スタッフブログ

★こちらのページは2022年2月で更新を終了いたしました。

【あとかたの街】主演・木村多江×原作者・おざわゆき対談~12歳の少女が見た戦争~

 01_og_R.jpg

BSプレミアム8月14日(金)放送「ドラマ×マンガ あとかたの街 ~12歳の少女が見た戦争~」は、1人の女性マンガ家が、当時12歳だった母親の戦争体験を作品として完成させるまでの日々を描いた番組です。主人公のモデルは、日本漫画家協会賞コミック部門大賞を受賞した『あとかたの街』の著者・おざわゆきさん。そのマンガ『あとかたの街』を随所に織り交ぜながら進行する新感覚のドラマです。
昨年の夏放送された「お父さんと私の”シベリア抑留”」に続き、再びタッグを組んだ主演・木村多江さんと原作者・おざわゆきさんにお話を聞きました。


 

父と母 それぞれの戦争体験

おざわゆき(以下、おざわ)    父の体験を基にした『凍りの掌』(『お父さんと私の”シベリア抑留”』の原作)は、時間の流れにしたがって、何月に何があったかを聞く感じ。母の『あとかたの街』は、印象に残ったところを話してもらってから、聞きたいところを埋めていくという感じ。父の方は記録という印象が強くて、母は思い出とか、子供の頃の記憶をたどるという感じでした。
 母の話を聞いていた時に、日常っていうものをすごく感じたんです。名古屋に暮らしていた少女が、普通の生活から戦争に入っていくというところを描きたくて。その前の年からあったことを全部調べて、時系列に並べて描きました。

02_R.jpg(おざわの母・あい役は吉行和子さん)

木村多江(以下、木村) 「お父さんと私の”シベリア抑留”」の時は、教科書では語られていない、私たちが知らないことが、痛みとして私の中に入ってきました。「あとかたの街」は、あいちゃんのような気持ちになったり、花ちゃんのような気持ちになったり、洋三くんの気持ちになったり、それを見守っている近所の隣組のおばちゃんの気持ちになってみたり。(戦況が)切羽詰まってくることによって、身近な子が、周りの人が大変な目に遭っているという感覚になってくる。とても普遍的な感情として私の中で湧き上がってきて、泣かずにはいられず、号泣しました。

おざわ 普遍的と言ってもらえると、原作で描いたところをくんでくださっている感じがして、すごく嬉しいです。私は、戦争は日常とそんなにかけ離れたものではなく、今に繋がる話だと思っているんです。

03_R.jpg(担当編集者・佐藤役は桐山漣さん)

木村 私のこれから生きていく道に、戦争もあるかもしれないという、すごく近い感じがしました。特にコロナでいろんなことがあって、先がどうなるかわからない。今まであった日常がなくなるという経験をすると、戦争も視野に入ってくる感じがありました。自分のことに置き換えて、恐怖も感じました。

おざわ 今まさに、みなさん、自分の生活と関係ないと思っていたものの渦中に入ってしまうという経験をされていると思います。『あとかたの街』を描いていた時に、普通に生活を送っていても、抗いようのない状況に追い込まれてしまうっていうことって、実際にあるんだなって思ったんです。その”感覚”を、作品に描きたかったんですね。周りからどんどん戦争が近づいてきて、自分の生活の中に入ってくるというのは、どういう感じなのかを、感じてもらえたらと思います。

 

日常に戦争が入り込んでくるということ

木村  あいの好きな人に目の前で焼夷弾が刺さった絵が衝撃で。読者として、あいが恋愛してるのをすごく身近に感じて、温かく見守って読んでいただけに、それが消える、その絵が衝撃で。「あ、こういうことなんだ」と。生活に入り込んできて、本当に身近な人が目の前で死んでいくという普遍的な感覚みたいなものが、うわぁってきて。

それから「雨の音のような焼夷弾の音」という場面。演じている時に、お母さん(吉行和子さん)が「この音だよ」と言った時に、マンガで読んだことが、またさらに私の中に入ってきて。お母さんは雨の降る度に、焼夷弾が降ってきたことを思い出していたかもしれないと、そういう痛みに繋がっていった気がしました。

04_R.jpg

 

おざわ 戦争について一番わからないのって、匂い、熱さ、寒さ、音。そういう感覚を伝える事が、戦争を身近に感じるには一番大事だなと思ったんです。
 空襲で「炎が走る」というところの切実さ、パニックってどういうものか考えました。街が燃えていても、消す手段がない状況って、現代ではほとんどない。でも、空襲は「燃えるがまま」になっている状態のところを逃げないといけない。ものすごく熱いし、煙が蔓延しちゃってすごく苦しい。これを五感で訴える、というところを一生懸命想像しながら描きました。視覚以外の感覚も感じてもらうことで、戦争ってどういうものかを知ってもらえる作品になったかなと思います。

木村 まるで自分もその中にいるような感覚。平面なのに、ものすごく立体的に、自分に襲いかかって来る感じがしました。

 

「ドラマ×マンガ あとかたの街 12歳の少女が見た戦争~」で伝えたいことは?

木村 私は、マンガ『あとかたの街』を読んで自分が五感で感じたこと。恐怖とか、普遍的な感情とか、息ができなくなる感覚、胸が苦しくなる感覚っていうのが、そのまま観てくださる方に伝わるのが一番いいかな。私はおざわ先生の役ですけど、お母さんの経験を段々感じていく役なので、観てくださる方もだんだん入り込んでいって、戦争というものを身近に感じていただけたらいいんじゃないかなと、思いました。

おざわ 名古屋空襲というものを、『あとかたの街』を描くまで知らなかったんです。マンガを描いて、自分の地元がこんな風になっていて、私が生まれた頃は街も作り直されて綺麗になっていて、「戦争」を感じさせない街づくりを名古屋の人たちがしていたんだと思ったんです。
 でも、母の話を聞いて、取材の時に街を歩くと、「あ、確かにここに母が住んでいた街があったんだな」ということが感じられて。新しい街があるけれど、かつて名古屋でこういうことがあって、そこに住んでいた人たちは普通に暮らして、日々頑張っていたんだよ、ということを感じてもらえたら嬉しいなと思います。

05_R.jpg


 

ドラマ×マンガ
あとかたの街 12歳の少女が見た戦争~

【放送予定】
2020814日(金)
よる959分から1058分 <BSプレミアム>

【あらすじ】

マンガ家のおざわゆき(木村多江)は、50歳を目前にして初の連載マンガを手がけることになった。テーマは、当時12歳の少女だった母の戦争体験。さっそく、編集者の佐藤(桐山漣)とともに、名古屋に住む母・あい(吉行和子)を訪ねて取材を始める。あいが語り出したのは、まさかの“恋バナ”。戦時中とは言っても、恋愛があり、家族のだんらんもあったことに、ゆきと佐藤は驚く。しかしそうした“当たり前の暮らし”は、空襲によって一変する。親友も好きな男子も命を落とした。その記憶を母にどこまで聞いていいのか悩むゆき。意を決して名古屋に向かう。そこで語られる現実は想像以上の過酷さだった。火の海と化した街・・・。だが、あいは、家族とともに必死に生き抜いていた。

【原案・漫画提供】
おざわゆき(「あとかたの街」)

【脚本】
政池洋佑

【出演】
木村多江 桐山漣 吉行和子 ほか

【演出】
小山靖史・伊東亜由美(NHKエンタープライズ)

【プロデューサー】
平体雄二(スタジオブルー)

【制作統括】
嘉悦登(NHK) 小山靖史(NHKエンタープライズ)

 

投稿者:スタッフ | 投稿時間:17:55 | カテゴリ:あとかたの街 ~12歳の少女が見た戦争~

月別から選ぶ

2022年

開く

2021年

開く

2020年

開く

2019年

開く

2018年

開く

2017年

開く

2016年

開く

2015年

開く

2014年

開く