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このドラマについて

今や世界各国の料理を楽しむことができる日本、この現代日本の豊かな食文化の礎を築いた
一人が、昨年亡くなった帝国ホテルの元総料理長・村上信夫氏。
村上氏は、昭和14年に入社し、戦争体験を経て昭和29年にパリ留学、その後バイキングの導入、
NHK「きょうの料理」の講師、東京オリンピックの選手村食堂の料理長と、
フランス料理を紹介するにとどまらず日本人の食卓に定着させることに、その料理人人生を捧げた。
この昭和史と重なる波乱万丈の村上氏の半生をモデルにして、現代のホテルのコックとその恋人の人生の
1コマに照射しながら、数々のフランス料理とともにダイナミックに描く。



土曜のディナーは、“本日のスペシャル”…佐藤陽(原作者)

 昨年8月に急逝した、帝国ホテル元総料理長・村上信夫さんは、どこを切り取っても“面白い”方でした。『人生はフルコース』は、そんな最良のネタ(材料)があったればこそ、書けた本です。

 両親の死を機に、小学校の卒業も待たずに飛び込んだ徒弟制度のコックの世界、軍隊、シベリア抑留、東京オリンピック、帝国ホテル総料理長就任…まさに山あり谷ありの人生を、努力と機転と笑顔で乗り切って生きた村上さんには、たくさんの引き出しがあり、お話は、日替わりメニューで千夜一夜でも続けられそうでした。

 今回テレビドラマ化された『人生はフルコース』は三夜。土曜のディナーにふさわしい、スペシャルメニューが用意されているのだと思います。天国の村上ムッシュもきっと、指でOKサインを作る、あのお得意のポーズでにっこり笑って観てくださることでしょう。




人とつながる料理、人をつなげる生き方…藤本有紀(脚本家)

 なんとも登場人物の多いドラマになりました。村上信夫さんという人をモデルに物語を紡ぐということは、つまりそういうことになるのです。

 このドラマでは、年齢の違う、住んでいる場所の違う、生きている時代の違う人々が交錯し、つながり、それぞれの幸せを見つけます――「ムッシュ」というただひとりを介在して。

 ムッシュがその84年の人生でしてきたことは「料理」、そのひとことに尽きます。戦場で、パリで、テレビで、オリンピック会場で、ムッシュは常に料理を追求し続けました。

 何かを追求することは自分を見つめることであり、自分を掘り下げること。そしてそれは自分と人とがつながっていくことであり、やがて人と人とをつなげること。料理に人生を捧げたムッシュの生き様を描くことで、そんなメッセージが伝わればと思っています。

 そして、このドラマが生まれたことで多くの方々に新たなつながりが生まれてくれればうれしいです。




演出にあたって…赤羽博

「ヤア、牧村ムッシュ!」

『アッ!!これは村上ムッシュ!』

「お待たせしました」

『どうでしたか?私の包丁さばき、村上ムッシュの包丁をお借りして調理したものですから緊張してしまいました』

「とても上手でしたよ」

『ありがとうございます。村上ムッシュにそう言われますと、とっても光栄です』

「イエイエ、本当にお上手でしたよ。ベリー・グッドです」

『フランス語の方はいかがでしょうか?』

「私の方が少し上手かなア(笑い)」

『参ったなア、二週間でマスターしなければならなかったものですから。イヤァ、フランス語は大変だ』

「でも柔道の方は仲々でしたよ」

『イヤ、あれもあの時腰を痛めていて。アッ・・・いけない。言い訳はいけませんネ。村上ムッシュが一番嫌いなこ とでした』

「イエイエ。ところで牧村ムッシュ、あなたも私と同様、波乱万丈の人生でしたネ」

『そうですね。私も早くに両親をなくし、一人で生きてきましたから』

「大変でしたね」

『でも、フランス料理に出会えて幸福でした。それにいろんな人に出会い、そして助けて頂きました。ありがたく 思っています。人生は誰に出会えたかで決まりますね』

「そうですネ。ただそれに気付く人と気付かない人がいます。あなたの場合、それに気付く感性をお持ちになっ ていた」

『村上ムッシュに比べたら、まだまだ・・・』

「人生、一番辛く苦しい時、生まれてきた意味、その答えが浮かび上がってくるものです」

『そうですネ。その通りです。私はフランス料理のシェフとして生きてこられた事、本当に感謝しています。それと 幾度もお客様の笑顔に救われました。おいしい料理と食べている人の笑顔は素敵ですネ』

「そうですネ。笑顔が一番です」

『それでは私達も笑顔になるよう参りましょうか?』

「参りましょう、参りましょう。天鴎ホテルへ・・・・」




プロデユーサーのことば…横山千賀(東阪企画)

 私の父は西洋料理の料理人でした。

 子供のころからたまねぎを刻む音や、ハンバーグを焼く音、デミグラスソースやカレーの香りの中で生活していた自分が、「人生はフルコース」という原作に出会い、村上信夫氏の存在を知ることで、父の生きてきた道を再確認できたことに心から感謝しています。

 この作品は、戦前・戦中・戦後と、激動の時代をフランス料理と共に歩み抜いた帝国ホテルの故・村上信夫氏の波乱万丈の生涯をベースに、現代の若者の悩みや葛藤とからめ合わせたエンターテインメントドラマです。ふんだんに盛り込まれた数々のフランス料理と豪華キャストとともに、どうぞ存分にお楽しみください。




制作にあたって…安原裕人(NHKエンタープライズ)

 最近、「額に汗して働く人が報われるような世の中」というような表現が使われています。「勉強していますか」が晩年まで口癖だった村上信夫さんは、文字通り身を惜しまず労を厭わず、料理の世界に全身全霊を傾けました。懸命に打ち込むことによって道が開けていくプロセスには、清々しいまっとうさを感じます。

 こうして、フランス料理の、まさに伝道師だったムッシュは、日本のあちらこちらに、おいしいものを作ること食べることの喜びと楽しみの種を蒔きました。その種はやがていろんなところで花を開き、ムッシュが直接知らない人にまで幸せの輪が広がっていったことを思うとき、それはテレビドラマの世界に携わるものにとって羨望の人生です。

 このドラマにムッシュの持つ幸せの連鎖力が宿って、見ていただいた方においしい料理を楽しむような時間が訪れることを願っています。



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