間に合い、ホッと一安心。帰りは市川左團次さんを迎えて、ホテルに戻る。


 ロケ隊は日没ぎりぎりまで勝負して、本日の予定を全て撮りきった。走行距離300キロを超える大移動の一日が終わった。感謝。


「どこにいても私」〜徳島・ロケ八日目

2006/7/13(木) プロデューサー・鈴木圭より


 朝六時半、市川左團次さん、戸田菜穂さんを送って阿波市の神宮寺へ。主人公徳久の実家のロケで、昨日とはうって変わって、一箇所で動かない日である。随分と気分は楽だ。地元のNHK徳島や阿波市のケーブルテレビの取材も合わせ、撮影は極めて順調に進行する。


 徳久のフィアンセ役、戸田菜穂さんとは今回初めてご一緒する。朝ドラ「ええにょぼ」のヒロインを務めた方だから、NHKの撮影現場のあれこれに慣れている事もあろうが、スタッフにすっと溶け込み、歓談する姿は、極めて自然体の人、という感じだ。見学に集まった地元の方にも気さくに応対し、フリーの時間は、一人ですいすい街に飛び出していく行動派である。


 二枚目の写真は江口さんの父親役・市川左團次さんが、家を継がず東京に出て行く息子に怒り、塩をまく場面。左團次さん自身、すんなり歌舞伎の道に進んだのではなく、プロ野球の選手になりたかったのだそうだ。ドラマ同様、お父様に反対されてあれこれあったらしい。スカウトが来るほどの腕前だったそうで、このサウスポーの見事さは芝居だけではなかったんだ、と納得した。


 出番を待つ母親役の加藤登紀子さんから、素敵な言葉を教えて頂く。表題の「どこにいても私」である。一年の半分近くをコンサートなど旅に出ている登紀子さんは、この言葉を肝に銘じているのだそうだ。二十四時間、働いていても休んでいても自分であることに変わりは無い。だから何処にいても、どんな時でも、自分らしい楽しみを見つけ、肩の力を抜いて、生きる。思えは私たちは仕事で緊張し、休んでいてもどこか力が入っている。登紀子さんのような前向きな境地になりたいものだ。


 撮影はまきにまいて、15時終了。明日の移動に備えて、一堂、宿に戻って大荷造り大会だ。その後、ささやかな中打ち上げ。梅雨空の中、徳島ロケの予定を全て終了したことは本当に奇跡に近いこと、県のロケーションサービスやエキストラの皆さん、有難う御座いました。8月の阿波おどりにまたお邪魔します。


 明日は8時出発、いよいよ本格的な高知ロケのスタートである。


ウォーカーズロケ日記・番外編

プロデューサー・鈴木圭より


 P鈴木です。こんにちは。

 沢山頂いたメールに感謝を込めて、ほんの一部ですがご紹介させて頂きます。まずは、江口洋介さんとお遍路さんのミスマッチについて


 ――『江口洋介さん大好き!なmeg.と申します。江口さんが歩きお遍路さん役とは意外?ですが、放送を心待ちにしております。』

 ――『次回作がお遍路さんのドラマと聞いて、初めは「地味だな〜、江口さんとお遍路さん って??」と思ったのですが、ロケ日記でドラマのテーマやねらいを知って、すごく楽しみになりました。そしてかつて自分もお遍路さんの旅に出たいと思っていたことも思い出しました。誰もが一度は自分を見つめ直したいと考えるのでしょうね。』


 キャスティングを考えたとき、主人公には「最もお遍路しそうもない、エネルギー溢れる人」がいいと考えました。江口さんもオファーがあった時、「俺がお遍路?」とは思ったそうですが、何故か気持ちにひっかかった、とおっしゃっていました。実際は老若男女、様々な世代が歩いています。「古いようで新しい」お遍路ドラマになれば、と願っています。


 地元でエキストラに参加下さった方、これから参加下さる方から


 ――『7/5・6と地元でエキストラ出演させて頂き、ありがとうございました。いい経験になりました。江口さんも原田さんもかっこよかったです。原田さんがワンシーンごとに自らモニターチェックされていたのが印象的でした。』

 ――『阿波踊りシーンでエキストラとして参加させていただくことになっており、今から楽しみです。最初は、ただのミーハー根性で「ナマ江口っちゃんが見たい(>_<)」と思うのみでしたが、撮影日記を読み進めていくうちに「歩き遍路をやってみたい!」と思いはじめました。』


 参加いただいたある女性エキストラの方の言葉を鮮明に覚えています。「中から汗、外から雨でたまらんわ」。それでも笑顔でお付き合い頂き、本当に有り難うございました。


 ロケを見たいという、メールは沢山ありました。こちらは結婚して徳島に暮らし始めて5年の、東京出身の女性から


 ――『お恥ずかしいことにどうしてもひとめ江口さんにお会いしたくNHKさんにロケ現場を教えてくださいと電話をしたりしました。教えてはいただけませんでしたが、残念・・・自分で山をはっていったところはすべてからぶりでした。徳島ロケはもう終わってしまうんですよね。でもやっぱり遠くからでもロケ現場みてみたかったです。また香川にこられたらロケ現場さがしてみます。』


 そこまでやっていただいて、恐縮です。最御崎寺での混乱の話は書きましたが、やはりロケ地に人が多くなると、大変な事態になりがちです。プロデューサーとしては見ていただきたいのは山々ですが、詳細な情報をお伝えすることはご勘弁下さい。七月二十日までは高知でロケをしておりますので、見かけたら宜しくお願いいたします。


 ドラマの副題につけた「迷子の大人たち」。そんな方々からも


 ――『20歳の大学生です。今日はじめてこのドラマのことを知りました。私は今、たくさんの悩みを抱えています。このドラマは歩いていく中で考える、と言うテーマのようで、私にヒントをくれそうなドラマだといいなと、とても楽しみにしています。そして私は江口洋介さんが大好きです。歩きすぎて体を壊さないでください。』

 ――『"負け組""フリーター""パラサイトシングル"・・すべて当てはまるともいえる身です。しかし、望まない人生の局面を懸命に生きる者にも、ささやかなプライドはあるのです。ドラマの中で、自分に似たお遍路さんに出会えれば嬉しいです。』

 ――『私事ながら、仕事のし過ぎで身体を壊して退職し、もうすぐ1年半になります。健康も回復しつつあり、「これからの生き方を考えなくてはならない」と悩み始めた時に、鈴木プロデューサーさんが「ウォーカーズ」を企画して下さいました。不惑の齢を超えたのに、今頃、迷子の大人たちの一人をしています。私にとって仕事とは何だったのか?生きるとは?生活するとは?そして、これからどうすべきなのか?このドラマの力も借りて、自分なりの答えに近づきたいと思っています。』


 私自身も、このドラマの撮影に同行する中で、「変わっていきたい」と願っています。


 最後に、はっとさせられたメールです。


 ――『こんばんは。あおぞらかあちゃんです。「分からないことから、逃げないで前に進むこと」この言葉にひかれて、プロデューサー日記を読んでいます。今回ご出演の役者さんは、みなさん晴れ男・晴れ女だけじゃなく、笑顔が素敵な方達ばかりですね。それも私にとっては大きな魅力です。』


 本当にその通りです。どんな状況でも「笑顔」を忘れないことを、心がけたいと思います。

 これからもドシドシ、メールを頂けたら、幸いです。


「こんな海見たことない」〜高知・ロケ九日目

2006/7/14(金) プロデューサー・鈴木圭より


 快晴の朝八時、高知に向けて出発。太平洋が車窓から見えた時、思わず「おぅ」と声が出た。青さが目に目映い。土佐市の海岸沿いで江口洋介さんと戸田菜穂さんの歩きなどを撮影。


 海大好きの江口さんは、青の綺麗さに、「こんな海、見たことないよ」と興奮ぎみ。今日から現場を手伝いに来てくれた地元NHK高知の新人・斉藤ディレクターと、釣りやサーフィンの話で盛り上がっていた。戸田さんのお母様は高知の桂浜に住んでいたことがあるそうで、携帯のメールで海をバックに自分の写真を撮って送っていた。暑さは多分、四国に来て最高だろう。熱い空気が体にまとわりついてくる感じだ。


 次なる撮影ポイントは一時間ほど移動した七子峠のお遍路みち。現場に着くと、なんと土砂降り。すぐに止んでピーカン。と思うとまた降り出し、雷鳴がずどん。高知フィルムコミッションの方は当たり前のように「梅雨の終わりって感じですね」こんな雨が何度かあって、梅雨明けになるのだそうだ。そうか、梅雨だったんだ。晴れ男、晴れ女軍団のウォーカーズチームゆえ、すっかり忘れていた。


 世間は明日から三連休。ロケ隊は休まず、撮り続ける。


「官能の灼熱」〜高知・ロケ十日目

2006/7/15(土) プロデューサー・鈴木圭より


 昨日が最高の暑さかと思ったが、あっさりそれを上回る暑さだ。大岐の浜で江口さん、戸田さんの撮影。旅が進んでも何も見えてこない焦りで、徳久が突然走り出す場面。エキストラでお願いした地元サーファーの方がうらやましい。

 「私は何にも悪いことしてないのに、なんでこんなに暑いの」と記録の筆子さんが冗談めかして叫ぶ。ここまで来ると、ボーっとして、目がうるうるして、何だか官能的だ。取り終えると戸田さんの様子が変。かなり、こたえたようだ。


 午後から原田さんが参加して、車の走り。アスファルトの上で待っていると体感温度は40度という感じ。高知フィルムコミッションの方が作ってくれたカチ割り(ビニールに氷)が飛ぶように売れ、見る見る間に溶けていく。夜は須崎に移動し、120年の歴史ある遍路宿、柳屋旅館をお借りしての撮影。女将さんの柔らかな表情が印象的だ。人に優しくしていると、こういうお顔になるのだろうか。


 宿の前には遅くまで見学の方が来てくださって、近くでお祭りでもあったのか浴衣姿のちびっ子たちも多い。高知の子供達はなんだか「子どもらしい、子ども」という感じでとても人懐っこくて可愛い。


 今日から高知市内に三連泊だ。


「とんぼがえり」〜高知・ロケ十一日目

2006/7/16(日) プロデューサー・鈴木圭より


 今日はロケ隊と離れて、単独行動。八十八番札所大窪寺へ、八月の撮影のお願いとご挨拶に行く。高知から香川への日帰り旅行。今度ここに来るのはロケの最終盤だが、その時まで、ロケの無事を祈って、手を合わせる。ロケ隊の方は大平山トンネルや、県営の渡し舟、三十六番青龍寺などを予定通り撮りきる。


「空と海に抱かれて」〜高知・ロケ十二日目

2006/7/17(月) プロデューサー・鈴木圭より


 前半戦のロケも余すところ、あと四日。俳優、スタッフ共にかなり疲労が蓄積して来た。特に主役の江口洋介さんは朝から晩まで出番も多く、疲れもピークだろう。頑張りに頭が下がる。今日は再び室戸岬周辺でのロケ。脚本家の鈴木聡さんが陣中見舞いにやって来た。聞くと、恐るべき「雨男」だそうだ。かつて小笠原に撮影に行った時、激しい雨に見舞われ一晩で飲みに行った居酒屋が流されてしまったという。お帰り願おうかとも思ったが、ウォーカーズチームの晴れパワーの前には全く問題なし。快晴で海碧く、風は強いが、過ごしやすい。


 メインイベントは、空海が修行したという御厨人窟での撮影。虚空蔵求聞持法(こくうぞうぐもんじほう)という念仏を百日間で百万遍唱えたら、空に輝く明星が口に飛び込んだという。洞窟の入り口から見える空と海。原田芳雄さんの気合が素晴らしい。何度もモニター前に脚を運んでは、芝居をチェックしている。夜7時半、撮影終了。二時間かけて高知市内の宿へ。帰り際、ここにきて聡さんパワーの名残りか、激しい降雨。


 明日は早い出発だ。残る三日は一晩ずつ宿が変わる。外国のことわざで、「一番辛い旅はONE NIGHT STAY」というのがあるらしい。前半のロケ、最大の山場がやって来る。なんとか乗り切って欲しい。


 *連休中システムが動かず、ロケ日記は四日間まとめてになってしまいました。明日からはまた一生懸命更新します。お楽しみに。


「瞳・コミュニケーション」〜高知・ロケ十三日目

2006/7/18(火) プロデューサー・鈴木圭より


 キャストフルメンバーが揃って三日間の大移動が始まった。前半のロケの大詰めである。高知市内から約40分、夜須町の海辺で、歩きやバーベキューのシーンの撮影である。降水確率70%の予報、多少のパラツキはあるものの、全く問題なく進行していく。


 昨晩、現場に一日いた脚本家の鈴木聡さんから、指摘された。「なんかコミュニケーションが足りない気がした」制作、演出、俳優、技術、美術、車両、地元の方などなど、ドラマの撮影は50人を超える大所帯である。意思の疎通がないと、小さなトラブルが重なっていく。苛立つ。声を荒げる人が出る。みんなの超人的な頑張りでここまで取りこぼし無くきたが、疲れはピークである。そんな現場の隙を聡さんに見抜かれた。つまらないミスのないよう、引き締めていきたい。


 東京に戻る聡さんから置き土産の話が一つ。「ベッキーの瞳の中にはひまわりが咲いているんだよ」待ち時間に早速、確かめてみた。本当だった。なんか、気持ちがほっと、癒された。このロケ中に共演者のみんなに見てもらうと、張り切るベッキーであった。


 地元の漁師さんから皆がバーベキューでお接待を受けるシーンでは、藁焼きカツオのたたき、サザエにメヒカリ、シイラみりん干し、長太郎貝と、海の幸が並んだ。お芝居で食べるだけでなく、待ち時間の間もつまんでは舌鼓をうつ面々であった。瀬川亮さんは、やや緊張気味。両親を亡くした自分の心情を語るという芝居場に集中して臨んでいた。


 陽のあるぎりぎりで撮影終了。普通なら宿に戻ってゆっくり食事出来るところだが、俳優部と美術のスタッフの一部は今日のうちに足摺岬まで四時間の大移動をする。勿論、私P鈴木も同行。頑張ります。


「風ニモ雨ニモ負ケズ」〜高知・ロケ十四日目

2006/7/19(水) プロデューサー・鈴木圭より


 いよいよ前半戦ロケもあと二日。足摺岬で自殺しようとする森本レオさん、鷲尾真知子さんの夫婦を江口洋介さんが止めるという、クライマックスの撮影である。「さすが足摺」、風の迫力が素晴らしい。というよりいつ大降りになってもおかしくない気配。三浦友和さんが、「ピーカンじゃなくて良かったね」と話しかけてくれた。確かに、心中未遂という第二話の山場には、こんな荒ら荒らしい天候の方がふさわしい。何事も前向きに考える姿勢は流石である。現場での三浦さんは、物静かに全体を眺めながら、意外なギャグで場を和ませたり、撮影が旨く運ぶように皆に気を使って下さっている。


 降水確率50%だし、断続的にぱらつく雨はあるものの、この調子なら持ちそうという事で、いつも通り安心していたら、午後の38番札所・金剛福寺になって本降りになってきた。ウォーカーズチーム、初めてのピンチである。「ライブで撮る」構えのスタッフは動じず、撮り進めていくが、雨天の作業と長旅の疲れで、やや押し気味。それでも江口洋介さん、森本レオさん、鷲尾真知子さんが振り絞るような熱演を披露して下さった。スタッフが四万十市の宿にたどり着いたのは夜11時を回っていたが、たっぷりと充実の一日だった。


 森本レオさんの一言「まさか撮りきれるとは思わなかった」午前中の岬での撮影時に降らなかったのが大きかった。チームの晴れパワーと強運は続いている。雨の中の皆さんの頑張り、本当にありがとうございました。おかげさまで明日、一次ロケの最終日を迎えられます。


「菜っ葉のこやし」〜高知・ロケ十五日目

2006/7/20(木) プロデューサー・鈴木圭より


 7月5日から始まったウォーカーズ・第一次ロケ、徳島・高知編もいよいよ最終日。小雨ぱらつく朝一番は、清流四万十川にかかる佐田沈下橋で一行の歩きロケ。謎の先達坂田を演じる原田芳雄さんの周りに、地元エキストラの小学生たちが何故か集まっている。何か楽しいそうなことが起こりそうな気配、人に壁を作らない優しさのようなものが、原田さんにはある。そういえば住吉漁港でのバーベキューの時も、漁師さんたちに囲まれ、色々振舞われていた。


 七子峠のガソリンスタンド跡で森本レオさん、鷲尾真知子さんの教師夫婦が自称ホストの瀬川亮さんに荷物を持ってもらう場面を撮る。昼食の後、三十一番札所竹林寺で撮影が始まった時には、ついに大降り。昨日、今日とさすがに天も堪えきれずに雨をしたたか降らせているが、ここは見事な庭に臨む座敷での数少ない室内のシーン。被害はほとんどない。くどすぎるほど書いてきたが、この幸運は偶然ではないと確信している。


 最後のハラハラは時間。出演者は全員今日の飛行機で東京に戻る。竹林寺から高知空港までは約40分。逆算すると夕方5時45分がタイムリミットである。

 押し気味のムードに気ばかり焦る。「さあ、行こう」とか「VTRまわそう」とか声を挙げていたら、記録の筆子さんに苦笑された。「そういうのは菜っ葉のこやし、って言うのよ」そのココロは「肥えばかりかける」=声ばかりかけて威勢はいいが何もしない奴、の事だそうだ。上手い。座布団一枚。


 夕方、五時。残すところ2カット。江口洋介さん演じる徳久が本堂前で般若心経を唱える場面。息継ぎとテンポが難しいらしい。クランクインの日も、徳久の読経を撮った。あれから二週間あまり。同じ読経でも、数段心がこもっている感じに聞こえた。気持ちを入れて読むとテンポがゆっくりになるのだそうだ。


 五時三十五分、本日の撮影終了。写真はその直後のもの、白衣を脱ぐ瞬間の江口さんの表情が印象的だ。ホッとした感じはあるが、ほほえみではない。分量で言ってもまだ半分以上残っている。主役としての責任、引き締まった表情で、江口さんは竹林寺の濡れた石段を降りていった。


ロケ日記・番外編その2・お便り紹介

2006/7/20(水) 緑山スタジオにて プロデューサー・鈴木圭より


 暑中お見舞い申し上げます。P鈴木です。

 ウォーカーズチームは東京に戻り、緑山スタジオで収録を続けています。

 東京もジメジメ蒸し蒸しですっきりしませんが、四国に比べると随分過ごしやすい感じがしています。「環境が変わると何かリフレッシュするね」と江口洋介さんの言う通り、新たな気持ちで撮影に望んでいます。

 沢山頂いているメールに心より感謝を込めて、またまたご紹介させて頂きます。四国のかたは勿論、日本全国、遠くは香港からも声援を頂きました。皆様からの暖かいメールが、俳優、スタッフにとって何よりの励みになります。ありがとうございます。11月の放送まで色々な情報を発信していきますので、是非見て下さい。


 まずはこんな嬉しいメールから。自称「ウォーカーズ」広報部員さんより…

 ――「完成したドラマでライブ感を・・・」と思っていましたが、とんでもない、もう撮影中の段階から私もウォーカーズです。「今度の土曜ドラマ、こんな風に撮影してるんだよ」と、事ある毎に友人達に話しています。(「ウォーカーズ」の回し者ではありませんが・・・笑)出演者の皆さん、スタッフの皆さん、くれぐれも体調を崩さぬよう頑張ってください!!私も毎日一緒に歩いています。

 感謝します。どんどん宣伝して下さいね。


 実際にお遍路を体験された方から。

 ――私は大阪に住む29歳のOLです。二年前から学生時代からの友人女性と三人で区切り打ちの歩き遍路をやっております。焼山寺のへんろころがし、最御崎寺までの長い長い道のり。寺と寺の間が近く入門編のようにどんどん進める徳島からだんだんと試練が増えてくる。それを乗り越えるたびに、強くなり、自信がつき、その分体や足はぼろぼろになってゆき、また鍛えられてゆく。

 歩き遍路ならではの何かが伝わるドラマになりますよう、楽しみにしています!


 ――私も三十歳という区切りの年でもあるこの七月から八十八箇所巡拝を始めました。歩いてではなく車で回らせて頂いてるのですが、それでもこの暑さの中お参りをさせていただくのは本当に大変でした。が、お寺などですれ違う見知らぬ方に挨拶をし、それが笑顔とともに返ってくる。という今では無くなりつつあるふれ合いなどがここでは当たり前の様に出来て楽しいです!!


 ――1999年から始めた夫婦二人の四国歩き遍路の区切り打ちは今年の春には四万十川まで着きました。番組はまさにその道をたどって撮影が進んでいることがわかります。出演者の皆様に最後までお大師様のご加護がありますように。


 自分は別段信心深い方ではないが、四国にいると、弘法さまのおかげ、とか、ご加護、とかが素直に信じられる気がします。実は、一次ロケの間、現場にちょくちょく黒アゲハがいました。森本レオさんなどは得意のデジカメで夢中になって撮っていましたが、私は勝手に、弘法さまが見守ってくれている、と思い込んでました。


 ずしりと胸に響くメールも頂きました。

 ――私は一年前にバスツアーですが、遍路を初めて、今年の3月に満願を果たしました。生まれつきの心臓病で、20までの命と言われていましたが、41歳の現在も、二度の手術を乗り越えて、色々ありますが元気に過ごしております。母と共に遍路を続けました。遍路には、多くの疾患を共に生きてこられた方が参加しておられます。私も甘えず、自立した自分というものを見つけられた気がした、貴重な旅の体験でした。どうぞスタッフの皆様も日陰が少なく、暑い四国ですが、お体に気をつけて体感されて下さい。何かが変わるのを待っているだけでは、あるいは、ただ自分に酔いしれて歩いているだけでは、何も変わりません。ご自分から、ご自分に向かってくるものと立ち向かい、また歩く途中で生じる甘えを乗り越え、変えようとなさって下さい。ご自分のことだけではなく、同じく歩いている者の労苦を思うのも、大事なことだと思います。歩き続けるという意味は、多分その辺にもあるのではないかと思います。


 まだ放送もしていないのに、このロケ日記を読んでくださった方が、色々考え、何かひっかかり、感じて下さっているのが嬉しいです。やって良かったと思います。


 ――若い頃は、大人になればいろんな事がわかるようになり、もっとスッキリと楽になれると思っていたけれど、大人になった今でも、相変わらずモヤモヤしたものを抱えて生きているような気がします。それはきっと、どうにもならない自分の弱さやズルさだと思うのですが。


 ――秋の放映を首を長くして待っている大阪府在住の専業主婦です。カタカナのタイトルからは想像できなかった内容のドラマのようで、今から本当に楽しみです。日本には一億人以上の人々が住んでいますが、同じ数だけ悩みや背負っているものがありますよね。今私はこれといった悩みを抱えていませんが、それだけに、他の人に対して無神経な事をしていないかと、時々振り返ってみたりしています。このドラマが、そんな私の心の栄養になるかしらと期待しています。


 地元四国でエキストラ参加して下さった方から。

 ――エキストラで7月5日のロケに参加させていただきました。何の番組か,出演者は誰か全く知らずに行きました。遍路役でベッキーさんと並んで歩くシーンを撮影しました。とてもよい思い出になりました。裏話では,昼食後玄関で私が靴を履いていたら,隣に原田芳雄さんが来て並んで一緒に靴履きました。びっくりしました。江口さんとはトイレで並んで用を足しました。初めは江口さんとはわかりませんでしたが・・・。ロケ中に感じたことは役者さんが台詞を流したり,小さな仕草や動きを真剣に考えている姿がとても印象的でした。


 八月上旬からの二次ロケでは愛媛、香川にお邪魔するが、「エキストラに参加するにはどうしたら良いか」という問い合わせも頂いています。若干名ではありますが、各県のフィルムコミッションの皆さんに協力を願っているので、お問い合わせ頂ければと思います。


 最後に、ロケ最終日の江口さんの写真について頂いたメールです。

 ――とても丁寧に作られているドラマだな。そんなふうに、日記を読みながら思いました。出演者の方がたは勿論、スタッフの皆さん、それを支えているたくさんの方々の思いが、形となって目の前に表れるだろうオンエアのその時を、今から心待ちにしています。第一次ロケ終了後の、江口さんの表情がとても印象的でした。笑顔がステキな、大好きな俳優さんですが……決して「楽だけではない」厳しい現場での、役者としての真摯な姿勢を垣間見られたようでした。どうか、お体には気をつけて、これからのご活躍をお祈りしています。


 素敵なメールの数々、本当にありがとうございました。一部しかご紹介できず、ごめんなさい。次回は都内ロケの様子をお伝えします。お楽しみに。


「ウォーカーズIN東京」

2006/7/30(日) 都内ロケ編 プロデューサー・鈴木圭より


 大都市にお遍路さん登場!! そう、ウォーカーズチームは29日から三日間、都内各所でロケを敢行している。写真は、江口洋介さん扮する主人公の徳久が、歩きながら頭に浮かんだ「出世」のイメージシーン。水道橋駅近いガーデンエアタワー前をお借りしての撮影である。


 都内の撮影から途中参加して下さった上司役の矢崎滋さんと江口さんの待ち時間の会話が面白かった。矢崎さん「江口君くらいの年だとあまり考えないだろうけど、僕くらいの年になると、色々迷ってお遍路しちゃう気分って、良く分かるんだ」というような事をおっしゃると、江口さん曰く「僕だって考えてますよ。バリバリ考えるタイプです」


 もう一枚の写真、水鉄砲を持って相当怪しく写っているのは音響効果担当の今井さん。別に遊んでいるわけではなく、現場の木にいるセミを追い払っているのである。ドラマ上の季節は夏なので鳴いていても問題はないのだが、あまりに近いと台詞の邪魔をするのである。これもロケ現場ではよく見かける風景である。


 緑山スタジオ、及び都内ロケを終えて、チームは八月上旬から再び四国に入る。梅雨は明けたので、心配は台風のみ。第一次ロケからして、天気については正直あまり気にかけていない。むしろ暑さと日差しだ。俳優の皆さんはつながりを気にかけ、日焼けには十分注意されていたが、それでも腕の辺りは防ぎきれない。今日もロケバスの中で戸田菜穂さんの腕にうっすら時計の跡がついているのを発見してしまった。それほど四国の夏はホットである。殆ど休みなく働いているスタッフの疲れも心配だ。何とか無事に歩き通して欲しい。

 次のロケ日記は四国から送ります。お楽しみに。


「私は私を肯定する」〜香川・二次ロケ四日目

2006/8/8(火) プロデューサー・鈴木圭より


 青空に幸運を呼ぶ黒アゲハが舞っている。台風三連発は見事に四国を外れて東西に分かれ、ウォーカーズチームは二次ロケに突入している。私鈴木Pは、昨日ベッキーと共に香川入りしたが、ロケ隊は今日で四日目になる。十八日のクランクアップを目指して、ラストスパートである。一次ロケの徳島・高知とはまた違った、瀬戸内の優しい風景が心地よい。


 朝一は68番札所神恵院と69番観音寺である。ここは「1寺2札所」で一箇所で二つ回れるお得な場所である。長い階段を利用して原田芳雄さん、瀬川亮さん、ベッキーが楽しいお芝居を見せてくれる。三浦友和さんと風吹ジュンさんの夫婦すれ違いもそこはかとなく可笑しい。昨晩は仕事が終わった後、俳優部が揃って会食をしたという。東京と違って、地方ロケでは仕事の後の親睦もまた格別である。俳優もスタッフも少しずつ互いを分かり合い、裸の自分をさらけ出しながら、距離が縮まっていく。


 順調に撮影は進み、午後は71番札所弥谷寺。すさまじい暑さだが、参道の木陰に入ると、その涼やかさにホッとする。クレーンを使って長い階段の歩きをロケした後、階段下の俳句茶屋をお借りして、江口洋介さん演じる主人公徳久が放浪の俳人・山頭火の句と出会うシーンを撮る。残念ながら、私はここでタイムアップ、別件で東京へ戻る。中一日おいて、十日木曜日の朝、再び四国入りする。


 ウォーカーズ・二次ロケ日記のはじまりは、この山頭火の句で締めたい。

 「蜘蛛は網張る 私は私を肯定する」


「芝居場ぞくぞく」〜香川・二次ロケ六日目

2006/8/10(木) プロデューサー・鈴木圭より


 加藤登紀子さん、市川左團次さんと共に四国入り、いよいよ今日明日と八十八番札所大窪寺周辺の撮影である。現場に着いてみると、江口洋介さんが走っている。出番を待つ間のウォーミングアップ、この炎天下で「凄いね」と声を掛けると「八十八まで歩いた訳だから、筋肉つけないとね」と笑って答えてくれた。ほとばしるエネルギーというか、いゃあ、流石にパワフルだ。


 参道前のうどん屋さん、八十八庵をお借りして、主人公徳久がお遍路に出る父母と出会うクライマックスの撮影が始まる。三浦友和さん、風吹ジュンさんは昨日、団塊の夫が妻に二度目のプロポーズをするという、山場のシーンを取り終えたばかり。東京にいて見逃してしまったが、スタッフに聞くと相当に素晴らしい出来だったらしい。お二人の表情も心なしか穏やかである。風吹さんから「地方ロケはホントに素敵。いい経験をさせて貰った」という言葉を頂いた。長かったロケもいよいよ最終盤に突入してるんだなぁ、という感じでしみじみしてしまった。


 このうどん屋のシーンも力のこもったものになった。父と息子の和解を見て、涙ぐむ戸田菜穂さんに、加藤登紀子さんが「どうしてそんなに上手く泣けるの」と聞いていた。ご自分は、撮られてない時は自然に泣けたんだけど、とおっしゃっていたが、いやいや、加藤さんの気持ちのこもった優しい表情は、間違いなく江口さんや他の人たちの良い芝居を引き出していたと思う。


 夜七時撮影終了。明日はウォーカーズで初めて、メインの全役者さんが勢ぞろい、大窪寺で結願を迎える場面のロケである。地元高松局やケーブルテレビの取材も入り、賑やかな一日になりそうだ。気合を入れていきたい。


「女体山の向こう側」〜香川・二次ロケ七日目

2006/8/11(金) プロデューサー・鈴木圭より


 写真中央の山が女体山。あの向こうに八十八番大窪寺がある。あの山を実際に登るクライマックスの撮影は四日後に控えている。最後のへんろころがしの楽しみ?は先にとっておいて、今日は女体山に向かう穏やかな歩きのシーンからスタートである。この色っぽい名前の山に登ると聞いて、若い瀬川亮さんが、原田芳雄さんたちに「前の晩は興奮して眠れないんじゃないか?」などといじられている。


 そして、お遍路のゴール、大窪寺へ。全メンバーが顔を会わせての、最終回のラスト部分の撮影である。仁王門をくぐる江口洋介さん、戸田菜穂さん、原田芳雄さんのカットを回し始める。ここまで来たんだなぁと、グッときた。まだ二次ロケはようやく半分なのだが。


 素敵な出会いもあった。中学くらいの娘さんを連れたご夫婦が結願を迎えていた。伺うと、山口から四国に通うこと十年、年に一回ないし二回の区切り打ちで、娘さんが二歳の頃から歩きへんろしているという。ご家族のことなど、歩き始めたきっかけはあったらしいが、それにしても見事なことである。俳優のみなさんと一緒に記念写真を撮り、喜んで下さったが、私たちの方こそ、素晴らしい瞬間をご一緒出来て、感激であった。


 午後になり、チャンスなので、俳優スタッフ全員で手早く記念撮影をする。江口さんが両親の旅立ちを見送り、原田芳雄さん扮する謎の先達坂田が、皆の写真を撮る場面が始まった。江口さん、原田さんの気合が凄い。演出の黒崎と入念な打ち合わせを重ねている。そして加藤登紀子さん、市川左團次さんが目出度く、撮り切りを迎えた時には日没が迫っていた。まだ取り残しているカットは多く、間に合いそうに無い。苦渋の選択で、午後18時過ぎ、撮影終了。その決定と同時に小雨が振り出した。結願一歩手前でお預けをくらった感じの、痛恨の取りこぼしである。そうそう簡単には終わらせてもらえない、という事か。反省点も多し。江口洋介さんの前向きな一言「俺はもう気分を切り替えました」に救われつつ、明日へ。


「撮って、逃げる」〜徳島・二次ロケ十日目

2006/8/14(月) プロデューサー・鈴木圭より


 一年で最も賑わっている徳島の町で、阿波踊りのシーンを撮影する日がやって来た。今日の作戦は「撮って、逃げる」つまり本格的に演舞が始まる夕刻前に、全てのカットを撮り終えて、交通規制のかかる前に全車、雑踏を抜け出し、高松に戻る、という動きである。


 朝10時高松を出発、75分ほどで徳島に到着。思ったよりスムーズであった。俳優部はNHK徳島の会議室で支度をする。その間、撮影ポイントのふれあい橋では、代表的な連の一つ、ゑびす連の皆さん200名にご協力頂き、段取りを説明する。連長の鶴瀬さんは、素晴らしい恰幅と笑顔で、なるほどこういう方には福が舞い込んで来るだろう、と納得する。


 徳島局からの移動は道路の混雑に備えて、局の前の川に船三艘もスタンバイ。往きは大丈夫そうで、車出発することになったが、現場で駐車した車が閉じ込められそうなら、すぐに動かし、人と機材は船で脱出するつもり。午後二時半、撮影開始。先ず見事なおどりを二台のカメラで狙うと、なんといきなりVTRトラブル。幸い十五分程度で直り事なきを得たが、ドキドキものであった。今日は休みの原田芳雄さんも、カメラ片手に、見事なおどりを堪能していた。


 橋の大規模な撮影は四時過ぎに終えて、残るは近くのラーメン屋さんをお借りして戸田菜穂さんが電話を受けるワンシーンを撮る。どんどん人が増えてきて、お囃子の音が聞こえて来る。「五時半過ぎたらやばい」と地元スタッフの広瀬さんは心配げに道路の様子を見守る。路地が詰まり始めたら、彼のキューで車を逃がし、船移動に切り替えだ。なんとか五時過ぎに終了。速やかに撤収し、交通規制前に脱出成功。良かった。


 明日はいよいよ、女体山に登る。最後のへんろころがしである。江口洋介さんのクライマックスの芝居が楽しみだ。


「100リットルの汗」〜香川・二次ロケ九日目

2006/8/13(日) プロデューサー・鈴木圭より


 12日土曜日はロケに同行していたものの、カメラのバッテリー切れ。おまけに土日は東京でこのHPを更新して下さるS田中さんもお休みとあって、ロケ日記の方も一休みさせて頂いた。この日は七十五番札所・善通寺周辺と県内でも有名なうどん屋さんの宮川製麺所、宮武うどんさんのロケであった。その雰囲気はかろうじて撮ったこの一枚の写真でご想像下さい。


 明けて、日曜日。お盆の真っ只中もなんのその、ウォーカーズチームは今日も往く。俳優部と共に朝8時10分発。慣れというのは怖いもので、早朝ロケが続いていたため、なんだかゆっくりとした出発に感じる。最初は八十四番札所屋島寺の周辺だ。観光名所でもあり、人出が予想されるため、気を引き締めて現場に向かう。展望台からの眺めは素晴らしく、ここでかわらけ投げのシーンから撮影する。案の定、人通りは絶えず、少しでも進行するように総力戦で収録。ベッキーが劇中の設定どおり、練習でも離れた岩にかわらけを命中させ、歓声を挙げていた。


 なんとか取り終えて次は参道の土産店をお借りしての店内撮影。サヌカイト「讃岐の岩」という学名を持つ音の出る岩を使ってのお芝居、その涼やかな音は、放送でお楽しみに。続いて屋島寺の仁王門前に移って、出てくる一堂を撮る。暑さは今日も絶好調、制作部のスタッフに聞くと、一日に10リットルのタンク二つに麦茶とポカリスエットなどを入れておくのだが、大体五回くらい補充するという。つまり一日100リットルの水分が、俳優部とスタッフで消費されている。その殆どは汗になって流れているだろう。まあ、そんな過酷なロケである。戸田菜穂さんは、階段を下りる時、フラッとしたと、後で話してくれた。


 屋島寺を順調に終えて、移動。石の里・牟礼町の高柳旅館をお借りしての撮影。百五十年の歴史を持つお遍路宿である。お盆の忙しい最中、エキストラもなかなか集まらず、ご主人の高橋さん自らご出演願う。恐縮である。こうして一箇所の室内に落ち着いて、ロケできるのが、一番ホッとする。夜10時撮影終了。

 真夏の花火大会を終えた喧騒の高松市内へ、キャラバンは帰って行く。


 いよいよ明日は徳島の阿波踊りロケ。ウォーカーズ最大規模のロケーションになる。一年で最も賑わう阿波の町に突入する。交通渋滞など移動の心配はあるが、今からわくわくしている。


「笑うヒザ」〜香川・二次ロケ十一日目

2006/8/15(火) プロデューサー・鈴木圭より


 高気圧に阻まれて、台風10号はまだ四国に近づいて来られない。今日も当然のように快晴。いよいよ女体山に登る。最後のへんろころがしである。五時半出発、88番大窪寺前の駐車場に全車集結し、機材をしょいやすいように小分けして、山に入る。江口洋介さんが、戸田菜穂さんにプロポーズする場面を、登りながら撮り進めていく。徳島12番焼山寺へのへんろころがしもきつかったが、今日の方が階段の幅が広く、ヒザにこたえる。メイクの青野さん、通称青ちゃんは息をきらせながら「今、私に話しかけないで」と言って、メイク直しに奔走していた。


 青ちゃんが撮影の合間にふと漏らした一言「色んな事を経験した人って、何か違うんだよねぇ」多分、俳優さんか、スタッフのちょっとした気遣いや優しさの事を言っているのだろう。これだけ長く旅していると、人間性や、その人の器が互いに丸裸になってしまう。自分が青ちゃんにどう見えているのかは、怖くて聞けなかったが。


 九時半頃、山頂方向から降りてきた三浦友和さん、風吹ジュンさん、原田芳雄さんと見晴台で合流。この下りもきつかったらしい。原田さんが「ヒザか吉本興業だ」と言った。笑っている、という冗談に笑えないほどに、皆の疲労度は高かった。


 昼食後は八十六番札所の志度寺でのロケ。主人公徳久が、自分が作った携帯電話が、森本レオさん、鷲尾真知子さん夫婦を救ったことを知る、という芝居場である。江口さんが演出の黒崎と入念な打ち合わせを続けている。あまりの暑さに、香川県のフィルムコミッションの方々が氷のカチ割りを作って配って下さると、みな頭の上に乗せて一息つく。セミの鳴き声も本ロケ最高の音量で、追い払うための例の水鉄砲フル稼働である。夕刻18時過ぎ、無事撮影終了。


 最初の予定では、ここで江口洋介さん、三浦友和さんの撮り切りだったが、先日の取りこぼしのため、明日朝、大窪寺でラストシーンが残っている。台風の接近が気がかりだが、ここまで来たら、わがチームの幸運とパワーを信じて、進むのみ、である。


「ライブ・at88」〜香川・徳島・二次ロケ十二日目

2006/8/16(水) プロデューサー・鈴木圭より


 台風10号大接近。江口洋介さん、三浦友和さんの撮りきりの日、ロケは今日を入れてあと三日である。絵に描いたようなドラマチックな終盤戦になってきた。

 朝七時、全車は八十八番札所・大窪寺へ。原田芳雄さんが、全員のポートレートを撮る、ドラマのラストシーンのロケが始まった。ここは原田さんと演出黒崎の度重なる話し合いの中で、台本のセリフの一部、または全部を変えて、ほぼアドリブに近いやりとりとして、撮影することになった。クランクイン前に予定していた、ドラマの枠を超えたドキュメンタリー的な部分を、この大切なシーンでトライするのである。


 一ヶ月半苦楽を共にした仲間に、原田さんが感じた何かをぶつけ、江口さんたちがそれに答え、飾らない一瞬の表情を写真に撮る。テスト無しの一発本番、真剣勝負のタイマン。いやがおうにもテンションが高まる。皆、緊張はしているが、なんだか楽しそうだ。結果の方は、オンエアを是非、期待して下さい。


 まず、三浦友和さんが撮りきり。皆への一言挨拶は「おへんろをして真人間になりました。出来上がりが本当に楽しみです」そして、いよいよ江口洋介さんの撮りきり。その挨拶は「思ったより、ほんとうに、大変な仕事だったです」。


 自分の正直な気持ちや想いをさらけ出して、いつも真剣に、この作品に向き合って下さった江口さん、有難うございました。俳優・スタッフ全員に優しい心遣いを下さった三浦さん、有難うございました。「この旅が終わる時、僕らに何が起きるだろう?」脚本の鈴木聡さんが考えて下さった、このドラマのキャッチコピーである。お二人にとって、それは何だったのだろう。


 それでもロケは続く。台風情報が刻々と現場に伝わってくる。明日は高知に大移動の予定だが、台風の進路に突っ込んでいくのはあまりにも無謀で、制作部はスケジュールの変更に大童である。ロケ隊は徳島に移動、吉野川周辺での撮影を続行する。夜を待って、野宿する原田さんが、森本レオさん・鷲尾真知子さん夫婦のただならぬ気配に気付く場面の撮影が始まった。橋をライトアップしての大規模ナイターの最中、遂に雨が降り出した。ハラハラものだったが、何とか全カットを撮りきる。原田さんの言葉「長い一日だった、、、」。


 高松の宿に戻って十一時過ぎ、明日は予定を大規模に変更、高知行きを断念することを決定。ロケはあと二日。何とか走り抜けるぞ。


「台風のおかげ」〜香川・愛媛・二次ロケ十三日目

2006/8/17(木) プロデューサー・鈴木圭より


 台風十号のため、高知に予定していたロケ場所は全て変更し、近場でやっつけることになった。昨日遅くまで地元スタッフの広瀬さんたちが、新規の場所捜しに動いてくれたおかげである。朝九時、宿をチェックアウトし、出発。瀬戸内海を左に見ながら、つまり台風の進路とは逆の東に向かって走る。展望ドライブイン・大川オアシスをお借りして撮影を始める。お遍路を中断し東京に帰ってしまった夫・三浦友和さんに失望し、妻の風吹ジュンさんがチョコパフェをやけ食いするシーンである。実際、昨日で三浦さんは撮り切っているから、ドラマと現実が不思議にリンクしている。


 昼食を挟んで、近くの海岸で戸田菜穂さんが東京から戻って一堂に再開するシーンを撮る。時折強く通り雨が来るものの、ご覧の様な青空である。森本レオさんが、あのお声で、空を見上げてこんな事をおっしゃった。「その土地の人って、その土地の雲の形に似ているような気がするんだよね」。


 ちょっとした雨待ちの合間に、カメラマンの清水さんの赤ちゃんの話題で盛り上がる。この二次ロケが始まって直ぐに、目出度く男の子が誕生したが、まだ会うことが出来ないでいる。初めてのお子さんだというから、さぞ会いたいだろう。


 順調に終えて、午後二時半、四国を横断する愛媛・宇和島への大移動が始まる。

 高速を一時間ほど走ると、空の色が変わり、フロントガラスに強い雨が当たり始める。いよいよ台風の方へ、近づいて行かなくてはならない。三時間半の大移動で、宇和島到着。


 夜は俳優部とスタッフが集まって、ささやかな会食。思えば今回のロケは移動の多い強行軍で、なかなかこういう機会が持てなかった。高知に行っていたら、夜遅い宿入りになり、この飲み会は無かった。台風のおかげといえばおかげである。最悪の状況も、前向きに考えれば悪いことばかりではない。自分の考え方、気持ちの持ち方一つで、うつむかず顔を上げて進んでいける。天気予報では、クランクアップの明日は九州に上陸、四国も大雨だという。原田芳雄さんの締めの言葉「明日は槍が降ろうが鉄砲が振ろうが撮りきって、打ち上げるぞ」。


 いよいよ大詰め、四十日に及ぶ四国ロケのフィナーレを迎える。


「旅の途中にて」〜愛媛・二次ロケ十四日目・クランクアップ

2006/8/18(土) プロデューサー・鈴木圭より


 土砂降りの中を朝六時出発。四十三番札所・明石寺に向かう。台風十号が九州に上陸し、今日は一日中こんな感じらしい。最後に来て、初めての試練。とにかく、俳優部もスタッフも、何があろうと撮り切る気合である。途中で天候が変わっても対応できるよう、各シーン、最初のカットから順撮りしていく。心配したほどの降りではなく、撮影は淡々と進んでいく。樹齢300年の見事なナギの木を前に、原田芳雄さんや女優陣は、待ち時間に落ちている葉っぱや実を拾っている。持ち歩くと縁起が良いらしい。


 昼食を挟んで、五十一番・石手寺へ。仲見世通りをお借りしてのロケ。下見に来た時は、かなり賑わっていたので心配していたが、台風の今日は流石に大丈夫。ここも順調に進む。どうやらフィニッシュが見えてきたと、どこかで安心したのがいけなかったのか、最後の試練とでもいうように、再び土砂降り模様になってきた。


 最後の現場、松山市太山寺近くのみかん畑の坂道に着いた時には、最高潮の降りとなった。その中で重い機材の運搬やレールの設営、カメラのレンズは曇るし、マイクはびしょ濡れ。最終便で俳優部を送り出さなければならないのに、収録は遅れ始める。足元はぬかるみ「なんだか地獄の黙示録みたいになってきたね」と森本レオさん。そこで原田芳雄さん演じる坂田のセリフが「くずくずしてると間に合わないぞ」というのだから、出来すぎである。


 そして、ギリギリ、四時を回った頃から、撮り切りの花束が渡され始める。まず原田芳雄さん、それから風吹ジュンさん「とっても中身の濃い旅でした。心の修行をさせて頂きました」。瀬川亮さんとベッキー。ベッキーは涙ぐんでいた。

 ハードスケジュールの中で東京と四国を何往復もし、移動の車中では細い体を横たえていた姿が忘れられない。戸田菜穂さん「八十八ヶ所を回ったような達成感があります」、鷲尾真知子さん「こんな嵐の日に最終日を迎えるなんて、忘れません、この作品を」森本レオさんは「六時起きは当たり前、早ければ四時半起き、台風まで参加させて、、、他のどんなドラマを忘れても、このドラマは忘れない」。

 皆さん、お疲れ様でした。また会いましょう。


 「この旅が終わる時、僕らに何が起きるだろう?」

 私の素直な感想は、やっと俳優の皆さんのこと、スタッフのこと、台本のこと、などなど、少しだけ分かり始めてきたのに、タイムアップ、という感じである。「何か起きたか」と自分に問うても、よくわからない。ただ別れ際、原田芳雄さんに掛けられた言葉が耳に残っている。「これから、大変だけど頑張って下さい」そうなのだ、ロケで番組の全てが終わった訳ではない。編集、音入れ、PR、そして放送と、やるべき仕事は山積みである。「この旅」はまだ道半ばである。


 走行距離5620キロ。地球をおよそ八分の一周、車とはいえシルクロードを越える道のりを、私たちのチームは進んできた。ここに書けないような色々な事もあったが、無事に終わりを迎えられたのは、見えない何かに導かれて、幸運に守られながら仕事が出来たからだと、思わざるをえない。地元スタッフ広瀬さんの口癖「弘法さまのおかげ」だと言われれば、素直にそう思う。このロケに関わって下さった全ての方に、この場をお借りして、お礼を申し上げます。皆さんの頑張りが無ければ、この結願はありませんでした。有難うございました。


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