スタッフブログ

ドラマ10「これは経費で落ちません!」その15 音楽の安田さんに色々聞いてみました!

こんばんは!スタッフTです!

本日いよいよ最終回!

ということでこの番組を象徴する数多くの素晴らしい劇伴奏曲を作って頂きました安田寿之さんにインタビューしてきました!

Yasuda__083-1.jpg

(ペトラ嬢。たまに邪魔しに来ます。)

 

・オファー受けたときの感想は?

毎クール話題のドラマ10、嬉しかったです。コメディ的な方向に関して、1960年代前後のイタリア映画のサントラなども大好きで大きな影響を受けてきましたし、桑原茂一さんのお仕事に携わったりもしてきましたので、これまで蓄積した全てを出そうと意気込んで臨みました。

 

・どんな風に曲作りされたか?

ご依頼を客観的に考え、少し変わったファニーさと上品さもある楽曲をベースに、電子音とほのぼのした素朴さや優しさが入ればいいバランスの音楽になるのでは、と想定していました。

 

が、テーマ曲に関しての中島悟監督やサウンドデザインの石井和之さんからのオーダーは、「クールなかっこよさ」という予想外のものでした。制作開始時点で手元にあった資料を読んでもそのニュアンスが掴めず、思い浮かべていた路線と混合して作ってみましたが、案の定NGとなりました(その曲は、BGMとして「Swing Back Even」というタイトルになり日の目を見ています)。石井さんからは「ミスマッチが面白い化学反応を起こすはず」とのご助言をいただき、改めて沙名子の社内での存在を深く思い描き、2曲提案しそのうちの1曲が晴れて「New Adventure」というテーマ曲になりました。英語による歌詞とヴォーカルは、ケニアのナイロビ出身で信頼するSwinkyちゃんにお願いし、一言で言うと洋楽っぽい、大人っぽさもある爽快な曲になりました。

 

ドラマ音楽の仕事は、サウンドデザイナーとのキャッチボールで作っていく独特の進め方なのですが、どういう音楽がどれ位必要かという音楽メニュー表を石井さんからいただくまでは、脚本を読み、当初想定していた方向で個性的なものから素朴なものまで種々制作していました。BGMに関しては、その内容で間違いありませんでした。

 

音楽メニュー表をいただいてからは、不足していた、事件などの場面向けのサスペンス系の曲を軽いものから重いものまで、さらに個性的なキャラクターの人物(希梨香や麻吹美華など)のテーマ曲など、作曲としては20曲程書きました。

 

曲の厚み(楽器の量)に関しては、石井さんが場面に応じて抜き差しされるので、最初から薄く(楽器の量を少なく)することは考えず、思い切って編曲していました。しかし、テンポ感や雰囲気は厚みでは変わらないので、穏やかでシンプルなアコースティックアレンジできるものは(BGMとしては使いやすいだろうと)改編し、30曲強の制作曲数になりました。

 

・ドラマのイメージをどのように膨らませていったか?(登場人物のキャラクターなど意識したところは? )

やはり脚本を読み込むことと、配役が決まっている役者さんは具体的な容姿や演技を思い描くことで、イメージしていきました。途中セットの写真もいただきましたが、色合いやポップさの加減も参考になりました。

 

テーマ曲は、メインヴァージョン以外に、沙名子が経験する様々な心情(恋心、苦悩、葛藤など)も想定しヴァリエーションを作りました。3ヶ月程の制作期間中、毎日多部未華子さんのことを考えていましたので、すごくよく知っているような錯覚を起こしています。

 

希梨香テーマ曲=トラブルメーカーで「かきまわす感じ」というオーダーがあり、松井愛莉さんに当て書きしましたが、ピュアな笑顔の印象が邪魔しました(笑)。どうしても性悪なものにはならず、おてんばなラグタイム曲になりました。話が進むと、希梨香は一生懸命に仕事をしてみんなに好かれるキャラに変わってきて、ほっこり嬉しかったです。

 

後半経理部に旋風をもたらす麻吹美華にも、テーマ曲があります。威圧感あり、とのことで、ワルキューレ(ワグナー)やダースベーダーのような大げさな曲を書きましたがNGが出て、エキゾ的なメロディとアシッドベースが入った暑苦しいサーフロックになりました。「出た〜」という異質なインパクトの登場感が必要だった彼女も、次第に経理部に溶け込み問題解決に力を合わせるようになります。

 

沙名子、希梨香、麻吹美華(彼女はやはりフルネームですね)に代表されるように、「マイ・ウェイ」だった気質が人との関わりによって、決して今すぐ激変するわけではないけど変わる方向付けがされる、ということが今作の主題の一つだと捉えていまして、それを音楽でも内包できればと取り組みました。

 

・曲作りのキーになった楽器や音楽ジャンルは?

全体的な雰囲気として、「色々あるけど、まあいいか」と思えるような、優しい諦めのような空気感がほしいと思いました。(うまく諦めることができれば、世の中のほとんどの事件は起こらなかったのに、と思ったりもします。)

 

ジャンルで言うと、ラグタイムや1920年代頃のジャズは、イージーリスニングですが鋭い客観性を持った音楽で、両面性が合いそうで今回下敷きにしています。曲によっては少し違ったアプローチが必要で、影響を受けてきたPiero PiccioniやNino RotaやMocky、最近の映画音楽ではAlexandre Desplat「The Shape of Water」や細野晴臣「万引き家族」などにもインスパイアされた部分もあると思います。

 

それらを、僕自身の特徴である打ち込みと生ピアノを融合させたものが主なBGMになっています。生ピアノをなぜ使ったかと言うと、視聴者との橋渡しに馴染みの音色が必要だからです。元来何の音かわからないシンセティックな音は大好きなのですが、そういう音色を使った音楽だと独立性が高くて、今回の物語を補助し立ち上げる役目にはならないように思います。また、多彩な曲同士を繋ぎまとめる共通項としても作用させています。

 

・工夫したところ、苦心したところ、注目してほしいところは?

そのようにピアノを多用し、ストリングスやブラスなども用い、自分ではかなりオーセンティックな音色でアレンジしたつもりでしたが、「劇伴ぽくない」というご感想もいただきます。まあ、ロボ声で経理用語をひたすら歌っている曲や、凝ったグラニュラー音響処理をした曲などもあり、おっしゃる通りかもしれません。

 

少し専門的な制作プロセスの話ですが、劇伴の場合、作編曲、録音した後の仕上げ(ミキシング)の作業はエンジニアが行うことが一般的なようです。僕の曲は楽器構成もハイブリッドかつ特殊で意図を説明する時間が必要になるため、普段からそこも自分で行っています。今回ハードになることはわかっていましたが、いずれにしても時間が必要ならば、といつも通りワンストップで行いました。作曲と編曲とミキシングを、脳の別の部分を使いながら同時進行していたので、もう寝ようと思っているのに、もしくは、起きたてで朦朧としている中、次の曲想が出てきて急いでメモする、というようなことも多かったです。エンジニアの仕上げには間違いのなさという利点がある一方、音楽家自身が行うミックスには衝動や迷いなども含めイメージを克明に残すという特徴があります。

 

ウィットと優しさを通底させた多様性のある作曲と音色を、ピアノでまとめた音楽。要約するとそういうことになると思いますが、皆さんがストーリーに入り込める助けになっていれば幸いです。

 

・実際のドラマを見ての感想

音楽面では、サウンドデザインの石井さんによる編集や抜き差しの技術、また使い所にも感服しました。各曲がどういう役割ができるかを見抜き、適所に適度な厚みで配置するシャープな視点。ドラマ音楽において、サウンドデザイナーに因る部分の大きさを再認識しました。

 

また、脚本を読んで、「こんな難しいシーン、どうするんだろう?」と思っていた台詞や芝居を、役者さんが細やかに表現されているのを観て感動しました。多部未華子さんの%単位の微妙な笑顔、伊藤沙莉さんのドタバタ走りや鼻を掻くクセ、片瀬那奈さんの緩急付けた台詞回し、そういう緻密さの積み重ねで本がリアリティを持って立体化されるのを目の当たりにしました。

 

角田晃広さんは、居られるだけで素晴らしいですね。吹越満さんは以前映画でご一緒させていただいたことがあり、その時は津軽弁のオネエさんだったので、僕の中では昼は経理部長、夜はそちら方面で副業と勝手に想像して楽しんでいます。

 

・視聴者へのメッセージ

上でも触れましたが、人との関わりにより視野が広まり、今すぐ何かが好転するわけではなくてもよい方向付けがされる、という希望が持てる朗らかなドラマです。最終回まで、ぜひご覧ください。

 

Yasuda__070.JPG

(ザ・スタジオではなく、リラックスできる仕事場にしています。)

撮影:八島崇

 

HPトップは→こちら

投稿者:スタッフ | 投稿時間:18:00 | カテゴリ:これは経費で落ちません!

新着記事

新着ブログ

月別から選ぶ

2019年

開く

2018年

開く

2017年

開く

2016年

開く

2015年

開く

2014年

開く

放送終了番組

開く
ページトップへ