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このドラマについて

脚本家のことば…矢島正雄(脚本家)

 かつてNHKには、「人間模様」という視聴者の心を揺さぶる名作ドラマ・シリーズがあった。私の勘違いだろうが、NHKの名作ドラマは、全て「人間模様」だったと記憶してしまうほど強烈なイメージを持っている。民放でも同じようなドラマ・シリーズがあったらいいなあ、といつも考え提案もしたのだが、まだ私も若く、そんな企画は仲々通らなかった。まず、企画意図が「人間模様」の一言に尽きるから説明に困るのである。「人間の心ってスゴイですよね、それを書きたいんですよ」ますます相手には通じない。テレビで書けないなら新しいメディアで書けないだろうか?そんなとき、知り合いの編集者が劇画のシナリオを書かないかといってきてくれた。「何んでも、書きたいもの書いていいよ」と、いってくれた。「人間模様」と即答した。劇画「人間交差点」は、そこからはじまり、10数年連載され、連載終了後20年近くになる今も売れ続けている不思議な劇画となった。テレビ・映画の映像世界にも何度か里帰りはしているものの、今回のように三回連続という形が可能になったのは、内海隆一郎先生の「翼ある船は」の素晴しい登場人物たちに参加していただけたからに他ならない。これまた不思議な「人間模様」が出来あがる予感がする。


制作にあたって…古川法一郎(制作統括)

 歳月は残酷なものです。〈老い〉や〈挫折〉〈変節〉という言葉がつきまといます。しかし一方では、人が生き続けていく限り、歳月は誰にも平等でもあります。〈忘却〉や〈郷愁〉、〈尽きぬ希望〉といったセンチメンタルな優しい言葉を思い出すことも出来ます。〈歳月の残酷さと優しさ〉が、このドラマ「新・人間交差点」のテーマなのだろうと思います。今から25年前、矢島正雄氏と弘兼憲史氏による劇画の傑作「人間交差点」がありました。また今回の企画立案の中で、歳月の重さを切実に問いかける内海隆一郎氏の小説「翼ある船は」に巡り会いました。二つの原作を組み合わせたパッチワークのような形になりましたが、これが我々が矢島正雄さんと共に試行錯誤を繰り返し、悶絶苦闘しながら作り上げた作品です。主演は仲代達矢さんとサトエリ(佐藤江梨子さん)にお願いすることが出来ました。お二人には、男女の差、世代の差、経歴の差を超えて、正面からぶつかり合っていただきました。音楽では大河ドラマ「利家とまつ」や「ハルとナツ・届かなかった手紙」の渡辺俊幸さんが、強力なサポートをしてくれました。いまNHKのドラマ番組にチャンネルを合わせていただく、目の肥えた高い年齢層の皆さんに、十分に満足していただけるドラマをお届けしたいと考えています。


演出にあたって…本木一博(演出)

 出雲は風の強いところです。過去に消し去りがたい傷をもつ主人公・由次は、その人生の大半を文字通りの暴風に晒されながら生きてきたのです。実際にロケにお邪魔した斐川町で「こういう風土に生きる人々はどんな性格になるのだろう?」と思い、「斐川町の人々ウォッチング」をしたところ、狭い農道で固まっている大人数のロケ隊のそばを通られるとき、どなたもきまって「すいません、お邪魔します」と、おっしゃいます。もちろん邪魔なのは我々撮影スタッフのほうです。《人は強風に晒され続けると優しく謙虚になる》というのが私の発見した法則であります。そろそろ自分も、そういう風に生きていったほうが良いんじゃないか?と反省しきりです。人の思いと思いが交差するとき、いつもいい結果が出るとは限りません。むしろ、思いは伝わらず、苦しみや悲しみに満ちた結果になる事のほうが多いのは、誰しもが知っています。それでも、かすかな一筋の希望のようなものを現代に提示したい、という思いから、このドラマの制作は始まりました。スタッフ・キャストの思いが、視聴者のどんな思いと交差するのか、ドキドキしつつ撮影しています。



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