2009年8月 3日

「ふたつのスピカ」最終回・ラストシーンについて


こんにちは、プロデューサーの橘です。

 

最終回放送後も、たくさんの書き込みありがとうございます。一つ一つ丁寧に読んではかみしめています。

 

自分の名前が出てくると妙に照れますが、素直にうれしいです。

 

さて今日は、前回を補足する形で、佐野先生の最後の言葉とラストシーンについて書きたいと思います。

 

 

◇佐野の言葉

 

「宇宙から見た地球は人類の新たな鏡だと言った宇宙飛行士がいた。人は宇宙に行くことでもっと自分を知ることが出来るってな」

 

これは、つい先日宇宙から戻ってきた宇宙飛行士・若田光一が、脳科学者・茂木健一郎さんとの対談で語っていたことです。

 

そして、ここから先は脚本・荒井修子さんの素晴らしい才能によって、台詞が続けられていきます。

 

「だが俺は、心を分かち合った友も、新しい自分を見せてくれる鏡だと思う」

「しかし時には、人にはたった一人で、自分自身と向き合わなくてはいけない時がある。鴨川は、君達より先に、その時を迎えているんじゃないか?」

「……雑談だ。答えを見つけるのは君達自身だからな」

 

本当に素敵な台詞です。

 

アスミの強くなる姿を描いた最終回、佐野先生の言葉はいつもにまして素敵です。

 

友朗のラストの台詞、そしてこの佐野の台詞、これ以外もそうですが、大人達の最後の言葉は、どれも胸に響き僕は忘れられません。

 

荒井修子さん、本当に素晴らしい脚本をありがとうございました!

 

◇ラストシーンに関して

 

以前にも書きましたが、どういう形でフィニッシュするかは、皆でかなり議論しました。

 

そもそも5年後を描いた方がいいかどうか、という所から話は始まったわけですが、前のシーンで「絶対に大気圏越える!!」とアスミが走り出すシーンで物語を終わらせたら方がいいのではないかという意見もありました。

 

なんとなく5年後といっても嘘っぽくなるし、エピローグなしの方が作る側としては気持ちよかったりするんです。

 

でも一方で、”ふりにげ”っぽくなってしまうのは嫌だなという思いがありました。無責任には終わりたくない。このドラマを通じてのメッセージをきちんと伝えるべきではないか。やがてそう思うようになりました。

 

議論の末、アスミは実際に宇宙に行ったんだという結末を作ろうということになりました。そして宇宙学校に帰ってきたアスミに何を言わせるか、今度はそれを話し合いました。

 

ダラダラと説教くさくなるのは嫌だ。できるだけ完結に、メッセージを伝えるとして、どんな台詞にしよう。

 

そして荒井修子さんが、番組ホームページの「脚本家のことば」にも書いた、油井亀美也さん(今年JAXAの宇宙飛行士訓練生に選ばれた方です)の言葉をヒントにして、下記のような台詞を書きました。

 

「皆さん!夢をかなえるのに一番大切なものは何だと思いますか?」

「それは、夢をもつことだと思います!」

 

でも、実は撮影時、ちょっとバタバタがありました。

 

その裏話を下記に書きます。

 

本番前に、芝居をやってみて、段取りを確認する”ドライ”という時間があるのですが、その時に、実際に舞台上で桜庭ななみさんが芝居をしているのを見て、「これでいいのだろうか?」とちょっと不安になったのです。

 

「だと思います」という台詞がちょっと中途半端な気がしました。それから、やっぱり簡潔すぎて、これでは何も伝わらないかもしれない、そう思ったのです。何かを台詞を足すべきじゃないかという気になりました。すぐにその場で山本ディレクターに相談し、桜庭ななみさんとも話をしました。

 

桜庭ななみさんには、自分の中でこの台詞がしっくりきてるかどうかを尋ねました。彼女自身がその台詞に自信がなければ、誰にも伝わらないと思ったのです。彼女からは「夢をかなえるのに必要なもの」という問いに対しての答えとして「それは同じ夢を持つ仲間を持つことだ」というような台詞の方がしっくりくるかもしれないと言われました。

 

それは、台本作りの時にも、話し合われた事でした。ただ、同じ夢を仲間にもつためにも、まず自分自身が夢をもち、それを実現するために頑張ることがまず重要なのではないか、何の夢ももたず勝手に仲間はできない、自分が強いベクトルをもって前に進むことが重要なのではないか、それがこの物語に込めたメッセージだという思いが僕にはありました。

 

頑張れと励ましあうのも悪くはない、けれど言葉で言うのは簡単で、それよりもまずは自分が頑張っている姿を相手に見せることで、相手にエールを送る方が僕の中では素敵だと思ったのです。

 

そんなことを桜庭さんとも話し、荒井修子さんとも電話で相談をして「それは夢をもつことです」と断定した台詞に変えてはどうかと思いつきました。

 

「何だと思いますか?」と聞いておいて、「それは夢をもつことです」というのは、文章として少しちぐはぐな気がしたのですが、桜庭ななみさんに試しに言ってもらったら、何かいける気がしました。

 

山本ディレクターと最終的に話をして、いざ撮影です。

 

このシーンが2ヶ月以上続いた撮影の最後で、このシーンをもってクランクアップするという日でした。桜庭さんにとっても集大成のシーン。スタッフにも力が入ります。

 

そして本番。僕は客席で彼女の芝居を見ることにしました。

 

桜庭さんをじっと見つめます。

 

「それは、夢をもつことです!」

 

僕は彼女を目の前にして感動しました。これなら、大丈夫だと思いました。

 

台詞をシンプルにしたことで、もしかしたら物足りなさを感じる視聴者の方もいるかもしれない。でも、彼女の輝いている表情で、きっと何かが伝わるはずだ。そう思ったのです。

 

最終的に、このドラマ、この最終回、このシーン、この台詞で何を感じていただいたかは、視てくださった皆さんにゆだねられています。それぞれの感じ方があると思います。

 

でも、僕らがアスミという一人の女の子を通じて込めた希望と思いが、それぞれの形で皆さんに少しでも伝わっていれば、本当にうれしいです。

 

以上で、これまで書き続けてきた「ツボダイ」も終了です。

 

ドラマが始まる前は、もっと写真とか載せて、読みやすいスタッフブログにしようと思ったりしていたのですが、いつの間にか、毎度長文になってしまいました。。

 

そういう意味では、読んでくださる皆さんの期待に応えられたかは分かりませんが、僕なりに毎回真剣に書いたつもりです。

 

少しでも読んでよかったと思ってくださる方がいれば幸いです。本当にありがとうございます。

 

そして、あと1、2回は更新しようと思っていますので、どうぞ最後までよろしくお願いいたします!

 

投稿者:スタッフ | 投稿時間:13:48 | カテゴリ:ふたつのスピカ | 固定リンク
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