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スタッフから

原作・柴田よしきさんから…
  連作集『ふたたびの虹』は、私自身、とても思い入れの深い、大切な作品集です。雑誌掲載時から、一作一作、自分がカウンターの向こうから馴染みのお客さんに料理を作って出すような気持ちで、丁寧に心を込めて綴って来ました。ありふれているけれど親しみやすい素材、季節感、舌に優しい感触、それでいて歯応えはそこそこにあって、喉越しはさわやかに。そして、呑み込んでしまったあとで、じんわりと、お腹の中から暖まって来るような、そんな小説を目指して。それぞれの作品に登場する人々は、それぞれの人生の虹を探して、雨降りに耐え、いつか空が晴れることを信じて生きています。丸の内の片隅にある「ばんざい屋」は、そんな人々が雨宿りをしながら、よく降りますね、と挨拶を交わしあう、そんな場所なのだと思います。ドラマ化され、ひとりでも多くの人に、雨宿りのささやかな楽しみを感じていただけることが、何よりの喜びです。

 …しばた・よしき。1959年、東京生まれ。青山学院大学卒業。95年、『RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠―』で第15回横溝正史賞を受賞しデビュー。以後、ミステリーを中心に、恋愛小説、ホラー、伝奇、SFなど幅広く活躍、実力派の書き手として注目を集める。著書に、『猫と魚、あたしと恋』『観覧車』『水底の森』『ワーキングガール・ウォーズ』『夜夢』など多数。



脚本家・長川千佳子さんから
  一人で生きている女を描きたいと思った。それも若いうちに自ら「一人であること」を選び、覚悟を決めた人物だ。そういう人間の隣には声高に主張しない、ひんやりとした孤独が寄り添う。そんな主人公を描きたかった。料理屋を営む彼女は、他言し難い罪深い過去を背負ったせいで、名前も変え、家族も恋人も友人も持たずに生きている。辛さや寂しさを誰彼に語ることなく、弱さも甘えも見せることはなく、料理屋の仕事を誠実に続けている。そして他人の心の傷を癒そうと奔走する。自分には到底真似できない彼女の強さは、書いていて、とても頼もしかった。もっと強く、もっと冷静に―。
 しかしそのうち危うさを感じ出した。何かが張りつめた状態、それは壊れる一歩手前、脆さと同義ではないか…。彼女の人生を無惨に弾けさせたくはなかった。やはり人は一人では生きてはゆけない、いや、“生きてはイケナイ”のだ。このドラマに登場する他の誰の生き方を考えてもそう思う。時には人に素直に弱さを見せられる、それもまた、人が生きていく強さだ―書き終えた今、強く感じている。

 …おさがわ・ちかこ。1966年、大阪生まれ。NHK大阪のラジオ脚本懸賞入選をきっかけに脚本家デビュー。現在、テレビ、ラジオ、映画と幅広く活躍している。多様なジャンルの作品を手がけ、幅広い支持を得ている。主な作品に連続テレビ小説「甘辛しゃん」「駆け落ち」「乱歩R」「輝く湖にて」映画「晴れたらポップな僕らの生活」(今年公開予定)などがある



音楽:小六禮次郎
 …ころく・れいじろう。1949年、岡山県出身。東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、直ちに第一線の作曲家、編曲家としてデビュー。現在映画やCM音楽、ミュージカルと幅広く活躍中。東京音楽大学映画放送音楽コース客員教授として教鞭もとっている。NHKでは連続テレビ小説「天うらら」「さくら」大河ドラマ「秀吉」連続ドラマ「ちょっと待って、神様」などがある。
  主題歌:後藤真希
 …ごとう・まき。1985年東京生まれ。1999年8月、モーニング娘。に加入。2001年3月28日に「愛のバカやろう」で待望のソロデビューを果たし、堂々No.1に。そして、2002年9月、17歳の誕生日を迎えるに伴いモーニング娘。を卒業。松浦亜弥と藤本美貴の三人で“ごまっとう”を結成するなど、精力的に活動中。現在大河ドラマ「義経」にも出演。



制作にあたって…銭谷雅義(チーフ・プロデューサー)
 心に染み入る物語に寄り添う旬の料理とアンティークの器――もしも「ばんざい屋」が本当にあるのなら、仕事でくたくたに疲れた夜など、寄ってみたいと思いませんか。例えば女将の今日のお薦めは筍とハモの炊き合わせ――春の名残りの筍と夏の走りのハモが一瞬まみえる「出逢い物」で、さりげなく使われている器が、さまざまな人々の暮らしを眺めてきた古伊万里だったら、それだけで何か物語が始まりそうです。そう、「ばんざい屋」はいろいろな物語を呼び寄せる、なぜか懐かしい場所。優しく控えめな女将と目が合えば、誰でも自分の胸だけにしまってきた小さな物語を話し始めたくなるような…。でも実際のところ、そんなお店はなかなかみつかるものではありません。そんなときは、「七色のおばんざい」の常連が語るお話をじっと聞いてみて下さい。きっと彼らもあなたの物語に耳を傾けることでしょう。



演出にあたって…西谷真一(チーフ・ディレクター)
 子を持つ親なら思うことだが、宿命として離れられない「力」が親と子の間には存在する。どんなに離れようともがいても、親と子は神の力とでも言うような繊細だが強い力で繋がっている。主人公の吉永悦子は子を棄てた母である。もっとも罪深いことをしてその贖罪の意味を込めながら『ばんざい屋』を営んでいる。子に向けられない限りない愛を常連客に向けている。ややお節介ともいえるお客様心配症候群…。だが人情の薄い今の時代に女将の愛情に満ちた空間は都会のオアシスにもなっている。繋がりを断ち切ったつもりの女将に、親と子の宿命は「過去」の方から否応なく押し寄せてくる。私にはそれが「現実に明るく立ち向かって生きている」女将へのご褒美のように感じる。このドラマの演出にあたって、私は女将の健気な日々の営みを軽やかに描いていきたいと思っている。そして万人が背負っている過去の運命を少しでも明るい場所へ導いていけたらと思っている。


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