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ドラマのみどころ
五十三歳の初夏、桑山又左衛門(佐藤浩市)はふと老いを感じて、若き日をふり返る――。まだ部屋住でその名を上村隼太(福士誠治)と言った。五人の若者は、一千石の名家の跡取り一人を除いて、みな貧しい下士の次三男だった。如何に条件の良い「婿入り先」に出会うかが関心のまとである――。


脚本家のことば…竹山洋

 面白いか、面白くないか、それが問題だ――と思い続けてきた。

 シナリオはそれが一番のことだと信じていたが、今回の『風の果て』は、そのことを放下することにした。

 面白いことより大切なこと。それがあるのではないか、と、原作を読み考えた。

 それはなんだと問われると明確な言葉が出ないが、あえて言うと、人間の骨の奥にある、誠心――という言葉かもしれない。誠のようなもの、信義のような、大きな愛のようなもの、そのことを書いてみようと必死にやった。

 「風の果て、尚(なお)、足(たる)を知らず」

 足るを知れば、こんなに苦労することはなかったろう。しかし、この作品の間、私は幸福だった。作家として初めてのことだった。プロデューサーと監督に深く感謝した。そのことも初めてのことだった。




作曲家のことば…岩代太郎

 誰もが心の中に自分だけのヒーローやヒロインを抱き続けている、のではないでしょうか。十代の多感な頃から、いつの間にか座右の銘として愛読していた藤沢周平作品の数々が、文字通りボクだけのヒーローやヒロインとの出会いをもたらしてくれたのです。

 青江又八郎、牧文四郎、片桐宗蔵、三村新之丞らに憧れ、加世に想いを寄せ、佐知に恋する。

 そんな青春時代を過ごしたボクにとって、藤沢周平作品を原作とする映画やテレビ・ドラマの仕事へ特別な思い入れを持って作曲に没頭するのは人生至福の時であると申し上げても、決して過言ではございません。無論、本作「風の果て」への参加を正式に依頼された際にも思わず胸が熱くなる想いでした。一昨年に手がけた映画「蝉しぐれ」に引き続き二作目となった藤沢周平原作の本件は、作曲家としての人生を振り返る上でも、まさしく記念すべき仕事(作品)となりました。改めまして、この作品にスタッフの一員として参加できたことを心から光栄に存じます。




演出のことば『石屋根の果てに――』…吉村芳之

 「藤沢周平原作のドラマを撮る」と話すと「それは楽しみだ」と言う人もいれば、正直言って「また?」と言う人もいる。それほど人気があり、それほどたくさん作られて来たということだが、現場の人間としては他の作品とは違う何か新しいことをと思うものである。そしてその新しいことは原作の世界をより深めるものでなければならない。

 山形の庄内地方に行って驚いたのが石屋根である。強風対策とも防火対策とも聞いたが、「頭上に累々たる石の連なりをいただく人々の物語」という解釈にこだわろうというのが現場の人間の思いとなった。月山をモデルにした大櫛山も巨大な石の塊である。

 が、この作品の一番の特徴は佐藤浩市氏をはじめとする出演者の面々の豪華さと充実ぶりである。全スタッフが幸せな時間を過ごさせて頂いた。その幸せを視聴者の皆さんにも早く味わって頂きたい。




制作の言葉『新たなエピローグを、どうぞ』…菅野高至

 ある日ふと怖ろしい(?)ことに気付いたのです。脚本、演出、私、三人が同い年の1946年生まれでした。いつも何か余っている感じの団塊世代、その端くれです。

 かつて脚本の竹山さんと「清左衛門 残日録」(藤沢周平原作、仲代達矢主演、93年4月〜放送)でご一緒しました。二人とも<隠居>には遠く、理想形でしか<老い>を描けなかったのですが、それが逆にお客さまにお気に召して頂いた理由となりました。

 今回、三人が揃うと一頻り、躰のパーツが故障した話になります。そろそろ<人生の始末>も気になり始めています。勿論、その遠近感は三人個々に違うのですが、その違いをも含めて登場人物に託して、「もう一つの『清左衛門 残日録』を描きたい」、そう思ったのです。こうして原作の終章に、二年後の<新たなエピローグ>が加わったのです。

 この企みに、それはそれは素晴らしい俳優の皆さんに集まって頂きました。佐藤浩市さん主演は私の夢でした。仇役のお二人、遠藤憲一さん、仲村トオルさん、熱い熱い芝居です。藤沢作品の女性は一種独特、涼風真世さん、平淑恵さん、石田えりさん、皆さんがパーフェクトです。蟹江敬三さんならではの孫助です。そして福士誠治さん、高岡蒼甫さん、パワーあふれる若者たちの、絶妙な青春ドラマも楽しみな仕上がりとなりました。

 作曲家の岩代さんの玉手箱から、ジャズボーカルのケイコ・リーさん、バンドネオンの小松亮太さん、バイオリンの宮本笑里さんが加わって、素敵な音楽が響きます。

 あの世の藤沢周平さんにも楽しんで頂く……、折々そう念じて作品を作りました。どうぞ、ご期待下さい。




【原作】藤沢周平
【脚本】竹山洋
【音楽】岩代太郎
【テーマ曲】「天に捧ぐ」 演奏:ケイコ・リー小松亮太宮本笑里
【収録】平成19年5月〜7月緑山スタジオ および 茨城県ほか近郊ロケ
【スタッフ】演出:吉村芳之(NHKエンタープライズ)、大関正隆(同)
制作統括:菅野高至(NHKエンタープライズ)
安原裕人(NHKドラマ番組)
共同制作:NHKエンタープライズ



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