スタッフブログ

神戸先生に聞いてみよう⑧〜卒業〜

みなさん、ご卒業おめでとうございます。
私たちも、倫理を受講していた生徒たちと一緒に、ドラマ「ここは今から倫理です。」を卒業です。

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今日の対話の授業では、それぞれの生徒たちが学んだことや経験したことを持ち寄って、
いち子のために知恵を絞って考えていました。
生徒たちがこれまで抱えていた問題は、本当はどれもすっきりとは解決していないはずです。
それでも、自分の問題を引き受けながら、考えることができるようになっていました。
皆の少し成長した姿や言葉が、まぶしかったですね。

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これからもあの生徒たちは、たくさんの理不尽なことや、ままならない問題に直面するでしょう。
これまで以上につらいこともあるかもしれません。
けれど彼らは、これで選択倫理のクラスとはお別れをしても、高柳がいなくても、
自分で考えて、ときに一緒に考えてくれる誰かを見つけて、強く生きていくことができるように感じます。

それは、生徒たちと一緒に学び考えてきた、私たちも同じです。

世界には、人生には、たくさんの問題があります。
考えたからって、答えが見つかるとは限りません。一つ解決しても次々に問題が生まれてきます。
先行きの見えないまま、ただ苦しい思いで闇の中に踏みとどまらなければならないこともあります。
でも、絶望的な思いになったときに心の中に浮かぶ言葉は、「問い」の形をしています。
「どうしてこんなことに…」「これからどうしたらいいんだろう…」
そこに問いがあるなら、私たちは考え続けることができます。
誰かと一緒に、どうして、どうしたら、と嘆いたり怒ったりしながら、
おろおろとよろめきながらでも、前に進むことができます。

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語り合ったからって、いつも仲間になれるとは限りません。
100%誰かとわかり合うことはありえませんし、人と関われば傷つけ合うことも多くなります。
それでも私たちは、わからないままでも、ひとりぼっちのままでも、共に生きていくことができます。
孤独なままで温め合うことも、弱いままで助け合うこともできます。
違っているからこそ、一緒に考えると、一人で考えるよりも広く豊かに考えることができます。

最後の授業で高柳が贈ったのは、フランスの哲学者パスカルの『パンセ』の中の言葉でした。
少し長い一節ですが、印象的な言葉なので引用します。意味はぜひご自身で考えてみてください。


人間はひとくきの葦にすぎない。自然のなかで最も弱いものである。
だが、それは考える葦である。

彼をおしつぶすために、宇宙全体が武装するには及ばない。
蒸気や一滴の水でも彼を殺すのに十分である。
だが、たとい宇宙が彼をおしつぶしても、人間は彼を殺すものより尊いだろう。
なぜなら、彼は自分が死ぬことと、宇宙の自分に対する優勢とを知っているからである。
宇宙は何も知らない。

だからわれわれの尊厳のすべては、考えることのなかにある。
われわれはそこから立ち上がらなければならないのであって、
われわれが満たすことのできない空間や時間からではない。
だから、よく考えることを努めよう。
ここに道徳の原理がある。


これからは、あなたの生きている「ここ」が、「今」が、倫理の教室です。
つらくてどうしていいかわからなくなったときは、「ここは今から倫理です。」と呟いてみてください。
答えが見つからなくても、自分で考えてみる勇気が湧いてきます。
高柳はいなくても、倫理のクラスメイトのように一緒に考えてくれる誰かは、きっと見つかります。

卒業だからって、あなたの未来は希望に溢れているとは言いません。希望を持てとも言いません。
きっと、絶望する日も、逆境に心が折れそうになる日も、たくさんあるでしょう。
けれどそれでも、本当は、いつももう既に、そこに希望はあります。

私たちは、考え続けることができる。

ご卒業おめでとうございます。


高校倫理考証 神戸和佳子(ごうど・わかこ)
哲学・倫理教師。中学校・高等学校・大学等の非常勤講師として、哲学的な対話の手法を用いた授業を行っている。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。共著書に『子どもの哲学−−考えることをはじめた君へ』(毎日新聞出版、2015年)など。


よるドラ「ここは今から倫理です。」

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ミニ番組「ここはぺこぱと倫理です。」

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投稿者:スタッフ | 投稿時間:00:00 | カテゴリ:ここは今から倫理です。

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