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「百合子さんの絵本」♯15番外編:その後の小野寺夫婦の軌跡は?

終戦スペシャルドラマ 「百合子さんの絵本~陸軍武官・小野寺夫婦の戦争」 (ホームページは、こちらです)

ドラマをご覧いただき、ありがとうございます。番組の感想、ご意見につきましては、今回はHPの掲示板がありませんので、みなさまの声にお応えします にてお願いいたします(全てのメールにお返事できない場合がございますので、あしからずご了承ください)

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さて、このドラマは小野寺夫婦の実話に基づいています。ドラマでは、妻の百合子さんが夫の信(まこと)さんに「二人で書くのよ、あの頃のことを」と問いかけ、それに対して信さんが「皆が休みの日、いつでもいい、集まってもらって、話してみよう」と答える所で、終わっています。
その後、小野寺夫婦はどうされたのでしょうか?ドラマで描いた後の小野寺夫婦の軌跡について記したいと思います。

小野寺信さんは、後に、長男と次男を自宅に集めて、百合子さんと共に戦時中に自分たちがどのような事をしてきたか、初めて語りました。(貴重な歴史証言として、カセットテープに録音しました)戦時中の事については一貫して口を閉ざしてきた信さんが、初めて、人前で“小野寺夫婦の戦争”を語り始めた瞬間でした。

bannnenn1.JPG百合子さんは、その証言テープを基にして、『バルト海のほとりにて』というタイプ印刷の私家版の本を書き上げます。昭和56年(1980)の事です。そして5年後の昭和61年(1985) この私家版を出版したいという出版社が現れ『バルト海のほとりにてー武官の妻の大東亜戦争』というタイトルの書籍が世に出ました。と共に、私どもNHKのドキュメンタリー番組「NHK特集」でも「日米開戦不可ナリ」というタイトルで、戦時中のお二人の活動が紹介されました。書籍と映像の形で、世の中の人達にご夫婦の戦時中の思いなどが、初めて伝えられたのです。すでに終戦から40年が経っていました・・・。

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小野寺夫婦にとって、戦時中のスウェーデンでの経験については無念の思いが多かったのは事実ですが、勿論それだけではありませんでした。「終生変わらぬ友情」の出発点でもあった、という良き思い出もあります。それは、イワノフと信の友情です。ドラマでも描かれていたように、イワノフは表向きは信の武官室に雇われていたロシア人の事務員という事でしたが、実は、ポーランドの軍人で祖国がドイツに占領されたので、スウェーデンに逃げてきたのを、信が匿っていたのでした(本名はミハール・リビコフスキーと言いました。詳しくはブログ♯9に書いてあります。)

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イワノフは、スウェーデンで信が自分を守ってくれた事を終生恩義に感じました。ドラマでは、イワノフがスウェーデンを脱出するまでしか描いていませんが、その後、彼はロンドンのポーランド亡命政府へと身を寄せる事になりました。信とは「ロンドンからも引き続き日本の為に情報を送り続ける」という約束をしていました。その約束通り、日本の戦争の帰趨に決定的な役割を果たす「ヤルタ密約」の情報が送られてきたのです…。

戦争が終わった翌年1946年1月、小野寺信・百合子夫婦は、イタリアのナポリ港から日本に帰国しました。船が出港した後、数時間が経って車が到着しました。イワノフでした。彼は信・百合子夫婦の為に食料品を満載し見送りに駆けつけたのでした。命を救ってくれた大恩人・小野寺夫婦に一目会いたかったのです。が、一足違いで会う事は叶いませんでした…。

その後、イワノフは、祖国ポーランドに共産主義政権が誕生したため、帰国する事が出来ずカナダで暮らす事になります。ポーランド人の女医と結婚し、ようやくカナダのモントリオールで安定した生活を送りました。

戦後も何年か経って、小野寺信とイワノフの間で手紙のやりとりがなされるようになります。(その数は、百通近くにもなります) そして、昭和45年(1970)、大阪万博を見にイワノフが日本にやって来た時に、信とイワノフは再会を果たします。小野寺夫婦とイワノフ夫婦、日本料理店でおおいに語り合ったといいます。その4年後には、逆に小野寺夫婦がカナダのイワノフ家を訪ねました。家族ぐるみでの交際が終生続きました…。

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信さんが亡くなって4年後にイワノフも亡くなり、残されたイワノフの妻は百合子さんに次のような手紙を送りました。
「ミハール(=イワノフのこと)は最愛なる大親友マコトのところへ逝きました。きっと二人はもっと良い世界で戦略について引き続き議論しているでしょう。ただし戦争についてではなく人類愛について…」

小野寺信さんは、昭和62年(1987)に89才で、百合子さんはその11年後の平成9年(1998)91才で亡くなりました・・・。

信さんが語り、百合子さんが書籍としてまとめた『バルト海のほとりにて』のあとがきには、こう書かれています。
「滔々たる時の流れには、一個の人間はどうにも抗し切れるものではない。一片の木片は波に押し流され水中に消え去ってしまうことが多い。だがその木片が正しいと信じて努力した行動の軌跡は、人には認められなかったとはいえ、正確に記録に止めておくことに或る意味があるのではないだろうか。本書は一木片の必死の行動を無視し流し去ってしまった時の流れに対するささやかな抗議でもあるのだ。小野寺百合子」
bannnenn3.JPGご視聴ありがとうございました。番組の感想・ご意見につきましては、今回は番組HPに掲示板がありませんので、みなさまの声にお応えします、にお願いします。(全てのメールにお返事できない場合がございますので、あしからずご了承ください)

なお、再放送がある場合は、またNHKドラマホームページから発表させて頂きます。

 

終戦スペシャルドラマ 「百合子さんの絵本~陸軍武官・小野寺夫婦の戦争」

【 作 】池端俊策 

【原 案】岡部 伸「消えたヤルタ密約緊急電」

【音 楽】千住 明
【出 演】薬師丸ひろ子 香川照之
   イヴォ・ウッキヴィ 千葉哲也 利重剛 戸田昌宏  加藤剛
   小林勝也 山本龍二 菅田俊 三田村周三 小倉一郎 金田明夫 佐野史郎 吉田鋼太郎 ほか
 (ホームページは、こちらです)

 

投稿者:スタッフ | 投稿時間:22:30 | カテゴリ:百合子さんの絵本~陸軍武官・小野寺夫婦の戦争~

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