表紙 みどころ 登場人物 次回予告 よくある質問 掲示板
ドラマのみどころ


「無力の仏」…脚本家・宮村優子

 元八丁堀同心、森口慶次郎は無力だ。

 今シリーズも罪を犯した者の心の傷を、愛するお登世の孤独を、一つ家に住まう佐七の侘しさを、養子晃之助のこころの揺らぎを、嫁皐月の介護の疲弊を、慶次郎はなにひとつ救ってやることも、どうしてやることもできない。

*

 なのにこれほど「なにかを、もっとなにかを」と、世俗に分け入りその不思議に身を浸して、「生きる」という実感をつかみとろうとする人を、わたしは知らない。隠居してなお、これほど切って血の出る男を。

 昨年シリーズ2を書き終えたとき、次に挑む原作は「峠」しかないと覚悟を決めていた。おのれの無力に臆することなく、人間の闇と向き合う慶次郎に最強の敵をぶつけてみたかった。「生きるために、おのれを殺す」男の話を。

 初回冒頭、男の刃はまっすぐ慶次郎につきつけられる。「おまえが憎い」と叫ぶ男に、無力の仏慶次郎は果たして語りかけることばをもちうるか。

 絶望やあきらめ、憎しみの果てにすら生きる希望はある、という原作の力に、どんなときにも人が抱く、「生きたい」という根源的な生命への野望に、わたしたちが三年間作り上げてきた慶次郎は、どれほど迫ることができただろうか。




「豪華絢爛」…演出・吉村芳之

 おかけさまでシリーズ3作目となりました。今回始めるに当たって、曜日も時間帯も変わったのだからそれなりに路線変更しなければいけないのではないか、という議論がありました。一言で言えば、もう少し明るく穏やかにということです。なにしろ、1作目は主人公の娘の自害で始まり、2作目はその加害者の再登場で始まるというシリーズでしたから。

*

 でも、レギュラーの登場人物たちはすでに我々のコントロールを離れ、それぞれのキャラクターをしっかり生きてしまっていたのです。そしてそれを尊重する限り、3作目は前の2作に比べてよりハードにより深化せざるを得ないという事態になりました。だからあえて申し上げます。見終わった後、ドーンと腹にこたえる滑り出しとなりました。勿論、笑いあり涙ありとバラエティーに富んだ話が続きます。

 このシリーズの主調音は人の命の暗闇であり心の淵の果てしなさです。それを抱えて生きていくことの切なさです。七転八倒する登場人物たちの姿、投げ交わされる言葉、切り結ぶ視線はまさに豪華絢爛としか形容のしようがありません。もちろん俳優陣もレギュラーの皆さん、新たに同じリングに上がって下さったゲストの皆さん共に文字通りの豪華絢爛さです。演出家としては、これこそがプログラムピクチャーの理想的なあり様なんだと思います。




「贅沢な歳月を、どうぞ。」…制作統括・菅野高至

 この五月、作曲家の川崎真弘さんが亡くなりました。人間を細やかに深く描くこのドラマに、もし川崎さんの音楽が無かりせば、かくも皆さまに愛されてパート2から3へとつながらなかったと思うのです。時に激しく強く、時にあたたかく優しく、そして何より、あの透明感あふるる命への祈り、神への祈りにも似たあの音楽無くしては、と思うのです。川崎さん、ありがとうございました、ご冥福を、お祈りいたします。

 パート1の時に、このドラマは「人々が人生の相方、パートナーを探す物語です」と申し上げました。パート2から3へ、このテーマは変わりません。登場人物たちそれぞれが、人と人との繋がりの中に生かされている、そう感じて物語を生き続けます。

*

 今回、脚本づくりの当初、脚本家の宮村優子さんが「果たして、人は人を本当に救えるのだろうか?」というテーマを立てました。その答えは、ご覧になって頂ければ分かるのですが……「人は、人と人の繋がりの中で救われる」……です。パート3も各回、実り豊かな素敵な宮村脚本となっております。

 そして、三年の歳月が流れました。高橋英樹さんはより隠居らしく、石橋蓮司さんはより飯炊きらしく、お二人の掛け合いはまさに"名人芸"であります。蝮を楽しんで演じきる奥田瑛二さんは、高岡早紀さん(第4回)と石田えりさん(第8回)とそれぞれ愛の競演です。妻となり母となった安達祐実さん、(第7回を除き)各回出番が短うございます、どうぞ、皐月の美しさとお芝居をお見逃し無きよう。比留間由哲さん、晃之助と「可愛い女」(第5回)のラブシーンがあります。遠藤憲一さん、辰吉も深化しましたが、お芝居、円熟味を増しました。かたせ梨乃さん、ますます艶やかなお登世が、恋する女(第2回)と母たる女将(第9回)を演じ分けます。

 そして、仏の慶次郎が人を救えるだろうかと悩む"パート3最強の敵"は、新鋭のパク ソヒさんと異才 塚本晋也さんのお二人。第1回「峠」の完結編が、最終回「峠の果て」になっております。

 原作小説を読み直すたびに、作家の北原亞以子さんが描く人間に感動し、物語の奥行きの深さに感謝する思いが新たになるのです。

 三年の歳月を重ねて、パート3はいっそう熟成して、それはそれは贅沢なドラマとなっております、どうぞ、ご堪能下さいませ。



表紙 | みどころ | 登場人物 | 次回予告 | よくある質問 | 掲示板

お問い合わせは お問い合わせフォーム から。すべてのメールにお返事出来ない場合がございます。

ドラマの再放送情報・最新情報は NHKドラマホームページ へどうぞ。

Copyright (c) NHK(Japan Broadcasting Corporation) All Rights Reserved.