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四十七士の中で、 唯一切腹を逃れ生き延びたと言われる寺坂吉右衛門。 このドラマでは、最後の最後に逃げ出し、 後ろ指を指されつつも、 残された浪士の家族のために生き抜く一人の男の姿を描く。 瀬尾孫左衛門との男の友情、 吉右衛門と篠との恋模様、 大石の遺児 ・ 可音(かね)の物語などを織り込んだ、 スケールの大きいヒューマンドラマであり、 そして本格娯楽時代劇。 赤穂浪士の討ち入りの後日談を描いた池宮彰一郎原作の小説をドラマ化。
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*脚本家のことば…ジェームス三木
 高度情報化社会は、人々の人間観を大きく変えた。人間は誰でも臆病であり、卑怯であり、誘惑に溺れ、悶々と劣等感に悩む。理想に燃え、正義感に満ち、非のうちどころのない人物など、この世のどこにもいない。そこにフタをして、相変わらず嘘っぱちな英雄や善人を描くから、テレビの時代劇は、視聴者に見放されてしまった。現代の主役は憧れの対象ではなく、我々と等身大の人物でなければならない。
  池宮彰一郎氏の描く大石内蔵助は、お家断絶となった赤穂家家臣に、再就職の方策を立てる。また、討ち入り後の義士の遺族に、経済的な援助をもくろむ。組織のトップとしては、まことに立派な態度である。一方では京の町娘を孕ませ、やがて生まれる子の行く末を、思い悩んだあげく、義士のひとりを逃亡させてまで、その面倒を見させている。いわば公私混同である。この内蔵助の二面性が『忠臣蔵』の様相を一変させ、我々の胸に深く迫ってくる。脚色しながら、久々に血が沸き立った。



*演出のことば…重光亨彦
 電車の中で化粧をする猿がいる。ケータイをみながら横断歩道を渡る猿がいる。人の気持ちの分らぬ猿が多すぎる。
人間はどこにいる。
  美しく生きる日本人はもういないのか。そんな寂しい気分の時にこの「最後の忠臣蔵」はピッタリです。
  かつて武士は自らに高い道徳律を課していた。疑いをかけられただけで腹を切る厳しさを持っていた。武士道である。その武士道が日本人を美しくしてきたのだ。大石内蔵助が生きることを命じた寺坂吉右衛門と瀬尾孫左衛門。この二人の生きざまを是非ご覧いただきたい。希望が湧いてきます。原作を読んで涙し、脚本を読んでまた涙、そしてそれを演出する、まさにディレクター冥利に尽きます。



企画にあたって…松前洋一(C.A.L)
 一九九二年に発表された池宮彰一郎さんの『四十七人の刺客』は、それまでの忠臣蔵を全く新しい角度から書き変えた傑作といわれています。そして、今回ドラマ化される『最後の忠臣蔵』は、吉良邸討ち入りの後、大石内蔵助の命により、ただ一人事件の生き証人として脱盟せざるを得なかった寺坂吉右衛門が主人公です。池宮忠臣蔵の完結編といえるでしょう。
*  したがって、この忠臣蔵は「討ち入り」シーンで終わるのではなく「討ち入り」シーンから始まります。脱盟者寺坂吉右衛門のその後の苛酷な運命への暗示的なスタートです。曲折を経て、このドラマの終章には池宮忠臣蔵の劇的なクライマックスが用意されています。内蔵助の最後の愛人・可留(かる)との間に生まれた娘・可音(かね)の涙の嫁入り話です。そして、ここに寺坂同様、内蔵助の命を受け、可音を十七年にわたって育てあげたもう一人の脱盟者、瀬尾孫左衛門が登場してきます。志を同じくしつつも世を蔭に生き延びざるを得なかった寺坂と瀬尾の再会ほどドラマチックな情景はないでしょう。
  このドラマ「最後の忠臣蔵」には、赤穂浪士は四十七人か四十六人かといった史的な論議や、人間の節義とは何かといった倫理の問題も隠されています。それはさておいて、最後は、寺坂吉右衛門と篠の世にも切なく哀しい恋模様に涙を流して見終っていただきたいと願っています。



制作統括のことば…大津山潮(NHKエンタープライズ21)
 この作品は、池宮彰一郎さんが忠臣蔵の「その後」を描いた、異色の作品です。討ち入りの「その後」をこれだけ長く書いたものは珍しいと思います。この物語の背景には、討ち入り後を先々まで考えた大石内蔵助の深慮遠謀があります。大石に命じられたとはいえ、生涯をかけ自分の生き方として貫いた寺坂吉右衛門と瀬尾孫左衛門、二人の男の生き方には感動を覚えざるを得ません。現代でこの二人の様に、純粋に生きることは難しいでしょう。
*  寺坂吉右衛門の生き様、そして瀬尾孫左衛門との男の友情。寺坂吉右衛門とともに赤穂浪士の遺族のために、幕府の権力者・柳沢吉保に権謀術数を持って挑む進藤源四郎、天川屋儀兵衛。そして不思議な縁(えにし)で結ばれた吉右衛門と篠のラブストーリー、さらにクライマックスを飾る大石と可留(かる)の遺児・可音(かね)の婚礼とドラマの見所は盛りだくさんです。豪華なキャストとあわせてお楽しみ下さい。


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