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土曜ドラマ「とんび」#32 第52回モンテカルロ・テレビ祭 受賞記念インタビュー

 

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鈴木圭チーフプロデューサー、梶原登城監督に、

ゴールドニンフ賞(ミニシリーズドラマ部門・最優秀作品賞)受賞の喜びコメントから、

授賞式でのエピソード、ドラマ撮影中の苦労話など… たっぷりと伺いました!

梶原監督が自前で撮ってきてくれた授賞式会場の写真とともにお届けします。

 


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 DSC_0022-1.jpg DSC_0085-1.jpg  DSC_0032-1.jpg<ゴールドニンフ像>


モンテカルロ・テレビ祭とは…

世界の優れたテレビ番組を紹介し、テレビ文化の振興をはかる目的で1961年に創設された国際コンクール。主催はモナコ公国。
ニュース(単発ニュース/ドキュメンタリー)、テレビ映画、ミニシリーズドラマなどの部門があり、今年は6月9日から4日間にわたって審査が行われた。
それぞれ部門最優秀賞にゴールドニンフが贈られるほか、
「レーニエ3世賞」「モナコ赤十字賞」「AMADE/ユネスコ賞」など5つの特別賞がある。

 

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(2012年6月19日 NHKにて)
    

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<公式ガイドより>

 


―タイトルは「YASU – A SINGLE FATHER’S STORY」としたそうですね。

 

 [梶原]
タイトルは悩みました。「とんび」のままにしようかという案もありました。翻訳の方(英語字幕を付けて出品するため)とも相談して決めました。
でも「YASU」にして良かった。審査員の方たちも「ヤス、ヤス」と言ってましたし、覚えやすかったんだと思います。「とんびが鷹を生む」の直訳も考えましたが、分かりづらくなるので止めました。
候補として「FATHER」もありましたが映画の「クレイマークレイマー」のような親子ものの作品のタイトルの感じがいいなと思って、「YASU」にして、「– A SINGLE FATHER’S STORY」をサブタイトルに付けたんです。

 
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[鈴木]
他の出品作で日本から出ていたものは、やっぱり震災に関わるものが多かったですね。
「とんび」は直接的には描いていないけれども、底流にはそういったものが、亡くなった人への思いを持って生きていく、頑張る、という。そういう部分は海外の方たちにも訴えるものがあったのかもしれません。


[梶原]
通訳さんを通じて審査委員長とお話出来たのですが、「とても慎みのあるドラマだった」と言って頂きました。「それはストーリーですか、お芝居ですか」と聞いたところ、「ストーリーやアクターもそうだが映像や音楽も含めてトータルでとてもストイックな作品だった」と。「メロドラマに陥っていない。そしてストイックでありながら、ヤスの明るさや、みんなの前向きさがとても良かった」と。
それを聞いて、あ、伝わるんだなと。ちゃんと見てくれているんだと思いましたね。

「印象的な場面はありましたか」と聞いてみたんですが、ラストシーンや夕なぎでの母娘の再会などいろんな感想がありました。ただ、共通していたのは「夜の海」でした(海雲和尚がアキラを夜の海に連れて行き、背中に手をあてる)。心の温かさと物理的な温かさを、ああいった手法で描いたのが良かったと、仰っていました。

 

[鈴木]
授賞式ではミニシリーズ部門の他の出品作もダイジェストで流れまして。まるで映画のようで、どれも大作なんですよ。とてもお金がかかっていそうな。「とんび」は予算的には追いつくものではないですが、撮影チーフの佐々木達之介(白洲次郎、龍馬伝も担当)の撮る画、色調、撮り方というのは、ああいう場で負けない力を持っていると思いましたね。


[梶原]
達さんの画は「ビューティフルだ」と全審査員が絶賛でしたよ。

 


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 DSC_0096-1.jpg<スピーチする梶原監督>


[鈴木]
ひとつ授賞式で失敗したことがあって。もっと“喜ぼう”と思っていたんです。
どうも日本人は感情の表現が下手なので…(笑)。トロフィーをもらって、梶原と壇上で抱き合ったりとか、それぐらいしようと思っていたのに、いざとなったら緊張してガチガチで、どうにも“無愛想な二人”になっちゃったんですよ(笑)もっとガッツポーズしたり素直に喜べば良かった。


[梶原]
事前に話してたんですよ。「感情表現していいんだよな、カジ。うん、喜ぼう!」って(笑)
でも結局その場になったら緊張しちゃってね(笑)
発表の順番も最後から2番目だったんで会場の空気も盛り上がってる状況ですよ、
いよいよクライマックスという感じで。

 


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<トロフィーを手にする梶原監督と鈴木プロデューサー>

 


[鈴木]
梶原はスピーチでカッコよくシブく決めようとしてたよね(笑)

(一同笑う)

カッコよく喋ろうとしてるのが、逆にダメだなと思った(笑)
もっと大きな声で、明るく楽しい雰囲気でやれば会場もウケたのにと思いました(笑)


[梶原]
もっと「やったやった!イエ~~!!」とか言えば良かったですよ。
会場は3000人くらい入るホールなんですよ。テレビカメラも入っていて…緊張しました(笑)

 


 DSC_0114-1.jpg<授賞式を終えて>

 


*********

 

 

―戻りますが、最優秀賞と聞いた時は…


[梶原]
僕は最初はピンとこなかったんですよ。NHKの事務局から連絡が来て、「ホントに?」って。他にも堤さんが主演男優賞、小泉さんが主演女優賞にノミネートされていて、他の特別賞の可能性もあったので「どれになりました?」と聞いたら「作品賞です」ということで、「やった!」と。


[鈴木]
僕もどれか一つでも残ってくれたら嬉しいと思っていたんですが、まさかゴールドニンフとは思わなかったですし…最初はきょとんとしましたね。「あ、そうですか…」という感じで。
でも授賞式に行って、会場の規模の大きさや、おめでとうと言葉をもらったりするうちに段々嬉しくなって…帰国する頃が一番嬉しくなっていました(笑)

―徐々に実感が沸いてきたんですね

そうですね、レッドカーペットを歩いたり、ゴールドニンフの大きな像が会場にもあって、
この賞の歴史の重みも感じましたし、すごい賞を頂いたんだと、改めて嬉しかったですね。

 

  

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<ゴールドニンフ像の前で>

 

DSC_0132-1.jpg <授賞式後の晩餐会>

 


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―原作の重松清さんとは受賞後お話されましたか


[梶原]
ご本人とはまだですが、出版社の担当の方がものすごく喜んでくれてましたね。
今朝、重松さんから大きなお花が届いていました。ありがとうございます。
 

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ここからはドラマの内容について伺います
 

 

tonbi_main.jpgのサムネイル画像

 

―CGを使わず昭和の物語を撮影する手法も評価されました


[梶原]
今でこそ言えますが撮影時は本当に大変でした。制作部、美術部のみんなには、本当にごめんなさいという感じで…。申し訳なかった、かなりの暴挙でしたから。
ただ最初から方針は決めていたので、それに向けての表現方法をイチから考えてくれたので、そのテンションが画面にも出ていると思います。アナログ手法の良さというか、目に見えない体温のようなものが出ていると思います。


[鈴木]
梶原から提案があった時、意図や狙いはよく分かりましたし。その後、準備中に震災があって、
そもそもドラマなんかを作ってていいのか?と。そういう時に何が出来るのか?と考える中で、
原点に戻って地道なものづくりをする、手作業で、丸裸になって一歩一歩作って行こうという
意地のようなものがありました。技術、美術スタッフみんながそれを共有していました。
結局そういったものの積み重ねというか、ドラマは作り物ではあるけれど、その中に我々の気合いが何%入っているかというのが、画面を通して結構分かるのではないかと思っています。それがきっと海外の方たちが見てくれた時にも「本気で作ってる」という感じに伝わったのではと思います。


[梶原]
審査員の方たちとお話した時にも、昭和の古い時代を描いているので、CGを使っていると思われていたようですが、「一切使っていないんですよ」と言ったら、まず通訳さんが驚いてました「えっ?」て(笑)欧米ではVFXは主流のようですから、驚いていましたね。
美術部は本当に大変でした。飾り込む“物”のひとつひとつを用意してくれて。それからロケ場所もいい所を見つけてきてくれたんですよ、制作部が。なんとなくこんな場所、じゃなく、ヤスの働いてる場所、生活してる場所として。
全てアナログで撮ると決めていたので、割り切って出来た部分もあり、それも良かったのかもしれませんね。


[鈴木]
背骨が出来た感じがしました。ストーリーとは別の部分で、撮っていく時の姿勢というか。
方向性がブレない一本筋の通った作品になった。エンディングの永石勝さんの写真まで、ひとつの世界観が出来て。

「どういう旗を振るか」というのは一番重要で、難しいですね。
ストーリーはもちろん大事ですが、「どういうドラマになるのか」というのを梶原が頑張った、ブレなかったのが、誰にも伝わるシンプルだけど強いものになったことかもしれないですね。


[梶原]
そうですね。映像の物理的な表現と同時に、メンタリティというか、精神的な支えになったと思います。


 

 

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―俳優の皆さんとのエピソードは


[鈴木]
役者さんとのお話で言うと、(龍馬伝ではじめた)カメラを止めないで撮る長回しの手法は、
初めての方は衝撃だったと思います。カット割が無いので自由に演じられる部分もありますし。
ただ長回しで2~3テイク続けてやりますから、暑い中で大変だったのもありましたね。


[梶原]
そこは僕の演出の稚拙な部分でもあって、もっと上手くやれたら良かったのですが。
この撮り方もずっと繰り返していると、ルーティーンになって役者さんを疲れさせてしまう結果になりかねないので、いかに鮮度を保つかというのが一番苦心したところでもありました。


[鈴木]
堤真一さんや小泉今日子さんが、オールロケでの撮影の中、ギャラリーが沢山集まって見ている中でも自然体で演じて下さる方たちだったので、それが本当にありがたかったです。
本来なら我々スタッフが守るべきところですし、シャットアウトさせて頂く場合もあるんですが。


[梶原]
皆さんライブに強いんですよ、本当に。芝居巧者ぞろいというか。長回しすると、ワンシーンがひとつの舞台のようになるんです。一幕一場というか。古田新太さんなんかは変幻自在の方ですからね、もう「なんでも来い」って感じで。1、2度お芝居を合わせたら本番やらせてもらって。変な言い方ですが、見ていて本当に面白かった。本当に感謝してます。

あと、テストなしでやらせていただいたので役者さんには当然ですが、技術スタッフにも本当に感謝です。芝居がどうドライブしていくか分からない中で、ものすごい集中力でした。スピーチでも言ったんですが、本当にキャスト・スタッフ全員で勝ち取った賞だと思います。

 

 

**********

 


―番組ホームページの掲示板の書き込みで
「鈴木プロデューサーの手掛けたドラマはどれも“熱い作品”」と、あるのですが、
(「フルスイング」「白洲次郎」「龍馬伝」「とんび」)なにか特別なプロデュース術があるのでしょうか。


[鈴木]
(笑)そんなカッコいいものは無いですよ。


[梶原]
圭さんの名言、
「反省はするけど後悔はしない」じゃないですか(笑)

(一同爆笑)


[鈴木]
柔軟さ…というか、ライブな、瞬発力でやるところがあると思うんですね、この仕事というのは。
でも、“こうだと決めたら変えない”タイプの人も意外と多いんですよこの業界は。
“面白いもの”が、いつ、どういうタイミングで、どこから、誰から出て来るか分からないので、
もちろん、スタッフ、キャスト含め良い仲間とやっていきたいと思ってお願いしたりオファーしたりしますが、その人達からいつも面白いものが出てくるとは限らない。
ただ“面白いものが出る瞬間”というのがあるんです。そこにみんながそれぞれの持ち場の専門性を持ってキャッチできる、そういうチームが組めた時には、熱いライブ感のあるドラマになると思います。作り物なんだけど、作り物ではない世界観というか。そういう作品になっていくと思ってやってはいますね。

作り方自体はもうシステム化されてますから、出来ちゃうんですよ。カット割りして、カメラ構えて、役者さんが居て、それで出来るけれども、そこだと面白くない。そこを超えていくチームを組めて、それぞれみんなが面白がってくれると、あとはプロデューサーは「行けー」とか「やれー」とか言ってるだけで…(笑)何もしてないじゃないかお前、みたいな仕事ではありますが(笑)


[梶原]
圭さんは元々が名演出家なので、“演出に優しいプロデューサー”なんですよ(笑)
甘いというか(笑)

[鈴木]
そう、だからね、予算が膨らんじゃうんだよね(笑)

 

 

***********

 


―気に入っている、思い入れのあるシーンは…

 

[梶原]
全部いいんですが(笑)…一番印象に残ってるのは、カレーライスを食べるシーン(後編)かな。

 

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あのシーンは撮る前から色々なことを考えていたし、前後編を通じて、ヤスとアキラが正対して話すシーンはあそこぐらいなんですよね。(アキラの上京前夜)セリフにならないセリフをどう作ればいいかずっと考えていました。別れの前夜に、ヤスとアキラの間に流れる「親子の時間」みたいなものをなんとか表現したいと。堤真一さんもいろいろと考えられていたようで、独身の自分が18歳の息子とどう向き合えばいいか、というような相談を何度か受けました。

ロケも終盤で、僕にとっては最大の山場でしたね。スタッフは暑い中の連日のロケで、泥のように疲れてるし(笑)半分、思考停止みたいな状態で毎日やってくれていて。あそこは踏ん張りどころだったというのを覚えています。音楽も一切無い地味なシーンですが、とにかく堤さんと池松くんの芝居が圧巻でした。

 


[鈴木]
編集段階から何度も何度も見て、まだ音楽も付いていない段階でも結構泣きながら見ていたので、僕にとっては名場面はひとつではありませんが、今話していてパっと頭に浮かんだのは、(前編の)葬式のシーンのアキラ(田中奏生くん・当時5歳)のお芝居を撮影現場で見た時…ですね。
 

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―現場で見たお芝居ですか

あの日はロケ現場に行っていて、生で見ていて結構びっくりしたんです。素晴らしい感性の子だと思って。本気で気持ちが伝わってくるお芝居をしていたのをよく覚えています。地元エキストラの方たちが、そのシーンの芝居だけを見て泣いていたんですよ。物語の展開上、泣けるシーンではありますが、田中奏生くんのそこまでの芝居を引き出したのは、間違いなく堤真一さんなんです。さらに古田新太さん、小泉今日子さんをはじめ、大人のキャストの方々が、カメラに写っているかどうかに関わらず、あの長いシーンを2~3回繰り返し撮る中で、毎回フルで全力で芝居をしている、その大人の芝居を受けて、子どもが本当にいい芝居をしちゃう、嘘じゃない本気の芝居をしたという…。

あれはひとつの理想的な現場の空気と言うか、作り物ではないものが生まれる瞬間に立ち会った喜びがありました。色々な条件やタイミングが合わないとそうならないんですよね。誰かが疲れちゃったり、ちょっと士気が下がったり、緊張感が無くなることもありますが、あのシーンはやりきったと思います。


[梶原]
そうですね、あの感じが僕らが「とんび」でやりたかった感じですよね。

 

 


*******

 

 

―最後に、視聴者のみなさんへメッセージをお願いします

 
[梶原]
この企画は提案のタイミングや、震災があって、3度の危機を乗り越えての実現だったんです。
その山を越える度にたくましくなったような、微妙な変化を遂げて来たように思うんですね。
企画として生き残ったというか。そういう、目に見えない力強さを持っているドラマだという気がしています。そんな部分がぜひ伝わったらいいなと思いますし、エンターテイメントとして純粋に楽しんで見て頂けたらうれしいです。


[鈴木]
もうずいぶん時間が経ちましたので、自分たちが作った作品なんだけども、自分が作ったものじゃない、客観的な「とんび」というひとつのウェルメイドなドラマみたいな気さえするんですね。
今回また見直して思ったんですが… いいドラマなんですよ(笑)

(一同笑う)


[梶原]
あ、そういうことを言わなきゃいけないのか(笑)


[鈴木]
本当に素直に、いいドラマがここにあります。
改めて、受賞を機にきっと再放送もあるかと思いますので、ぜひ見て下さい。
地味だけど、今の時代に人々に届くいいドラマが出来たと思います。
…という感じですね。本当に、1人でも多くの方に見て頂けたらうれしいです。

 

 

**************

 


お二人ともありがとうございました!


(とても長くなってしまいすみません。

最後まで読んで頂いてありがとうございます) 

 

再放送が決まった際にはまたお知らせいたします!

 

 


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土曜ドラマスペシャル「とんび」


【放送】2012年1月7日(土)、1月14日(土) [全2回]
       総合 午後9時〜10時13分 <放送終了>

【原作】重松清「とんび」

【脚本】羽原大介

【音楽】大友良英

【主題歌】踊ろうマチルダ「箒川を渡って」

【主なロケ地】岡山市、北九州市 

【出演】堤真一 小泉今日子 池松壮亮 西田尚美 塚地武雅
    古田新太 徳井優 平田満 神山繁 ほかの皆さん

「とんび」番組ホームページ
http://www.nhk.or.jp/dodra/dodrasp/index2011.html#d5


 

投稿者:スタッフ | 投稿時間:16:31 | カテゴリ:とんび

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